ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

ベストナイン先発投手部門

  レギュラーシーズンの全日程が終了し、先週末からクライマックスシリーズに突入した。これよりポストシーズンを戦うチーム、すでに来季を見据えたチーム、それぞれある中、各タイトルの顔ぶれが出揃ってきた。

 パ・リーグではサファテが日本新記録の54セーブで3年連続の最多セーブ、則本が野茂英雄以来となる24年ぶりの4年連続最多奪三振、菊池は初のタイトルホルダーにも関わらず二冠を達成する活躍を見せた。セ・リーグでは菅野の3度目となる最優秀防御率以外、全て初受賞の選手で主要タイトルを占めるなど、新顔の台頭が目立った。

 今後はMVPや新人王など成績の上積みではない記者投票によるタイトル選出も発表され始めるが、そのうちの一つに、ポジションごと突出した成績を残した選手が各リーグから一人ずつ選出されるベストナインがある。

 ベストナインは文字通り、ポジションごとにベストな選手に送られるタイトルで、私も毎年受賞者の予想を楽しんでいる。そこで今回からは公式発表に先立ち、数回に渡って個人的ベストナインを勝手に選出していきたいと思う。

 

 しかし、ここではあえてタイトルの受賞やチームの順位にとらわれない選出を心掛けたい。それは、選手の真の能力が結果論の個人成績やチームの勝敗や順位に埋もれてしまい、正当な評価を得られないことを避けるためだ。

 最下位のチームと優勝チームの投手では、どちらが最多勝を獲りやすいかと言われれば、もちろん優勝チームである。しかし、多く勝ったことがその選手の能力と一致するとは限らない。勝敗には投手の能力で変えることのできない運が働くことがあるからだ。

 チームの成績に左右されない能力に目を向けることで、高評価を受ける選手が高評価を受ける選手たる所以を明らかにすることができ、また、過小評価されている選手が再評価されると考える。これらの点において、今回の試みの意義があると私は考える。

 

◆先発投手を選定する際に着目すべき3項目

 本来ならば投手は一枠しか設けられていないところを、ここでは先発、中継ぎ、抑えの役割ごとに一人ずつを選出していきたい。それに際し、はじめに投手全般に必要な能力を挙げていきたいのだが、ここでは次の3点ご提案させていただきたい。

 一つ目は「WHIP」だ。1イニング当たり何人ランナーを出すかという指標で、役割にかかわらず打者を打ち取る能力を図ることができる。1.0未満なら球界を代表するエース、1.2未満ならエース級、1.4を上回ると問題ありというのが相場だ。

 二つ目は「tRA」だ。守備の関与しない与四死球奪三振・被本塁打という3つの項目を示す「FIP」という指標に加え、どのような打球を打たれたかまで推定・評価する指標する、より精度の高い指標で、リアル防御率とも言い換えられるかもしれない。

 三つ目は「K/BB」だ。四球1個に対し三振をいくつ取ったかという数値で、投手の制球力を示す指標のひとつとして用いられる。三振を取れて四球を出さなければそれだけピンチで抑えられるという見方で、3.5を超えると優秀な投手と考えられる。

 以上の3項目を、どの役割の投手も例外なく見ていくことに加え、先発、中継ぎ、抑えの役割に応じた評価基準に着目し、全3選手をここでは選出したいと思う。

 まずは投手部門のうち、先発投手からみていく。

 

◆高い危機回避能力を見せた菅野

 先発投手は、規定投球回数に達した25選手を対象とする。参考までに主要タイトルの受賞者をおさらいしていくと、セの最優秀防御率最多勝が菅野、最多奪三振がマイコラス、最高勝率が薮田、パの最優秀防御率が菊池、最多勝は菊池と東浜、最多奪三振が則本、最高勝率が千賀という顔ぶれになる。ベストナイン先発投手部門は、投手二冠を達成した菅野や菊池だろうか、優勝に貢献した薮田や東浜だろうか。それとも別の投手なのだろうか。

