ほーりーの野球日記

ほーりーの野球観察日記

自分の観方で野球を紹介します

ベストオーダーを組んでみた

 独自ベストナインと本家ベストナインの答え合わせをしていると、これまでの成果をここで終わらせてしまうことをなんだか無性に惜しく感じる。そもそも、今回の独自ベストナインは毎年受賞者の予想を楽しみにしているその延長線での試みであったのだが、受賞者の正誤を一喜一憂して確認していると、まだまだ遊び足りないという欲が出てきてしまう。なので、もはや蛇足ではあるが、今回選出した野手9選手で、ベストオーダーを組んでみたいと思う。

 

◆最も重要なのは1・2・4番

 参考にするのは、ベースボール専門メディア「Full-Count」に掲載されているコラム記事だ。数理モデルを用いた演繹的アプローチにより、打順のどこに高い重要性があるのかが示されている。そこで書かれている要点をまとめると、以下の通りになる。

○最も重要[1・2・4番]

○次に重要[3・5番]

○重要度はあまり高くない[6・7・8・9番]

 打席に入ったときの平均的な走者数・アウトカウントを考慮し、強打者を上位に置き打席を多く回すように打順を組むと、上記のような打順が理想的であるという。なお、最重要の1・2・4番では1・2番が出塁力のある選手、且つ2番は併殺を避けるために走力がある選手、4番が長打力のある選手で固める。意外だったのは3番で、こちらは2アウトで打席に入ることが多いため、そこに好打者を置いても得点を望みづらいという。

 

◆1番打者…出塁力と生還力

 上記をふまえ、打順を考える。まずは最重要の1、2、4番からだ。チームで強打者3選手をまずは選ぶのだが、9選手のうちOPSがトップの3選手、つまり柳田、秋山、丸をここではいずれかの打順に当てはめていきたい。

 1番候補となる選手の条件に①チームで少なくとも3番以内に入る強打者、②出塁率が高いということがあったが、この2つにさらに得点÷出塁率で表される生還率と出塁数を足した出塁得点力を加える。なお、出塁得点力は小野俊哉著『プロ野球最強のベストナイン』を参考にしたもので、小野はこれを「OPR」と命名している。しかし、単純にOPS+OPRの合計値で1番打者に最適な選手を選ぶと、出塁率を二度加算することになり、出塁率が高い選手が優位となるため、ここでは長打率出塁率+生還率で示したい。

 この3選手の中で1番打者としての最も理想的なのは、柳田だ。16.2という高い四球率もあり、3選手の中で最も高い出塁率.426を記録し、さらに生還率も.451と最高で、2つの条件を十二分に満たしている。また、出塁率は秋山と同率でも、109得点という好成績もあり、生還率の差で次点は丸となる。ここではまだどちらかを1番に固定するのではなく、柳田が◎、丸が〇という程度にのみ1番打者の可能性を示して、2番以降の適任選手を見ていくことにする。

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◆2番打者…出塁力と走塁能力

 引き続き、柳田、秋山、丸の3選手の中から、今度は2番打者の選定に移る。

 2番打者は1番打者と同様に長打率よりも出塁率重視、且つ足の速さに注目してみていく。なお、足の速さとは併殺を避けるための評価基準であるが、一塁到達タイムのオープンデータがなかったため、ここでは「ベストナイン外野手部門」で採用した総合的な走塁能力を示すBsRとSpd、そして盗塁成功率がより高い選手を「足の速い選手」とみなす。

 すると以下の通り、丸に最も2番打者としての適正がみられた。2013年には29盗塁で盗塁王のタイトルを獲得した丸が、今シーズン盗塁数は13個にとどまったが、盗塁失敗数はレギュラー定着後最小の3しかなかったこともあり、高い盗塁成功率を残すことができた。BsRでは柳田と秋山と大きく差をつけるなど、この3選手の中ではとりわけ走塁能力が高い選手といえるだろう。

