ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

敵の敵は味方

 

 6月26日、オールスター戦のファン投票の最終結果が発表された。

 パ・リーグ指名打者部門で大谷翔平が選出されたことに、いま、議論が湧き上がっている。

 私は、悲しくなった。純粋に野球を好きなファンに対して批判的な意見を述べなければならないことに。

 正義と正義のぶつかり合い。己の正義のために他人の正義を批判しなくてはいけない、そんな状況が悲しい。

 しかし、今回の大谷の選出は現在のプロ野球界を象徴する現象であり、それに端を発する議論は現行のプロ野球規定を再検討するきっかけなのだと思う。この出来事が今後の野球界の発展につながることを願い、心苦しいがこの議論に参加させていただきたく思う。

 

◆現行のオールスター戦の選出規定

 大谷翔平のファン投票選出の話に移る前に、今回の議論の中で要点される現在のオールスター戦、及びそれに付随するプロ野球の規定について簡単に説明したい。

 選手はセ、パともにそれぞれ守備位置ごと(投手は先発・中継ぎ・抑えでそれぞれ選出し、パ・リーグについては指名打者が選出対象に加わる)、ファンによる投票が行われる。それぞれのリーグと守備位置の中で最多得票を集めた選手がファン投票による出場枠で選出される。ファン投票による出場資格は、「ファン投票終了後の6月18日に、投手として5試合以上登板または10投球回以上、野手として10試合以上出場または20打席以上」の選手に与えられる。なお、選手間投票を含め、オールスター戦の出場を辞退した選手は、後半戦の開幕10試合は出場停止の処分が下される。

 これが今回の議論でぜひ念頭に置いていただきたい規定になる。

 これらを踏まえ、大谷翔平のファン投票選出について、具体的にどういった議論が展開されているのかをみていく。

 

プロ野球選手をアイドル化する、民度の低いファン?

 まず紹介する理論を展開する野球ファンとA氏とする。

 A氏は、大谷のこの選出結果について、「プロ野球ファンの民度が問われてしまう」と表現した。大谷にはファン選出される前まで4月8日を最後に試合出場がなく、そのため選手されるに値する成績を残せていないとし、成績ではなく人気が先行した結果についてA氏は「アイドルの人気投票」と苦言を呈した。

 さらにA氏は、こういった「アイドルの人気投票」になっている選出結果を糾弾しないマスコミにまでその批判対象を広げている。

 

◆批判すべきはファンではなく、現行のルール

 次に、A氏の意見と対照的な理論を展開するB氏の意見を紹介する。

 B氏はまず、過去の反省すべき選出事例を紹介した上で、現在定められている選出制度上、大谷には十分出場資格があると述べた。そうである以上、問われるべきはファンの民度やマスコミではなく、この選出規定にあると、A氏とは異なった理論を展開している。

 また、B氏はファン投票を「そのポジションでもっとも秀でた成績を残している選手を各自が独自の視点で選ぶことが基本」とする一方、A氏はファン投票を「実力・実績の多寡によって決めるもの」ではなく、「実力や実績に縛られない投票」、つまり「見たい選手を選ぶ」ものだと捉える。

 最後にB氏はA氏の理論を「ファン投票を『アイドルの人気投票』と揶揄する人こそ、エンターテインメントの本質を理解していない『民度の低い野球評論家』」と批判し、その報告を終えた。

 

◆一番イヤなのは、野球がなくなってしまうこと

 確かに、オールスター戦という舞台は、プロ中のプロ、選ばれし精鋭集団のみに与えられるものだと考えるなら、成績を重視した選出方法をとるべきだというA氏の理論は十分に理解ができる。

 しかし、それで本当に良いのだろうか。言い換えると、それで本当にプロ野球は成立するのだろうか。

 私はB氏の意見に賛同し、生越ながらB氏の意見に補足させていただいた上で、私が考える現状の制度における問題点を紹介したい。

 

 まずもって、私が考えるオールスターの出場選手とは、B氏と同様、「ファンが見たいと思う選手」だと思う。今年の出場実績が乏しい大谷が選ばれても、ファンが大谷を見たいというのなら、大谷にはオールスターに出場する資格があるのだ、と私は思う。

 だって、大谷が出れば盛り上がるでしょ。野球を好きじゃない人でも、大谷のことを知っている人は多いでしょ。そんな人が野球に関心を向けてくれるなら、いいじゃない、それで。古参の野球ファン、正統派野球ファンは、カープ女子やオリ姫がいるから女性の野球ファンが増えているという現実をそろそろしっかり受け止めた方がいいと思う。大谷に投票した44万7000人の野球ファンが、もし全員野球のことが嫌いになってしまったら、と考えると背筋が凍る。そんなミーハーで、選手をアイドルとしてみる、B氏の言葉を借りれば「民度」の低いファンがいるからこそ、いま野球に新しい価値観が生まれ始めているのだと思う。

 時代は日々動いているのだ。その時代の流れを読めず、新しい価値を批判し、いつまでも前時代的な価値観に固執しているという状況は、いつか野球界全体の衰退をもたらす。

 私は、ミーハーな野球ファンは十分イヤなのだが、そもそも野球がなくなってしまうのが一番イヤなのだ。

 私は仕事柄、日々のトレンドや大衆性に触れる機会が多い。今の野球界の現状を受け入れないことには、その未来は途絶える。視聴率が低い番組は、長寿番組でも改変対象になるのだ。気づいた時にはもう遅いのだ。

 

◆本当に批判すべきは?

 その上で私が疑問に感じるのは、ファンの民度ではなく、B氏と同様の規定に対してである。ただ、B氏の展開するそれとは疑問の矛先が違う。私は、オールスターを辞退した選手は後半戦の開幕から10試合の出場停止というルールに違和感を抱くことを禁じえないのだ。

 ここまで、ファン投票と選手間投票の結果がすでに発表されている。選出された選手の中には、怪我やコンデション不良により万全な状態で出場できない選手がいる。ここで無理をして出場を辞退すると、後半戦のスタートダッシュに支障をきたす。だから無理して出る。これでいいのか、オールスター。いいわけないだろ、プロ野球

 B氏が出場資格規定について苦言を呈すなら、私は辞退した際の規定について苦言を呈したい。

 

 ただ、ここまできていうのもなんだが、私はA氏を批判したいわけではないのだ。むしろ、A氏は正統派野球ファンとして賞賛すべきだとも思う。

 だから、最後に私は「民度の低い野球ファン」に言いたい。私にここまでA氏を批判させておきながら、そのくせすぐに野球への関心を捨ててしまうようなことがあれば、私はあなた方を即刻敵とみなす。

 その際は、「お前らの民度は創設初年度の楽天の順位よりも低い」と、私は声を大にして言いたい。

 だからお願いします。これからも野球、プロ野球選手を楽しんでください。

 そして、プロ野球関係者に言いたい。そんなファンが一人でも多く増えるような環境整備を、一刻も早く進めてください、と。