 まずは先に挙げた3項目ごとのトップ選手をみてみる。

 0点台のWHIPを記録したのは、0.85でトップだった菅野を筆頭に、菊池、マイコラスの3選手だった。16年は菅野1選手、15年は大谷、マイコラスの2選手、14年は0選手だったことから、ここ数年では比較的レベルの高いシーズンだったように思える。

 その高いレベルで頭一つ抜きんでた菅野の危機回避能力の高さがわかる。

 

表1 先発投手WHIP5傑

 

選手

WHIP

1位

菅野 智之

0.85

2位

菊池 雄星

0.91

3位

マイコラス

0.98

4位

岸 孝之

1.02

5位

野上 亮磨

1.06

 

◆失点を防ぐ能力は則本がナンバーワン

 菅野、菊池、マイコラスのレベルの高さはtRAにも同様にみられる。上位5選手の中にもこの3選手がランクインし、2点台の高水準を記録している。しかし、tRAの最高選手はこの先の3選手ではなく、2.28で則本だった。しかも、上位5選手が今季の防御率をFIPが上回っていた、つまり味方の守備に助けられた場面が多かったのに対し、則本は唯一下回っていた。投手の力量として失点を防ぐ能力をみたとき、それが最も高いのは菅野でも菊池でもマイコラスでもなく、則本だということがここではわかる。

 この観点からは、則本の一投手としての能力の高さがわかる。

 

表2 先発投手tRA5傑

 

選手

tRA

1位

則本 昂大

2.28

2位

菅野 智之

2.56

3位

マイコラス

2.57

4位

メッセンジャー

2.83

5位

菊池 雄星

2.28

 

◆マイコラスの優れた制球力、来期の飛躍を感じさせる秋山

 K/BBでは、両リーグの奪三振王に大きさ開きがみられた。奪三振王はマイコラスと則本が獲得したが、K/BBでみるとマイコラスが全体で1位となる8.13と高い数値を記録したのに対し、則本は5傑外の4.63に終わった。与四死球がそれぞれ34、51だったことからも、三振を取る能力に優れた両投手でも制球力の差を現す結果となった。

 先発投手陣随一の制球力を誇るマイコラスをここでは推したいが、7.69を記録した阪神の秋山の高い制球力も目を見張るものがある。WHIPも1.09を優秀で来期のさらなる飛躍を期待したい。

 

表3 先発投手K/BB5傑

 

選手

K/BB

1位

マイコラス

8.13

2位

秋山 拓巳

7.69

3位

菅野 智之

5.52

4位

岸 孝之

4.97

5位

野上 亮磨

4.71

 

◆監督、コーチにとっては安心?試合を作る能力に優れた菊池

 ここまで3項目をみてきた。WHIPでは菅野、FIPでは則本、K/BBではマイコラスをそれぞれ注目すべき選手として挙げたが、ここからはさらに先発投手に特化した項目を交えてみていく。

 先発投手といえばまずQS率は欠かせない。6回を3失点以内に抑える立ち上がりをどれだけ果たしているかがわかるこの指標で、先発投手としてのゲームメイク能力をみていきたい。

 80%を超える高いQS率を記録したのは、ここでも菅野、菊池、マイコラスの3選手だった。中でも菊池は26試合の登板で全投手トップの23回、約88.46%の達成率を誇る。過去、16年は77.27%、15年は71.43%と年々向上させており、今年の飛躍を裏付ける結果となっている。

 

表4 先発投手QS率5傑

 

選手

QS率(%)

1位

菊池 雄星

88.46

2位

菅野 智之

84.00

3位

マイコラス

81.48

4位

千賀 滉大

77.27

5位

岸 孝之

76.92

 

 QS率に付随して、平均投球回数もみてみたい。完投数とあわせて、先発としての体力をここでは注目したい。なお、ここでは1/3回、2/3回は切り下げて考えている。平均投球回数が7回を超えたのは7.48回の菅野を筆頭に、則本、菊池の3選手だった。菅野はリーグトップの6完投、菊池はそれに並ぶがリーグでは金子と並ぶ2位、リーグトップは則本の8完投だった。やはり、完投数の多さが平均投球回数にも表れている。なお、投球イニングが最多だったのはマイコラスの188回だった。しかし、比較的多い登板機会だったことに加え、完投数も0だったことなどから、6.96とあと一歩のところで7回台を逃した。