 ほか、柳田と僅差ではあるが、秋山が次点につけている。ここでは丸が◎、秋山が〇ということで、2番打者の選定を一旦終えることにする。

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◆4番打者…長打力と得点創出力

 4番打者は1、2番よりも長打力を重視するため、長打率とISOに着目し、さらに、打者が創出した得点数を表すRCを加えたい。これにより、長打を打てる力と実際に打点を創出する力の観点から4番打者の適正を判断する。

 すると、長打率もあることながらISOも抜きんでている柳田が、1番打者に続いて4番打者でも最も適正があるという結果となった。1番打者で見た出塁率長打率生還率の総計と、4番打者で見た出塁率長打率、ISOの総計を、それぞれの次点である丸と秋山とどれくらの差があるかを見てみると、若干ではあるが4番として想定した時の方がその差が大きいことから、柳田を4番打者として据える方が打線としては機能するのではないかと思われた。

 しかし、得点創出能力のRCをみると、柳田よりも次点の秋山の方が高いことがわかる。この一点のみで秋山が柳田よりも優秀というわけではないが、少なくとも4番打者として両選手を据えたとき、秋山の方がより多くの打点を稼ぐ可能性が示唆されている。ここでは4番打者の選択肢を秋山にも残し、最後に柳田、秋山、丸の3選手を1、2、4番のどの打順に据えることがベストなのかを考えていく。

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◆1番・柳田、2番・丸、4番・秋山がベストオーダー

 いよいよ、柳田、秋山、丸の打順決めに入る。ここまでの適正を振り返ると、1番打者は柳田◎、丸〇、2番打者は丸◎、秋山〇、4番打者は柳田◎、秋山〇という評価だった。以下、そこから考えられる打順構成を3パターン並べる。

 いずれも魅力的な打順構成であることは間違いが、どれがベストな構成なのかということは、この3パターンにそれぞれ先ほど示した適正を当てはめたうえで検証していきたい。

パターン①は秋山がネックとなる。現実には、秋山が1番打者を務めても誰しも気持ちの上では納得のいく打順だとは思う。しかし、1番・秋山がベストかと言われれば、少なくとも丸を1番に据えたほうがベストな打順に近くなる。パターン②はこの3つの中では最も見栄えは良い。監督なら誰しも一度は試してみたくなる4番・柳田を実現させながら、1、2番も適任選手を据えることができている。だが、4番に秋山を据えたパターン③は、大穴かもしれないが、パターン②よりもベストな形を実現させている。長打力あり、得点創出能力ありの秋山は、柳田ほどではないにしろ、4番を打っても不思議ではない。もし秋山を4番に据えることができれば、1番・柳田の出塁力と生還力、2番・丸の走塁力が十二分に機能する。よって、ここではパターン③を採用とする。

 今回はベストナイン外野手が全てそれぞれのチームでセンターを守る選手から選ばれてしまった。ベストオーダーを決めるということはポジションも決めなければならない。先のベストナイン外野手部門を振り返ると、守備ランクは丸、秋山、柳田の順となる。ここでは最も守備力の高い丸をセンター、次に守備力の高い秋山をライト、そしてレフトに柳田を置くことにする。

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◆3番打者…本塁打率が高く、三振や併殺が少ない選手

 打線の核が決まったところで、この3選手を中心に周りを固めていく。

 3番打者の役割とは一体何だろう。それを考えるヒントは、先に紹介した理論の中で紹介されている。それによると、3番打者は得点の見込みが低い2アウトで回ってくることが多く、そこでヒットを打ってもそこから得点を積み重ねるのが難しいという。私はこのように解釈した。それならヒットを量産できる好打者よりも、一打で一点が約束された本塁打を打てる打者なら、得点を見込める可能性が少しでも増えるのではないだろうかと。

 また、1、2番と4番の間に立つ3番打者は、言い換えると、強打者と強打者の関節のようなものだ。人体の構造で考えてみると、関節が機能しなければ手足を満足に動かくことはできないし、上部と下部の連携を円滑に進めることが難しい。つまり、上位の強打者が作った得点機会をできる限り損なうことなく、さらに次の強打者に回すことが必要となる。

