ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

歴代最強救援投手

 1959年、当時パイレーツにフォークを武器したフェイツという投手がいた。救援投手ながら18勝を挙げ、そこで翌60年、米国一の権威「ザ・スポーティングニューズ」誌がセーブの規則を提唱し、それまで過小評価されてきた救援投手の価値を高めることを目的に、年間最優秀救援投手に贈る「ファイアマン賞」が制定された。69年にセーブが正式に公式記録となり、73年から条文が整理されてルールブックに記載されるようになった。

 アメリカに遅れること約10年、当時の日本プロ野球界では、いまほど投手の分業制は進んでおらず、先発完投が多かった。そんな中、抑え投手として最初に脚光を浴びたのが、1960年代、「8時半の男」と呼ばれた当時巨人の宮田征典だった。心臓疾患のため短いイニングしか投げられない宮田をクローザーとして起用したのは、当時の川上監督だった。

 1974年、日本プロ野球において初めてセーブ数がタイトルになり、初代セーブ王となったのが、当時中日の星野仙一と南海の佐藤道郎だった。セーブ数はそれぞれ10、13と、今ほどその役割が定着していなかったように思われる。

 クローザーとして忘れてはならないのが、江夏豊である。先発で球界を代表するエースとして君臨した江夏は後年、当時南海の野村監督から「革命を起こさないか」と言われてリリーフに転向し、広島に移籍後は日本シリーズ終戦の「江夏の21球」で伝説を作った。

 その後も津田恒美赤堀元之佐々木主浩高津臣吾などのスーパークローザーが誕生し、こうしてクローザーの歴史が積み重ねられ、現在歴代最多セーブ記録は中日の岩瀬の402セーブとなっている。

 そして今年、さらなる大記録が誕生した。それは、9月5日のオリックス戦でソフトバンクデニス・サファテが、05年岩瀬(中日)07年藤川(阪神)の46セーブを抜く、日本プロ野球新記録となる47セーブ目をマークしたことだ。

 

◆クローザーに必要な4つの力

 こうしてクローザーの歴史に新たな名前が刻まれたサファテだが、私はこのサファテこそが、約半世紀の日本プロ野球のクローザーの中で最強投手なのではないかと思っている。これは単に、シーズン47セーブという日本記録保持者となったからというだけではない。これからその理由と説明していくわけだが、その前にクローザーとして必要な要素がなにかということをお伝えしたい。

 第一に、最終回の勝利がかかった場面に登場するクローザーとして最も必要なことは、ランナーを出さないことである。3つのアウト=1イニングをどれだけ最小リスクで抑えることができるかが、優秀なクローザーなのではないか。1イニング当たり何人ランナーを出すか、それを現す指標に「WHIP」がある。

 「ピンチで抑えられる」ということに関してもうひとつ紹介したいのが「K/BB」だ。これは四球1個に対し三振をいくつ取ったかという数値で、三振を取る力があり且つ四球を出さない制球力の高さを示している。三振を取れて四球を出さなければピンチを迎えずに終えられるということで、こちらもクローザーとして重要な資質である。

 そして、出塁させた走者の非帰還率を示す「LOB%」がある。こちらは、もし走者を出しても生還を許さないピンチ時の強さを示す。

 最後に、WHIP同様に広い意味で投手の力を現した指標に「FIP」を紹介したい。こちらは、投手の成績から守備を引き、被本塁打、与四死球奪三振だけで投手の能力を算出しようと考案されたもので、投手の素の力を現すのに現時点で限りなく近い指標である。

 以上、「WHIP」「K/BB」「FIP」「LOB%」の4つの指標を用いて、サファテが歴代のクローザー投手の中で最強である理由を説明していきたい。

 

◆クローザー成熟期を生き抜いた5投手

 過去の投手を振り返りながら、今シーズンのサファテを比較したいと思う。手始めに、これまでどのようなクローザーがいたのだろうかを振り返りたい。なお、ここではクローザー黎明期の昭和世代ではなく、クローザー競争が高まり、成熟期に入ろうとしている平成世代の投手を対象とする。

