ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

近藤は日本の救世主となるか

 

 2017年のペナントレースが開幕してから1か月が経った。

 セ・リーグではカープとタイガースの首位争いが過熱し、パ・リーグでは昨年、3年連続のBクラスに沈んだイーグルスが首位を走っている。一方で、昨年10年ぶりの日本一を果たし、今年も優勝候補の筆頭だったファイターズが5位にいるなど、一体誰が予想していただろうか。

 

 もっとも、ファイターズも本調子ではないことくらい、ご周知の通りだ。今年3月に開催されたWBCでは、開幕を目前に投打の柱、大谷翔平が怪我のため離脱した。ペナントレースが開幕してから打者に専念していたものの、走塁中に心配されていた右足首痛の再発、さらには右ふくらはぎの肉離れやインフルエンザの発症などの影響で、大谷自身にとってもチームにとっても、ここまでは不本意な戦いを強いられている。

 さらには、WBCでクリーンナップの一角を担った中田翔もコンディション不良を理由に出遅れたスタートとなった。先日のバッファローズ戦で第2号となる本塁打を放つなど、復調の兆しが見えている。16、14年と二度の打点王に輝いたその打棒で、再びチームを浮上させてくれることを期待するばかりである。

 

 そんな苦戦を強いられているファイターズの中で、ひときわ輝きを放っているのが、5月9日現在、打率4割で目下パ・リーグ首位打者に君臨する近藤健介だろう。

 千葉県出身、横浜高校から2011年にドラフト4位でファイターズに入団した近藤は、2014年に当時ファイターズに所属した小谷野栄一(現バッファローズ)の怪我に伴い、捕手登録にも関わらず三塁手として起用される機会が増え、2015年には捕手と並行しながら、強打を買われ指名打者として出場し、初の規定打席到達とともに、パ・リーグ3位となる打率.326を記録し、一気にブレークを果たした。

 しかし、2016年は実質的に“二年目のジンクス”に直面し、前年よりも成績を落とした。ファイターズの捕手は、今年のWBCにも選出された大野、さらには第二捕手として市川が控えるなど、捕手・近藤としての評価は、打者・近藤ほど高くないように思われだけに、今シーズンは持ち前の強打をいかに発揮できるのかが注目されている。そして今シーズン、前述した通り、ここまで12球団で唯一打率4割をキープしている。

 ファイターズの捕手は大野と市川が併用され、三塁手は昨シーズンのパ・リーグ本塁打王に輝き、WBCメキシコ代表にも選出されたレアードがレギュラーとして出場している。その中で近藤は右翼手指名打者としての出場が続いている。ここではファイターズでの起用状況をふまえ、野手・近藤として、あるデータを提示したい。

 そしてそのデータが、数年後の日本プロ野球にとって近藤が“救世主”になりえる可能性を示しているということをお知らせしたいと思う。

 

◆WBCのリードオフマン

 まず、ご覧いただきたいのは、今年3月に開催されたWBC日本代表の外野手の打撃成績である。

 

筒香嘉智  .320(25-8) 3本塁打 8打点

青木宣親  .182(22-4) 0本塁打 2打点

鈴木誠也  .214(14-3) 0本塁打 0打点

秋山翔吾  .300(10-3) 0本塁打 2打点

平田良介  .000(3-0) 0本塁打 0打点

 

 こうして見ると、筒香以外の外野手の成績が寂しい結果に終わったことがわかる。秋山は打率3割こそ記録しているが、レギュラー定着までには至らなかった。

 もちろんこれは、あくまでも短期決戦での打撃成績を切り取っただけである。貢献度は守備や走塁など、別の指標から図り知ることができるということは筆者も理解している。

 しかしここは、打撃力の観点から話を進めていきたい。

 

◆4番並みのOPSと選球眼の良さ

 まずは、すでに日本の野球ファンの間でも定着しつつあるOPSを見てみたい。出塁率長打率を足したこの数値は、得点との相関関係が強く、総合的な打撃能力を表す指標として用いられる。数値が高いほど、打席当たりでチームの得点増に貢献する打撃をしている打者だと判断することができる。

 今シーズンの近藤のOPST-岡田に次ぐ1.098を記録している。ちなみに、昨シーズン、セ・リーグ本塁打王打点王の二冠に輝いたベイスターズの筒香のOPSは1.110、2年連続トリプルスリーを達成したスワローズの山田哲人は1.032だった。現時点での近藤のOPSは、侍ジャパンの四番に肉薄する数値であることがおわかりいただけるはずだ。

 

 次に、フォアボールを選べる、選球眼の良さにも着目したい。

 近藤のBB%(四球割合)は両リーグ1位の24.0%。今シーズンの近藤のこれまでの出場試合数や打席数をふまえて単純計算すると、今シーズンは100四球を獲得することになる。これは、昨シーズン両リーグで最も四球を獲得したホークスの柳田と同数である。球数制限がルール化されているWBCでは、選球眼の良い選手がチャンスメーカーとしての役割を担えるのではないかと考える。

 

◆1番打者は4番打者と同等

ここで話は変わるが、以前読んだ興味深い記事をご紹介したい。

その記事セイバーメトリクスの観点から、打順ごとの重要性を示している。それによると、どうやら1番から9番までの中で最も重要なのは4番と、それと同等に1番と2番の重要度が高いのだという。

詳しく見ていこう。この打順の重要性を示したデータは著名なセイバーメトリシャン(セイバーメトリクスを用いて分析を行う人)のトム・タンゴらが執筆した書籍『The Book: Playing the Percentages in Baseball』に詳しい。セイバーメトリクスをもとにした数理モデルとシミュレーションによると、1番・2番・4番はだいたい同じ程度に、最も重要な打順で、打線で最も優れた3人をこの打順で起用すべきであり、その中でも四球の多い出塁タイプは1・2番に、長打が多いタイプは4番にすべきであるという。なお、2番は併殺を避けるために走力のある打者だとなおのこと良いそうだ。次に重要なのは3・5番で、1番・2番・4番に次ぐ2人をここに配置すべきという。2番と3番の打力は現実では逆転している場合が多いが、これは率直に誤りであると述べられている。

 

話を近藤に戻す。ここまでくればお察しのとおりだろうが、私が「近藤は日本プロ野球の救世主になる可能性」を感じているのは、その所以である。

具体的には、「1番ライト・近藤」が、日本が国際大会で戦い抜くための一つの戦術なのではないかということだ。

前述した通り、1番という打順は4番に匹敵する重要性があり、その中でも4番に長打率が求められるのならば、1番には出塁率が求められる。WBCで4番を務めた筒香に匹敵する1.098というOPSを考えると、近藤は強打者としての求められる水準を満たし、また、長打力は筒香に劣るが多くの四球を選ぶことができる選球眼の良さとそれによる出塁率の高さを鑑みると、近藤が1番を務めていても不思議ではない。なお、近藤の2番という選択肢は、近藤よりも走塁力が評価されている選手が多くいるため、一考の必要がある。その点でも近藤を活かすには1番ではないかと筆者は考える。

 

もっとも、この数値とそれによる打順想定は2017年5月9日時点での想定である。

「1番近藤」の最終的な是非の判断はシーズン終了後までのお楽しみとして、筆者の胸の中で留めておきたい。

もしこれを読んでくれた方がいれば、どうお考えになるだろうか。近藤健介が、世界一の称号を再び日本プロ野球にもたらす救世主となりえる可能性について。

 

出典

「DELTA:1.02 Essence of Baseball」(2017年5月9日閲覧時点)

「Full-Count」2015.08.07

ペナントレースWBCの出場成績などは、各オフィシャルサイトを引用