ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

職人の打撃開眼

 9月16日、ソフトバンクホークスがリーグ史上最速優勝を決めた。

 昨年、惜しくも日本ハムに逆転優勝を許したソフトバンクは、今シーズンも開幕から楽天と厳しい首位争いを繰り広げてきた。新加入のデスパイネ、2013年のドラフト4位上林の台頭、6年振りに日本球界復帰を果たした川崎、最多勝争いを演じエース級の活躍を見せる東浜など、昨年までとはまた違った戦力で、見事2年振りの優勝を果たした。柳田や松田をはじめとした主力選手にこうした新戦力が加わり、そこに内川や武田が完全復活を果たすとなると、もはや非の打ち所がない戦力となるに違いない。

 

◆打撃開眼した小技職人

 しかし、こうしたスター軍団・ソフトバンクホークスの戦力を語るうえで外すことのできない選手が、今宮健太だ。昨年まで4年連続でゴールデングラブ賞を獲得した日本球界屈指の守備力、パ・リーグ記録となる62犠打を達成した実績をはじめ、今年7月5日には史上最年少での250犠打、史上三人目となる三年連続30犠打を記録するといったバント技術といったように、今宮といえば小技のきいた職人タイプとしてイメージを持つ人が多いかもしれない。

 しかし、今年はそれに加え、強打者としての面も見せている。ここまで本塁打、打点、安打数、盗塁数、塁打数など、多くの打撃部門で自己最高記録を更新しており、また、打率、長打率出塁率、得点もこのままの調子を維持すれば自己記録の更新は確実だろう。

 

◆ヒット率の上昇とゴロ率の上昇

 ここ数年と今年で、今宮の打撃内容にどのような変化があるのかをみていく。

 まず私が注目したのはBABIPだ。これは、打球が安打になった割合を示す数値で、2015年は.261、2016年は.276、そして2017年は.305と年々上昇している。これは放った打球がヒットになりやすくなっているということを示している。この数値の高さは、今シーズンの打率に反映されているかもしれない。

 放った打球がヒットになりやすいとは、どういうことだろうか。私が少年野球チームに所属していたこと、コーチや監督からフライではなくゴロを打てとよく指導された。その心は、フライは捕球した時点でアウトが成立するが、ゴロでは捕球後の送球、それに対する捕球という一連のアクションが必要とされるので、相手のミスを誘いやすいということで、ゴロを打つことの大切さは高校、大学、プロなどの解説を聞いていても時折話題となる。今シーズンの今宮のヒット率の高さには、打球傾向にそれを証明できるかもしれないヒントが隠されていた。

 放った打球をライナー、ゴロ、フライに分け、それぞれの割合を見ることで今宮の打球傾向を知ることができる。それぞれの割合は、2015年は7.9、42.9、49.2、2016年は10.3、44.0、45.7、2017年は9.8、45.8、44.4と、年々ゴロの割合が上昇し、フライの割合が減少していることがわかる。

 ゴロが増え、フライが減る。打者走者は50メートル6秒1の俊足・今宮。野手は内野安打を警戒して浅く守るかもしれない。すると、ヒットゾーンが広くなる。送球を焦った内野手の目に見えないミスがヒットと判定されるかもしれない。ゴロが増えるということは、それだけヒットになる確率が高まるということだ。

 

◆今宮の出場がチームに勝利をもたらす

 こうして打撃成績を向上させた今宮が、守備だけでなく打撃でもチームに貢献していることは言うまでもないが、実際どのくらいチームの勝利に貢献しているのかをみていくことにする。

 打撃による得点貢献の総量を表すのにwRCという指標がある。これは、打者が創出した得点数を表す指標で、数字が大きいほどチームに多くの得点をもたらしている打者と評価できる。今シーズンのソフトバンク規定打席に到達している選手のwRCを見てみると、1位や柳田の109.2とこちらはリーグ2位と好成績を残している。一方、今宮はどうかというと、チーム3位の71.8を記録している。これは2位のデスパイネの75.2と僅差に迫っており、2番という制約の多い打順を打つことが多い今宮だが、チームでクリーンナップを打ってもおかしくない成績を残していることになる。

 また、今宮のwRCは、同じくリーグで2番を打つ他の打者と比較しても、26本塁打62打点の強打の2番、楽天のペゲーロの77.4に匹敵し、ライオンズの源田に至っては源田の55.9と大きく差をつけている。2番打者としての勝利貢献度も目を見張るものがある。

 

◆きっかけはテニス?

 今でこそ今宮は、小技の光る選手としての地位を不動のものにしているが、もともとは高校球界屈指の強打者だった。高校通算62本のホームランを放つなど、明豊高校時代から打撃力には定評があった。レギュラーに定着した2012年から昨年まで、自己最高打率は.253、通算本塁打が27本と、あくまでもプロでは職人タイプを貫いてきた。

 今シーズンの春季キャンプでは自身の課題を打撃とし、打撃フォームの改善に取り組み、その実践が、昨シーズンから取り入れ始めたという通称「テニス打法」だった。きっかけは昨シーズン、藤井打撃コーチのアドバイスを受けたことだった。ポイントを前にしてさばく打撃に修正し、今宮曰く「テニスのラケットを振るイメージ」にしたことで、1割近く打率を上げることにも成功した月もあった。踏み込んだ左脚を軸に回転し、右脚も前方へ踏み出して打つというこの打法で、打撃成績はすでにお伝えした通り、自己最高を更新する勢いだ。

 今年から打撃コーチに就任した立花コーチは「3割5分を目指していこう」と半ば冗談交じりに言ったそうだ。壁は高いが、不可能ではないのでは?と思えてしまうほどの身体能力と野球センスを持った今宮の、今後は打撃にも注目していきたい。

 

出典:

東スポ2016年5月27日

西スポ2017年2月18日

スポニチアネックス2017年7月5日

西スポ2017年9月18日

各種データはDELTA社より提供(2017年9月22日閲覧)