 これらの点から私が考える3番打者として適正のある選手とは、①本塁打率が高く、②三振や併殺が少ない選手ということになる。これらをふまえ、最適な3番打者を選定していく。

 残りの選手で本塁打率が高い選手は、35本塁打パ・リーグ本塁打王を獲得した13.66のデスパイネと、チームトップの30本塁打を記録した18.97のロペスだ。この2選手で三振率をみると、ロペスが13.2なのに対し、デスパイネは21.8とワーストだ。なお、9.0と最も三振率が低い宮崎は、本塁打率が32.00で6選手中4位と振るわなかった。さらに、併殺率をみると宮崎は全選手中最多の23併殺を記録したこともあり、約20打席に1度の併殺とワーストとなった。デスパイネも34.14と6選手中3位と悪くないのだが、ロペスは40.64と最も併殺が少なかった。

 以上のことから、本塁打率が高く、三振率と併殺率が少ないロペスが3番打者として最適な選手であろう。

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◆5番打者…長打力重視

 続いて5番打者の選定だ。こちらは長打率重視で、4番打者と類似した打撃傾向を持つ選手を選出したいと思う。4番打者はチームで少なくとも3番以内に好打者に入る選手という条件があり、出塁率を含めたOPSをその基準としたが、5番打者に関してはあくまでも長打力のみを基準とした選出方法を採用したため、出塁率を除外した。

 すると、長打力の高さが際立ったデスパイネが5番打者として最適なように思われる。デスパイネのISOは.251と、今回のベストナイン選出野手の中で2位、全体でみても4位と優秀だった。来日以来最多の35本塁打で初の本塁打王を獲得したキューバの至宝が、今回のベストナインでもクリンアップの一角を担う。

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◆6番打者以降は打力順、但し9番打者は出塁率の高い打者

 6番以降、打順は下位に回っていく。これ以降の打順は、残りの打者で打力が優れている順に並べていくが、9番打者に関しては一考の必要がある。

 初回は無条件で無死無走者の場面で打席に入る1番打者だが、二巡目以降はあらゆる場面で打順が回ってくる。今回のオーダー構成上、1番打者にはチームでもトップクラスの打力を持つ選手を据えているため、二巡目以降は1番打者にもポイントゲッターとして機能してもらうべく、その前を打つ9番打者には出塁率の高い打者を置きたいと考える(この考えは「投手を8番に置くか9番におくか」という議論に近いかもしれない)。そのため、今回の下位打線の決め方は、残りの選手の中から打力の最も高い選手を6番に置き、さらにその残った選手の中から出塁率の高い打者を9番に置き、残りの2選手で7、8番を埋めていくという方法にする。

 このような理論で6番打者を考えると、今シーズン、セ・リーグ首位打者を獲得し、残りの選手の中で最も高いOPSを残した宮崎据えるのが最も自然だろう。さらに、残った3選手の出塁率を見ると坂本が最も高く、この2選手で6、9番打者を固めたい。残りの7、8番は山田と中村で埋めることになるが、中村よりも打力に優れた山田を7番としたい。

 

◆ベストオーダーの完成

 開幕当初話題になった「2番・ペゲーロ」、3位DeNA下剋上を支えた「9番・倉本」、日本シリーズで大活躍をみせた「1番・柳田」など、打順は監督やチームごとに千差万別で、議論の余地が多分にある分野だ。来シーズンもスタメンや打順、それも枕詞に「奇策」や「恐怖」などがつけばなお面白い。

 以下に、今回選出したベストナインのオーダーをまとめておく。誰か、オリジナルチームを作れる野球ゲームかなにかで、このオーダーを使ったコンピューター操作のペナントレースを試して、その結果を教えてください。

 

1番 柳田悠岐  LF

2番 丸佳浩   CF

3番 ロペス   1B

4番 秋山翔吾  RF

5番 デスパイネ DH

6番 宮崎敏郎  3B

7番 山田哲人  2B

8番 中村悠平  C

9番 坂本勇人  SS

 

