ほーりーの野球日記

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中村剛也のホームラン偏差値

 

 7月19日、西武の中村剛也が通算350号本塁打を達成した。1394試合目での達成は、94年の秋山幸二ダイエー)の1355試合に次ぐ、史上7位でのスピード記録となった。

 規定打席に到達したシーズンは全シーズンでホームラン王を輝く、まさに現代最強のホームランバッターと言っても過言ではない中村だが、事実、通算本塁打数が歴代30位以内にランクインしている打者の中での本塁打率は、350号本塁打達成時点で史上5番目となる13.58を記録している。

 この記録達成をきっかけに思い出した書籍があるので、それをご紹介したい。2014年に朝日新聞出版から刊行された小野俊哉著の『プロ野球 最強のホームラン打者』という書籍だ。歴代のホームランバッターの中に中村が名を連ねており、これを読めば中村が往年のスターに肩を並べるどころか、むしろ、歴代でもトップクラスに能力の高いホームランバッターだということがわかる。

 

◆歴代2位のホームラン偏差値

 まず、その書籍で用いられる「ホームラン偏差値」なるものを説明したい。

 これは、各選手がその年度に放ったホームランのレベルを数値化した、著者の小野氏が独自に考えた指標である。単に打ったホームランだけでなく、その年度の上位選手の本塁打数の平均と比べたときの偏差がわかるというもので、それにより、活躍した年度の違う選手でも普遍的な比較ができるという点が、この指標のみそである。

 それによると、この書籍が出版された時点で、歴代で最もホームラン偏差値が高い打者とその年度は、2011年の中村剛也なのである。2011年は、いわゆる統一球が導入された最初の年であり、その影響もあり前年に比べて本塁打数はマイナス39%、リーグ全体の本塁打数が1959年以来52年ぶりに400台に沈んだ。しかし、中村はその逆風にもかかわらず、48本塁打を放ち、85.04というホームラン偏差値を記録した。

 さらに、各打者の偏差値トップ3だけを合計したランキングでも、王貞治に次ぐ歴代2位のホームラン偏差値を記録している。野村克也落合博満ランディ・バース松井秀喜など、名だたる選手を抑えての2位である。鳥肌ものだ。

 

デーブ大久保による逆転の指導法

 2002年、ドラフト2位で西武に入団した中村は、二年目には二軍でホームラン王を獲得し、四年目には22本塁打を放ち、「おかわり君」のあだ名でブレークした。しかしその後は思うように成績が伸びず、翌年から2年連続で2ケタ本塁打を逃している。2007年のオフに西武の打撃コーチに就任した大久保博元との出会いにより、中村は復活した。

 当時の渡辺久信監督から大久保は「サンペイ(中村のニックネーム)を再生させてくれ」との指示を受けた。秋季キャンプで中村のバッティングを見ていた大久保は中村に「今よりも2メートル前でボールを叩け」とアドバイスされた。アドバイスの直後、打球はレフトスタンドを超えた。そのときのことを中村はこう振り返る。

「デーブ(大久保)さんから“前で打て”と言われたとき、最初は“大丈夫かな?”と思ったんです。それまでは“近いポイントで打て”と言われていたものですから。でも、結果は出なかった。ホームランも思ったように打てなかった。それでも“やってみようかな”と思ったんです。実際、そのとおりにしたら、打球の角度や飛距離がまるで変った。これできっかけを掴んだことは事実です」

 実は近年の打撃指導として、ボールを引きつけられるだけ引きつけてポイントを後ろに置くというアドバイスが主流だった。それを大久保は「空振りしたっていい。ホームランバッターなんだから」と、追い込まれるまではポイントを前に置くように指導した。

 その成果はご周知のとおりだ。

 

 現在、日本プロ野球のシーズン最多ホームラン記録は、2013年にバレンティンが記録した60本だ。ケガなくシーズンを送ることができれば、本塁打率の計算上、不可能な数字ではないように思われる。

 現在33歳のプロ16年目。ベテランの域に差し掛かる中村にとって、この一打をはずみとし、7度目のホームラン王、そして、遠くない未来のシーズン最多ホームラン記録保持者として球史に名を残す選手になることを期待したい。

 

出典:日刊スポーツ2017.07.19

https://www.nikkansports.com/baseball/news/1858433.html

週刊ベースボールオンライン2017.07.20

http://column.sp.baseball.findfriends.jp/?pid=column_detail&id=097-20170720-13

プロ野球 最強のホームラン打者」(小野俊哉、2014年)

プロ野球の職人たち」(二宮清純、2012年)