ほーりーの野球日記

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自分の観方で野球を紹介します

新人王レース

  開幕直後、セ・リーグのルーキーでは中日の京田が話題を独占してきた。7月4日にはリーグ新人最多14度目となる猛打賞を記録し、8月14日には新人では29年振りの20盗塁を達成、9月18日には新人最多安打の球団記録を更新した。

 このまま今年の新人王は京田で決まりかと思われていたが、シーズン大詰めになって、対抗馬が現れた。ここまでチーム同率3位の勝ち数、奪三振数は2位の好成績を収めており、CS出場に大きく貢献したDeNAの濵口だ。

 ここ数年の新人王受賞者の傾向から、熾烈な争いを繰り広げるセ・リーグの新人王レースの行く末を予想したいと思う。

 

◆新人王レースは数値の上では京田が有利だが…

 まず、新人王の選出にあたって参考になる指標を紹介したい。

 9月26日のネット版の野球太郎の記事から発見したそれは、新人王候補選手の成績を数値化し、そのポイントから新人王の最右翼となる選手を選出するというものだ。ここでは便宜的に新人王ポイントとする。

 新人王ポイントの算出法は以下の通り。

  • 野手…(塁打+四死球+盗塁)×1ポイント
  • 先発投手…(投球回数×1ポイント)+(勝利数×10ポイント)※投球回数は1/3回、2/3回は切り下げ
  • 救援投手…(登板数+ホールド数+セーブ数)×2ポイント

 今回はこの指標に従い、京田と濱口のどちらが新人王に近いのかを見ていくことにする。2人の新人王ポイントを見てみると、次のようになる。

  • 京田陽太…200塁打+27四死球+23盗塁=250ポイント
  • 濱口遥大…10勝6敗 投球回123.2=223ポイント

 結果は、京田が250ポイント、濱口が223ポイントで京田に軍配が上がった。

 となれば、新人王は京田の手中にあることに疑いがないように思われるかもしれないが、DeNAのファンの方、落胆するのはまだ早い。逆に中日ファンは安心するのはまだ早い。過去の新人王の成績と選出の傾向を見ると、濱口の逆転新人王の可能性があるのだ。

 次からは、その根拠をみていく。

 

◆Aクラスの先発投手が、最も可能性が高い?

 2000年以降、新人王を獲得した選手は33選手(00年のパ・リーグは該当選手なし)の受賞傾向をみていく。ここでキーワードとなるのは、「新人王ポイント」「A/Bクラス」「投票割合」の3つだ。

 以下の2つの表をみてほしい。

表1 33選手のクラスごとの内訳

 

Aクラス

Bクラス

受賞選手数

野手

先発投手

13

18

救援投手

合計

20

13

33

 一つ目の表は、33選手を「野手」「先発投手」「救援投手」に分類し、所属チームのクラス別の受賞者数を示したものだ。まず大前提として、新人王は全国の新聞、通信、放送各社のプロ野球担当記者を5年以上経験している記者による投票で決まるもので、そのため、明確な数字だけではなく、「チームの勝利に貢献した」「首位攻防戦で活躍した」といったような記者の「主観」も入ってくる。それをふまえてこの表を見てみると、Aクラスのチームから多く新人王が選出されていることがわかる。その上で最も新人王を獲得しているカテゴリーを見てみると先発投手が最も多く、やはりAクラスだとその傾向は高い。

 この結果が、濱口の逆転新人王があり得ると考える一つ目の根拠である。

 

◆Bクラスの野手は新人王のハードルが高い?

 次に示すのが、上の表に新たに、過去33選手の新人王ポイントと投票数の平均値を変数に加えたものだ。投票数は年によって差があるため、ここでは投票数ではなく、全体の有効投票数から見た得票割合とする。

表2 33選手の新人王ポイントと投票割合の平均値

 

全体

Aクラス

Bクラス

野手

平均ポイント

238.4

215.3

255.8

平均得票割合

83.0%

89.8%

78.0%

先発投手

平均ポイント

263.0

256.3

280.4

平均得票割合

81.7%

80.9%

83.8%

救援投手

平均ポイント

171.0

178.0

164.0

平均得票割合

69.5%

77.2%

61.9%

 この表からは、全体としてみると先発投手は野手よりも高い平均新人王ポイントを出しているにも関わらず、平均得票割合は野手のほうが高いことがわかる。野手のほうが少ない投票数で新人王を獲りやすいということ、つまり、野手で活躍するほうが、新人王としての印象が良いということなのだろうか。そう考えると、ここは濱口ではなくやはり京田が新人王の筆頭だと考えるのが妥当ではないかと考えられる。