 

ベストナイン指名打者部門

  最後に指名打者を見て、ベストナインの全ポジションの選出を終える。ここでは、守備はもちろん、走塁も選出基準には含めず、打力のみでの評価とする。

 対象選手はデスパイネ、アマダー、中島の3選手だ。手始めに、3選手の今シーズンの成績を見ていく。今シーズン、パ・リーグ本塁打王打点王の二冠に輝いたデスパイネが頭一つとびぬけた成績を収めた。大本命はやはりデスパイネではあるが、さらに詳しく見ていきたい。

 

表1 デスパイネ、アマダー、中島の今シーズンの成績

 

打率

本塁打

打点

出塁率

デスパイネ

0.262

35

103

0.347

アマダー

0.237

23

65

0.304

中島 宏之

0.285

9

49

0.360

 

◆高い本塁打率を記録したデスパイネベストナイン

 打力のみの評価ということで、まずは一塁手でも採用した評価項目を同様にみていく。するとやはり、デスパイネがここでも全項目でトップだ。この時点で、指名打者部門をデスパイネの選出としたい。

 リーグ2位の長打率もあり、ISOが全選手中4位と優秀だ。本塁打率もリーグ1位の13.66と高いのだが、その反動だろうか、三振率も21.8%と高く、三振か長打かの打撃傾向が強かった。

 また、勝利期待値の増減を示す「WPA」は柳田に次ぐ2位の4.08と、柳田とデスパイネの活躍がソフトバンクの優勝に大きく影響していることがわかる。

 

表2 指名打者3選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

ISO

デスパイネ

0.859

80.9

0.374

0.251

アマダー

0.729

49.5

0.323

0.187

中島 宏之

0.752

58.1

0.337

0.107

 

◆11月17日に発表された本家ベストナインとの答え合わせ

 ここまで、ポジションごとにベストナインを選定してきた。先日発表された本家ベストナインと比較してみる、以下のようになる。

 

 

本家

独自

セ・リーグ

パ・リーグ

投手

菅野 智之

菊池 雄星

マイコラス

マーティン

サファテ

捕手

會澤 翼

甲斐 拓也

中村 悠平

一塁手

ロペス

銀次

ロペス

二塁手

菊池 涼介

浅村 栄斗

山田 哲人

三塁手

宮﨑 敏郎

ウィーラー

宮﨑 敏郎

遊撃手

田中 広輔

今宮 健太

坂本 勇人

外野手

丸 佳浩

柳田 悠岐

丸 佳浩

鈴木 誠也

秋山 翔吾

秋山 翔吾

筒香 嘉智

西川 遥輝

柳田 悠岐

指名打者

デスパイネ

デスパイネ

 

 投手は3選手を選出したが、投手としての総合力という点でマイコラスを選出した。捕手は本家では曾澤、甲斐とリーグ優勝チームから選出されたが、私個人としては一年間の積み重ねということで、規定打席に到達した選手から選出するという方法をとったため、ここでは中村を選出した。二塁手に山田が選出されなかったのは、やはりシーズンを通しての不調が響いたように思われる。来シーズンは昨シーズンまでのような活躍を見せることができれば、再びベストナインに返り咲くことができるはずだ。遊撃手は盗塁王、最高出塁率を獲得し、全試合で1番を務めた田中が選ばれているが、記者投票という性質を鑑みればこの選出は頷ける。ただ、田中はリーグ最多盗塁数を記録している一方で、こちらも最多の盗塁死を記録している。来シーズンは盗塁成功率の上昇に期待したい。

 

 

 

ベストナイン外野手部門

  レフト、センター、ライト、3つのポジションがある外野手の対象選手は25選手だ。無論、ほかのどのポジションよりも多い。一言で外野手といってもそれぞれの持ち味や武器は違うため、これまでのポジション以上に、多角的な視点による選出を心掛けなければならない。