 

表5 先発投手平均投球回数5傑

 

選手

平均投球回数

(完投数)

1位

菅野 智之

7.48

2位

則本 昂大

7.40

3位

菊池 雄星

7.19

4位

マイコラス

6.96

5位

金子 千尋

6.81

 

◆野村の高い守備力、菅野の唯一の弱点

 最後に、守備力に言及したい。

 投手は9人目の野手といわれており、守備力の高さも投手としての能力を示す要素になる。一説によると、クイック、牽制、バント処理の能力のことを野球界では「投手の三種の神器」と表現されるほど必要な能力といわれている。詳しくは『古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術』を参照されたい。

 守備全般での貢献度を示す指標に「UZR」がある。それによると、投手として最も守備貢献度が高かった選手は1.90で野村だった。また、守備率も1.000つまり無失策で、失策防止による貢献度を示す「ErrR」も0.80で涌井と並びトップだった。野村はWHIPが1.22、平均投球回数も6.20と決して悪いわけではないのだが、FIPが3.80、K/BBが2.79とベストナインまでのしあがるだけの成績を残すことはできなかったことが悔やまれる。最多勝と最高勝率の二冠に輝いた昨シーズン並みの活躍を来季は期待したい。

 反対に、ここまで好投手として各項目での上位ランクに名前が挙がっていた菅野が、ここではワースト2位の-0.60となった。昨年セ・リーグゴールデングラブ賞を受賞した菅野も、今年は守備面でベストなパフォーマンスを発揮することができなかった。また、菊池にもUZRにおけるマイナス数値が記録された。今シーズン、圧巻の投球を見せた菅野と菊池の両投手において、守備が最大の弱点といえるシーズンだったのではないだろうか。その一方で、マイコラスは上位にランクインするなど、ここまでみてきた項目でトップランクに名を連ねてきた菅野、菊池、則本らと比較して守備の面で優れた能力を示していることがわかる。

 

表6 先発投手UZR5傑

 

選手

UZR

守備率

1位

野村 祐輔

1.90

1.000

2位

メッセンジャー

1.40

1.000

同3位

井納 翔一

1.00

1.000

同3位

涌井 秀章

1.00

1.000

5位

マイコラス

0.90

1.000

同14位

菊池 雄星

-0.20

.963

同23位

菅野 智之

-0.60

.959

 

◆総合的な能力をあわせもつマイコラスがベストナイン

 ここまで6つの観点からより優れた先発投手の選出に試みてきた。

 ここで、私が先発投手部門でのベストナインに選出したい投手は、マイコラスだ。対抗馬となる菅野や菊池と比べると、成績の上では3番手という印象があったが、制球力や守備力など、マイコラスの投手としての総合的な能力が高い水準にあることがわかった。

 課題をあげるとしたら、それは投球回数にあるかもしれない。最多イニングを投げた投手にイニング数を課題にあげるのは酷なことかもしれないが、先発投手として完投数がゼロだったことは、個人的には物足りなさを感じた。来日1年目に4完投を記録しているので、体力的にも実績的にも決して不可能ではないはずだ。

 ここ数日でメジャー復帰が囁かれているマイコラスだが、来シーズンももしその投球を見ることができるなら、今後はイニング数に注目していきたい。

 

表7 マイコラス、菅野、菊池の今シーズンの成績

 

成績(順位)

マイコラス

菅野

菊池

防御率

2.25(3)

1.59(1)

1.97(1)

勝利数

14(5)

17(1)

16(1)

奪三振

187(4)

171(2)

217(2)

勝率

.636(3)

.773(2)

.727(3)

イニング数

188(1)

187 1/3(2)

187 2/3(1)

WHIP

0.98(3)

0.85(1)

0.91(2)

tRA

2.57(3)

2.56(2)

2.96(5)

K/BB

8.13(1)

5.52(3)

4.43(7)

QS率

81.48(3)

84.00(2)

88.46(1)

平均投球回数

6.96(4)

7.48(1)

7.19(3)

UZR

0.90(5)

-0.60(14)

-0.20(25)