ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

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ベストナイン中継ぎ投手部門

 続いて、中継ぎ投手を選出していきたいと思う。中継ぎ投手は、登板数が60試合以上、あるいは15セーブ未満20ホールド以上のいずれかを記録した27選手を対象とする。

 タイトルをおさらいすると、セ・リーグの最優秀中継ぎ賞は桑原とマテオの阪神コンビ、パ・リーグが岩崎の、いずれも初受賞となっている。果たしてこの3選手は、タイトル通りの活躍を見せているのだろうか。

 先発投手と同様に、「WHIP」「tRA」「K/BB」の3項目をまずは見ていきたい。

 

◆試合の勝敗を左右する場面、もっとも安定感を見せたのはマーティン

 中継ぎ投手として最も優れたWHIPを記録したのは0.72でファイターズのマーティンだった。昨シーズン、増井の代役としてクローザーに抜擢されると21セーブの好成績を上げ、日本一に貢献した。今シーズンは前半戦で負傷し、登板数は昨シーズンを下回る40試合に終わったものの、それでも29ホールドを記録した。

 ここでは、12球団の主要セットアッパーの中で唯一0.7点台を記録したマーティンが一歩リードを見せた。

 次点では同じくファイターズの鍵谷だ。マーティン、宮西がセットアッパーとして活躍する印象が強いが、勝敗にかかわらず、ホールドがつかない場面でも献身的な投球をみせた。プロ5年目の今シーズン、自己最高成績を収め、来期もブルペンを支える貴重な投手の一人となるだろう。

 

表1 中継ぎ投手WHIP 5傑

 

選手

WHIP

1位

マーティン

0.72

2位

鍵谷 陽平

0.88

3位

髙橋 聡文

0.90

4位

中﨑 翔太

0.92

5位

桑原 謙太朗

0.94

 

◆「60試合クインテット」の抜群の安定感

 tRAでは上位5選手のうち4選手が阪神勢だった。今シーズン、1球団で5投手が60試合登板を達成するという史上初の快挙を成し遂げたチームにおいて、その中心を担った「60試合登板クインテット」の盤石ぶりがここからわかる。

 その中でもトップを記録したのは、クインテットの一角、髙橋聡文だった。クインテットでは最年長の34歳、プロ16年目のベテラン左腕が登板数も防御率もキャリアハイに迫る活躍を見せた。

 もう一人、マテオにも注目したい。最速157キロのストレートを武器に、昨シーズンはクローザーを務めた剛腕が記録した防御率は、ほかの4投手に比べて悪かったのだが、一方でtRAは最も良くて2.11だった。なおかつ、ほかの4投手のtRAが防御率よりも悪かったことを考えると、投手としての力量は評価に値するだろう。

 

表2 中継ぎ投手tRA 5傑

 

選手

tRA

1位

髙橋 聡文

2.06

2位

マテオ

2.11

3位

桑原 謙太朗

2.31

4位

マーティン

2.45

5位

岩崎 優

2.51

 

◆抜群の制球力の牧田、奪三振能力は高いが制球力に課題のある石山

 K/BBについてはどうだろうか。

 ここでは、日本球界では珍しいアンダースローの牧田が最も優秀だった。奪三振率は5.03と突出して高いわけではないものの、四球率が12球団でもっとも低い2.0を記録するなど、制球力の高さが際立った。独特な投球フォームでここまで高い制球力が備わっていると考えると、メジャー球団が興味を示すのに、なにも疑問は持たない。

 また、上位5選手の中では石山が唯一10点以上の奪三振率を記録した。ルーキーイヤーに60試合に登板したものの、ここ数年は精彩を欠いた石山も、今シーズンは見事復調し、キャリアハイとなる66試合に登板した。課題があるとすればそれは四球率にあるということか。それでも、ルーキーイヤーだった13年の11.4の与四球率を今シーズンは6.0にまで改善した。より制球力に磨きをかけ、さらなるレベルアップを図りたいところだ。

 

表3 中継ぎ投手K/BB 5傑

 

選手

K/BB

1位

牧田 和久

7.05

2位

桑原 謙太朗

6.34

3位

マーティン

5.64

4位

森 唯斗

5.02

5位

石山 泰稚

4.45

 

◆得点圏時の被打率の低さが非生還率にも表れている岩嵜とマーティン

 ここからはセットアッパーとクローザーに共通で検討する2項目をみていく。

 その一つ目となるのが「LOB%」で、出塁させたランナーの非生還率を表した指標だ。試合の勝敗に大きな影響を与える終盤での登板が多くなる役割ということで、勝負どころで発揮される粘り強さをみていく。