 ここでは、打撃力、守備力、走塁力の3つの視点からベストナインを選びたいと思う。打撃力はこれまで通りの3項目、守備力は外野手の送球による貢献を示す「ARM」を追加する。初めて触れる走塁力については、盗塁によって「平均的な走者と比較してどれだけチームに貢献できたかを示す「wSB」と、盗塁を除く走塁によって平均的な走者と比較して何得点相当チームに貢献したかを示す「UBR」の合計で表し、総合的な走塁能力を示す「BsR」、盗塁成功率、盗塁企図の頻度、三塁打の多さ、得点の多さをポイントに変換して平均算出される足の速さを示す「Spd」の2項目を採用する。打力、守備、走塁のそれぞれの能力の偏差値から、もっとも優れた3選手を選出したいと思う。

 

◆打力ナンバーワン・柳田の課題はミート力

 打力ナンバーワン外野手は、ソフトバンクの柳田だ。四球率はトップ、それもあり出塁率は12球団4割越えた。長打率もトップで、したがってOPSも全球団でトップだ。一時は三冠王を射程圏内にとらえる活躍を見せていただけに、後半戦の故障による離脱が悔やまれる。次の表で、今シーズンの外野手の打撃成績上位3選手を示す。打力偏差値71.47は外野手だけでなく、全選手の中でトップだ。

 

表1 外野手の打撃上位3選手

 

OPS

WRC

wOBA

打力偏差値平均

柳田 悠岐

1.016

109.0

0.435

71.47

秋山 翔吾

.933

116.1

0.409

67.02

丸 佳浩

.903

106.7

0.400

63.38

 

 ただ、課題があるとすればそれは三振数にあるかもしれない。三振数は123で全体ワースト7位、三振率は22.3%でワースト5位、長打も打てて四球を選べる能力を備えている一方で、この結果は改善の余地が十分にあるだろう。ストライクゾーンに来た投球に対するスイング率は78.5%と積極的に打ちにはいくのだが、ストライクのコンタクト率はワースト4位の79.8%、空振り率はワースト6位の13.3%と低い。ただ、それもフルスイングが持ち味の副産物かもしれない。

 

◆新たな守備職人・桑原、意外性のある大田

 守備力に長けた外野手を選定した結果、新たな守備職人や意外性のある選手が登場した。1位は、今シーズンゴールデングラブ賞を受賞したDeNAの桑原だ。捕殺数では広島・鈴木、ソフトバンク・上林の10がトップで、桑原は10位タイの4と多くはなかったが、走者の進塁を送球により抑制した貢献度を示すARMでは外野手の中で1位の6.1、守備貢献を示すUZRも17.7で1位だった。守備寄与率も3位タイ、打球処理貢献も4位と、守備全般で高い成績を残した。

 意外だったのは、2位の大田泰示だ。ARMは桑原に次ぐ2位、UZRは桑原、丸に次ぐ3位となっている。高校通算65本塁打を放ちドラフト1位で巨人に入団し、今シーズンから日ハムに移籍した大田だが、初の規定打席到達と15本塁打でブレイクした一方で、守備でも存在感をアピールした。

 ひとつ興味深かったのが、ゴールデングラブ賞した柳田の守備力が48.75と意外と低かったことだ。守備率は高いものの、打球処理をはじめとした全体的な守備貢献度がマイナスを記録するなど、平均を下回る成績に終わった。柳田は、レギュラーに定着した2014年から今シーズンまで毎年RngRとUZRがマイナスを記録しており、改善が一向に見られない。これまで超人的な打力を見せてきた柳田だが、さらなる飛躍をはかるには守備力の改善が急務だ。

 

表2 外野手の守備上位3選手

 

守備率

ARM

RngR

ErrR

RF

UZR

守備力偏差値平均

桑原

0.990

6.1

11.4

0.2

2.09

17.7

62.07

大田

0.995

5.8

5.9

0.3

2.05

12.1

60.52

0.993

2.4

14.5

0.2

1.93

17.1

59.78

 