 

 しかし、それをクラス別で見てみると、必ずしもそうは言えないことがみえてくる。野手に関していうと、Bクラスの平均新人王ポイントはAクラスを上回っているにも関わらず、平均得票割合はAクラスを下回っている。これは、チームの上位進出の貢献が得票数を左右するということの証左ではないだろうか。つまり、新人野手がBクラスのチームで受賞するほうが難儀ということなのかもしれない可能性がここで示されている。

 

◆先発投手はシビアな目で見られる

 先発投手は、野手とは対照的に順位に左右されず、平均新人王ポイントの高さと得票割合が比例している。つまり、先発投手は野手と違って正当な評価を受けているように見える。とすれば、この結果は先発投手である濱口はシビアな目で見られるという可能性も示唆している。

 

◆不遇を味わった2選手

 ここまで、過去の傾向から京田と濱口の新人王争い予想の判断材料をみてきた。結論をいうと、成績の上では京田のほうに分があるものも、過去の例から見ると京田の立場は決して安泰というわけではなく、記者の主観次第では、濱口の逆転新人王も可能性もあるということだ。

 

 では実際、過去に成績は上回っているものの、得票割合で新人王を逃した選手はいるのだろうか。直近の33選手の中から、今回の濱口京田の境遇と似た「Aクラス先発投手がBクラス野手よりも新人王ポイントが低く」新人王を受賞したというケースを見ていく。

 先発投手で新人王を受賞した選手は18選手、そのうちAクラスだったのが13選手というのは表1で示した通りだ。この13選手とそれぞれ同年度に新人王を逃した野手でチームがBクラスだったのは、16年茂木(楽天)、同年吉田(オリックス)、13年大谷(日ハム※打者として考えた場合)、07年飯原(当時ヤクルト)、03年村田(当時横浜)の5選手がいた。こののち、その年の新人王よりも新人王ポイントが高かった野手は、16年茂木と07年飯原の2選手がいた。16年は実際に受賞した高梨の新人王ポイントが209だったのに対し茂木が218、得票率は高梨の51.6%に対して茂木が45.7%だった。07年は実際に受賞した上園の新人王ポイントは165で得票割合は51.0%だったのに対し、飯原は新人王ポイントが203で得票割合はなんと0.5%の1票にすぎなかった。

 33サンプルのうち2例というのは決して多いケースとはいえないかもしれないが、不遇を味わった選手が実際にいたという事実は看過できない。こうした事例からも、京田が濱口に逆転新人王を献上する可能性がないこともいえない、という程度にはいえるかもしれない。

 

◆最終判断は記者の主観次第

 最後に、主観にまつわる話をして終えたい。

 濱口は自身最終登板となる10月4日の登板で、球団史上59年ぶり3人目となる新人左腕での10勝目を挙げた。ライバルの京田も3打数無安打に抑え、直接対決で貫禄を見せつけた。「正直、新人王のことはあんまり気にしていない」とインタビューで答えた一方で、投票に頭を悩ませる記者も、この一戦で濱口に投票を決めた記者もいるのではないだろうか。この対戦を含め、京田と濱口の対戦成績は9打数1安打で濱口に軍配があがっている。

 

 それでも、京田がここまで新人選手の話題の多くを占めてきたことには変わりない。冒頭で紹介した京田の数々の新人記録のほか、10月10日に迫るチーム最終戦では、リーグ新人安打記録がかかっている。現在149安打の京田がその試合で4安打を放てば、長嶋茂雄の新人記録に並ぶ。一試合4安打というのは難しいが、決して不可能な挑戦ではない。

 京田と濱口の新人王争いの行く末に最後まで目が離せない。

 

出典:「野球太郎」2017.09.26

http://yakyutaro.jp/r.php?hash=pAOhR

「BASEBALL KING」2017.09.06

http://baseballking.jp/ns/column/130473

「日刊スポーツ」2017.10.05

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201710050000085.html

「日刊スポーツ」2017.10.07

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201710070000084.html