 90%越の高い非生還率を記録したのは、今シーズンパ・リーグの最優秀中継ぎ賞を獲得した岩嵜と、WHIPでも好成績を記録したマーティンの2選手だった。

 岩嵜、マーティンの非生還率は、ともに得点圏時の被打率にも表れている。対象選手中、岩嵜の得点圏被打率は2番目に優秀な.132、マーティンは3番目の.132だった。特に岩嵜は、満塁時を8打席で無安打に抑えるなど、ピンチでの強さを発揮した。

 

表4 中継ぎ投手LOB% 5傑

 

選手

LOB%

1位

岩嵜 翔

92.20

2位

マーティン

91.30

3位

中﨑 翔太

87.60

4位

桑原 謙太朗

86.80

5位

福山 博之

85.20

 

◆ホームランは打たれないが、失点率は高いシュリッター

 試合の勝敗に大きな影響を与えるという意味において、LOB%と並び見ておきたいのが、被本塁打率だ。下の表は対象選手の被本塁打率が優れている投手を表している。それによると、来日一年目の西武・シュリッターが最小だった。63と2/3イニングを投げ、打たれた本塁打はわずか1本だった。ちなみに、同様に阪神の高橋も1本、「抑え部門」に出てくる楽天の松井に至っては0本だった。

 しかし、今シーズン記録した防御率は2.83の好成績だったものの、tRAはそれを大きく上回る4.43で、対象選手中下から二番目だった。このあたりはK/BBやから説明できるかもしれない。0.79というK/BBが表すように今シーズンは制球難に苦しんだ。通算被打率も.251と決して優秀ではなく、被適時打が多いのか、失点を防ぐ能力に課題が残った。

 その点に比べ、60登板クインテットを担う高橋、岩崎、桑原の3投手はここでも安定感のある結果を残した。

 

表5 中継ぎ投手HR/9 5傑

 

選手

HR/9

1位

シュリッター

0.14

2位

髙橋 聡文

0.19

3位

岩崎 優

0.25

4位

桑原 謙太朗

0.27

5位

福山 博之

0.30

 

◆万能型の岩崎、切り札的なマシソン

 ここから、先ほどまでの投手全般の能力から派生して、中継ぎとして必要な能力をみていく。

 中継ぎは先発の投球内容次第では急な登板やイニングまたぎを求められる。勝ち試合のいわゆる「勝利の方程式」を担うだけでなく、時として同点やビハインドの場面でも登板するという、同じ中継ぎでもクローザーと比べてフル回転できる臨機応変さやスタミナが必要だ。そこで、下の表で示したのが、各セットアッパーの平均投球回数だ。はじめに又吉について言及しておく。

 又吉は開幕当初先発を任される試合があり、そのこともあり、投球回数は110に達し、そのため平均投球回数も2回台と多くなっている。そこで、ここではセットアッパーとしての登板に限った41試合56イニングとして考え、平均投球回数を1.37とする。

 それをふまえて見てみると、1イニング以上を平均して投げたのは27投手中9投手だった。この9投手に、先ほどまで各項目に名を連ねる常連だった高橋や桑原が外れた。高橋と桑原の平均投球回数はそれぞれ0.77と0.97で1イニングに届かなかった。これには60試合に登板した投手が5投手もいたというチーム事情が関係していると思われる。中でも高橋は、独特な投球フォームから左のワンポイントという起用法が多く、これが平均投球回数を減らしている理由と考える。そんな中で岩崎がクインテットの中で唯一上位に入ったことは興味深い。1イニングを投げることを前提としないチームの中継ぎ事情において、1イニング以上を投げる岩崎からは、どの場面でも投入できる「困ったときの岩崎」としての使いやすさが感じられる。

 話は変わり、見てもらいたいのが、又吉7回、マシソン15回、牧田8回、岩崎14回という数字だ。これは、1イニングよりも多い投球回数、つまりイニングまたぎを記録した試合の回数だ。セットアッパーとして比較的投球回数が多い上位選手の中にあって、マシソンの15回と岩崎の14回は突出した登板回数のように思われる。それぞれのイニングまたぎでの成績はマシソンが33回で防御率2.45、岩崎が28回1/3で防御率3.49だった。

 岩崎の万能性も捨てがたいが、ここでは、長いイニングも投げられて、防御率も優れているマシソンを、ベストセットアッパーの候補として入れたい。

 

表6 中継ぎ投手平均投球回数 5傑

 

選手

平均投球回数

1位※

又吉 克樹

1.36

2位

マシソン

1.15

3位

牧田 和久

1.07

4位

岩崎 優

1.06

5位

石山 泰稚

1.03

同5位

ジャクソン

1.03

同7位

岩嵜 翔

1.00

同7位

森 唯斗

1.00

同7位

近藤 大亮

1.00

 