 まず私が真っ先に思いついたのが、日米通算381セーブを記録し、最優秀救援投手5回を獲得した、大魔神佐々木主浩だ。98年、当時のプロ野球記録である45セーブを挙げ、38年ぶりの優勝に大きく貢献し、その年のMVPを受賞した。次に思い浮かんだのは、日本、アメリカ、台湾、韓国でプレーし、通算347セーブを挙げた高津臣吾だ。01年には自己最多となる37セーブを記録し、日本シリーズではシリーズ通算最多の8セーブを挙げ、4度目の胴上げ投手になった。そして、日米通算234セーブを記録し、「幕張の防波堤」異名をとった小林雅英だ。02年達成した日本記録となる33試合連続セーブポイントは、いまだ破られていない。そして、やはり欠かすことのできない投手が、当時の日本記録だったシーズン最多の46セーブを記録した、05年の岩瀬仁紀と07年の藤川球児だろう。同年代でしのぎを削りあった両雄なしには、セーブの歴史は語れない。

 以上、クローザー成熟期を生き抜いてきた5投手とサファテを比較することで、今シーズンのサファテが歴代最強救援投手であるかを説明していく。

 

◆サファテが最強クローザーである理由

 さきほど紹介した「WHIP」「K/BB」「FIP」「LOB%」というクローザーに必要な要素を、サファテを含めた6投手でそれぞれ比較した表をみてもらいたい。

 4つの全ての項目で、サファテが最も優れていることがわかる。特に、K/BBは鳥肌が立つほど高い数値を示している。最速159キロの直球にこれだけの制球力が備わっているとなると、相手チームにとってとてつもない脅威となることは間違いない。WHIPも0.68と優秀で、こちらは規定投球回数未満ではあるが、2位の菅野の0.89を大きく引き離し、現時点では12球団でトップだ。

 

 

セーブ数

防御率

WHIP

K/BB

LOB%

FIP

佐々木主浩(98)

45

0.64

0.80

6.00

87.4%

0.96

高津臣吾(01)

37

2.61

1.20

3.00

77.9%

2.59

小林雅英(02)

33

0.83

0.74

6.83

91.5%

1.50

岩瀬仁紀(05)

46

1.88

1.03

6.50

80.3%

1.75

藤川球児(07)

46

1.63

0.82

6.39

81.6%

1.07

サファテ(17)

49

0.90

0.68

9.40

92.6%

0.87

※数値は2017年9月9日現在

 

◆サファテが最強救援投手であるもうひとつの理由

 そんなサファテも、今年8月、痛恨のサヨナラ被弾を浴びた試合がある。その試合の後、サファテは早い回でマウンドを降りる先発投手陣に対し、「これだけ連続で(早い回で)降りられると、ツケが回ってくる。岩崎、森、嘉弥真、みんな疲れている」と苦言を呈した。

 これにはシビれた。

 たとえばメジャーなどでこういった発言をするということはフロント批判と捉えられ、場合によってはチームを追放されることもある。今回のサファテのケースも、捉えられ方によってはフロント批判にもなりえた。しかし、違った。日本球界7年目の36歳、チームの信用を勝ち得たサファテによる発言はチームの雰囲気を変えたのだ。現代野球における重要な立場にあるクローザーとして最高評価を得たサファテだからこそ、この発言が生まれたのであり、チームに響いたのだと思う。チームに勝利をもたらすのは、最終回を無失点に抑えることだけではないない。もしかしたら、サファテが最強救援投手である理由は、成績以外にもこうしたリーダーシップや人柄もあるかもしれない。

 

参考

「dot.」2017.09.06

https://dot.asahi.com/dot/2017090600048.html

zakzak」2015.05.17

http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20150517/bbl1505170830003-n1.htm

スポーツニッポン」2017.08.01

http://m.sponichi.co.jp/baseball/news/2017/08/01/kiji/20170801s00001173344000c.html