◆ナンバーワンの俊足・西川、ナンバーワンの走塁名人・外崎

 打力、守備ときたら次は走力だ。今シーズン、39盗塁で2度目の盗塁王を獲得した西川は、10盗塁以上を記録した選手を対象として選手での盗塁成功率でも1位となる.886の好記録だった。それもあり、盗塁成功率や三塁打、得点割合などで示されるスピードスコアという足の速さを示す指標では1位の7.0を記録した。外野手の中ではナンバーワンの俊足といっても過言ではないだろう。

 ただ、総合的な走塁能力を示すBsRでは丸、梶谷、外崎が西川よりも上位に立った。中でも2位の外崎は、BsRだけでなく、盗塁数、盗塁成功率、スピードスコアでも2位と、万能ぶりを発揮した。西川が外野手ナンバーワンの俊足の持ち主だとすると、総合的にみると外崎は外野手ナンバーワンの走塁名人ということになる。

 

表3 外野手の走塁上位3選手

 

盗塁

盗塁成功率

BsR

Spd

走塁偏差値平均

外崎 修汰

23

0.885

7.4

6.6

68.42

西川 遥輝

39

0.886

6.4

7.0

68.24

梶谷 隆幸

21

0.875

7.1

21

65.34

 

◆丸、秋山、柳田がベストナインで、中でも丸が走攻守すべてにおいてトップクラス

 ここまで見てきた打力、守備力、走塁の全11項目の偏差値を平均したとき、その数値が高い選手の上位3選手が、外野手部門のベストナインだ。結果は、丸、秋山、柳田の3選手だ。図らずとも、打力上位3選手と同じ顔並びになってしまったが、丸は守備で3位、走塁ではトップ3は逃したが高水準の成績を残した。これまで打撃、守備、走塁ごとにそれぞれ着目すべき項目を偏差値で示してきたが、丸はその合計値が外野手で最高値を示した。2015年に216安打で日本記録を樹立した秋山は、首位打者最多安打を獲得するとともに、打点と本塁打でも自己ベストを大きく更新した。それもあり、長打率も4位の好記録を残した。打順では1番を打つことが多かったにも関わらず、得点創出を示すRCが123.31とトップの数値を収めた。柳田は、先にも述べたが、守備力に課題が見られたものの、それを凌ぐ驚異的な打力が決めてとなり、トップ3入りを果たした。打席あたりの得点貢献度を示すwOBAが.435と、ほかの打者よりも頭一つ抜け出した数値を示しており、途中けがで離脱する時期もあったが、MVP級の活躍を見せた。

 

表4 丸、秋山、柳田の能力偏差値

 

打力偏差値平均

守備偏差値平均

走塁偏差値平均

丸 佳浩

63.38

59.78

63.93

秋山 翔吾

67.02

53.29

58.82

柳田 悠岐

71.47

48.75

55.07

 

 

ベストナイン遊撃手部門

  今シーズンの遊撃手といえば、西武・源田、中日・京田という新入団選手の活躍が目立った。京田は、リーグ新人最多猛打賞と球団新人最多安打を更新、また源田は、球団新人記録盗塁と球団新人最多安打の更新と56年ぶりとなる新人選手でのフルイニング出場を達成した。どちらも稲葉監督率いる侍ジャパンのメンバーに選出されており、次世代の日本代表の中心を担うであろう2選手である。

 この2人の新人選手のほか、もはや日本球界の顔に成長した坂本、2年連続全試合に出場し広島のセ・リーグ連覇に貢献した田中、5年連続ゴールデングラブ賞受賞が発表された今宮、9番打者ながらリーグ2位の得点圏打率を記録するなど勝負強い打撃が光った倉本、パ・リーグ記録となる初級先頭打者弾を含めた6本の先頭打者本塁打を記録した強打の茂木、この7選手が対象となる。

 なお、ここでは二塁手と同様、守備位置補正に従って守備力重視の選考をする。

 