◆相手打者の打席に左右されない強さを持つマーティン

 最後にみていきたいのは、細かい被打率についてだ。先発投手やクローザーと違い、セットアッパーは次の打者が左打者か右打者で登場の場面が変わってくる場合がある。つまり、先発投手やクローザーが否応なしに打者のめぐり合わせに対峙する一方で、セットアッパーは打者の打席によって有利な場面での登板を迎えることが多くなるということで、一見するとそれはセットアッパーの成績をより向上させる要因かもしれない。しかし裏を返せば、左右別の被打率を見ることで、打席の違いに左右されない投手そのものの力量に近づくことができるのではないかと考える。

 それをまとめたのが以下の表だ。左右打席に関係ない力量を図るために、右打者と左打者の被打率の差を算出した。単純に考えると左右別の被打率の差が少ない投手なら、自分のパフォーマンスを発揮するのに相手打者の打席にとらわれないということを示すが、それだけでは不十分だ。たとえばどちらも3割打たれている投手がいたとして、こちらは被打率差が0ということになるが、3割を打たれている以上、決して優秀な投手成績とはいえない。そういった事態をなくすため、今シーズンの通算被打率が2割を下回った投手を対象とする。

 今回は5投手が対象となる。表の太字で示した数字がこの中で最優秀だった成績を示す。WHIPとLOB%でも優秀な成績を収めたマーティンが3項目でトップに立っていることがわかる。右投手のマーティンが左打者をうまく抑えられたことが、この結果の要因ということだろうか。左右別は被打率唯一の0.03台を記録した。

 方や、多くの項目で上位成績を収めてきた桑原や岩崎をはじめとした60試合クインテットやマシソン、岩嵜らの名前がここにはない。岩崎と岩嵜に関しては被打率差平均を上回る結果に終わり、高橋は前述したように左のワンポイント起用が多いにも関わらず左打者の被打率の方が高く、桑原とマシソンは左右どちらの打者からも被打率は2割を超えた。

 

表7 中継ぎ投手被打率差 5傑

選手

被打率差

右打者

左打者

被打率差

マーティン

.165

.186

.147

0.039

鍵谷 陽平

.170

.147

.200

0.053

中﨑 翔太

.173

.149

.196

0.047

髙橋 聡文

.182

.154

.202

0.048

ジャクソン

.198

.170

.229

0.059

 

◆非出塁、非生還、制球力など総合的に優れたマーティンがベストナイン

 ここまで、WHIP、tRA、K/BBに加え、中継ぎ投手として必要なLOB%、HR/9、平均投球回数、被打率をみてきた。

 今年のセットアッパーの話題として注目を集めたのは、阪神の誕生した60試合クインテットだろう。場面によってはイニングまたぎも可能な万能型の岩崎、防御率よりも優秀なtRAを記録したマテオ、対左打者に多少の物足りなさを感じるものの、WHIPと被本塁打率で優れた成績を収めた高橋、そして、セットアッパーとして総合的な能力に優れた桑原という、クローザーのドリスを除く4投手がそれぞれの持ち味を発揮したシーズンだった。制球力に改善の余地がみられるものの、その球威で打者を圧倒した中﨑は、終盤にはクローザーを務めるなど広島の連覇に大きく貢献した。

 しかし、これらの投手を差し置いて私がベストナインのセットアッパー部門に選出したいのは、ファイターズのマーティンだ。怪我による途中離脱のため40試合の登板にとどまったものの、それでも29ホールドを挙げるなど、どの部門でも平均的に優秀な成績を収めた。投球回数が惜しくも1を下回ったが、それは(阪神には及ばないものの)ファイターズの中継ぎ投手の登板数が40試合を超えたのがマーティンを含め5投手いたことも考慮されるだろう。60試合クインテットの中継ぎ陣や中﨑に比べて被本塁打率が多少高いが、それでもランナーを出さない投球術で傷口を最小に抑えられている。

 順位も決まったシーズン終盤は、残りの試合数があるものの一足先に帰国し、来年の去就について明言を避けた。最大5選手の主力選手が放出危機にあるとの報道が出たチームにおいて、ファイターズはマーティンの残留にも注力しなければならいのは必至だ。

 

表8 マーティン、桑原、高橋、中﨑の今シーズンの成績

 

成績(順位)

マーティン

桑原 謙太朗

髙橋 聡文

中﨑 翔太

防御率

1.19(2)

1.51(4)

1.70(5)

1.40(3)

ホールド

29(9)

39(2)

20(25)

25(14)

登板数

40(44)

67(2)

61(11)

59(17)

WHIP

0.72(1)

0.94(5)

0.90(3)

0.92(4)

tRA

2.45(4)

2.31(3)

2.06(1)

3.37(18)

K/BB

5.64(3)

6.30(2)

3.64(13)

1.80(25)

LOB%

91.30(2)

86.80(4)

82.20(10)

87.60(3)

HR/9

0.48(9)

0.27(4)

0.19(2)

0.31(22)

平均投球回数

0.93(20)

0.97(14)

0.77(26)

0.97(14)

被打率

.165(1)

.221(12)

.182(4)

.173(3)

被打率差

0.039

0.033

0.048

0.047