◆守備職人・坂本、鉄壁・今宮、貪欲・源田

 まずは守備力をみていくが、その前に、先日発表されたゴールデングラブ賞を受賞した遊撃手をおさらいしておく。セ・リーグは坂本、パ・リーグは今宮だが、これには気持ちの上では納得だ。なぜなら、どちらもそれぞれのリーグで守備率が最も優れた選手だからだ。この2選手が素晴らしい選手であることは間違いないが、私は記者ではないため、なるべく主観による判断を排除するよう心掛ける。

 二塁手のときと同様、6つの項目で守備力を評価する。それをまとめたのが以下の表だ。非常に興味深いことに、坂本が全ての項目で2番手につけている。1番ではないが、弱点がない。1番が超一流だとしたら、坂本は悪くても一流という、ものすごい領域に位置する守備職人であることがわかる。

 ただ、今宮も負けてはいない。守備率をはじめ、失策抑止力もトップと、「鉄壁さ」でいえばナンバーワンであろう。これが、今シーズンプロ野球新記録となるチーム守備率9割9分3厘を成し遂げたチームの内野の要の力だ。

 この2選手を抑え、6つの項目のうち最多となる4項目でのトップを記録したのが、西武の源田だ。併殺、打球処理、アウトなど、取れるアウトはとことんアウトにする、まさにアウトに対する尋常ならぬ貪欲さが感じられるプレーヤーだ。UZRが新人ながら12球団トップであることからも、この源田の存在こそが今後のプロ野球の守備力の発展のキーパーソンとなるかもしれない。

 

表1 遊撃手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

補正UZR

坂本 勇人

0.987

2.4

5.7

2.5

5.03

15.6

田中 広輔

0.977

0.4

-1.8

0.6

4.83

4.1

源田 壮亮

0.971

3.4

20.4

-2.3

5.11

26.5

今宮 健太

0.988

-0.9

1.2

4.9

4.12

10.2

京田 陽太

0.980

0.7

5.7

0.3

4.70

11.8

倉本 寿彦

0.979

0.6

-18

0.4

4.10

-12

茂木 栄五郎

0.977

-0.3

-2.4

-1.4

4.49

0.9

 

◆強打の遊撃手、田中と茂木はどちらも守備に課題

 続いてみていくのは打撃力で、こちらも二塁手と同様にOPS、wRC、wOBAを評価基準に採用した。打力では、広島の田中と楽天の茂木が目立った。チームでは1番を打つ両選手だが、田中は柳田と並ぶ全体3位タイの89四球をはじめ出塁率が同僚の丸を抑えリーグトップ、打率も3割まであと一歩の.290だった。茂木は前述したように両リーグトップの6本の先頭打者本塁打を放ったほか、遊撃手7選手の中で打率と本塁打がそれぞれトップの成績を収めた。さらにOPSが全体8位の.867と優秀で、遊撃手の中では突出した打力を発揮したシーズンだった。だた、田中はRFで平均以上の成績を残したが、それ以外の項目では両選手ともに平均以下に終わった。さらにいうと、茂木は肘の故障の影響もあってか、マイナス数値を記録する項目もあり、守備貢献度に課題が見られた。まずは来シーズンに向けて肘の状態を万全にしてもらいたい。

 

表2 遊撃手7選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

坂本 勇人

0.802

86.7

0.372

田中 広輔

0.805

95.9

0.372

源田 壮亮

0.669

61.1

0.307

今宮 健太

0.739

73.2

0.336

京田 陽太

0.652

50.4

0.301

倉本 寿彦

0.624

37.6

0.283

茂木 栄五郎

0.867

71.0

0.386

 

 

 7選手の中で打率が最下位だったのは、DeNAの倉本だ。ただ、この倉本が7選手の中で最優秀だったのは、勝負強さだ。得点圏打率が全体5位の.342と優秀で、重要場面(たとえば「8回表、2対3で負けている2死二、三塁の場面はどれだけ重要か?」といったような)での勝負強さを示す「Clutch」をみると全体2位と、こちらも優秀だった。ただ、倉本も茂木や田中と同様に守備に課題がある。日本シリーズでは第2戦に痛恨の失策を喫したが、第3戦で満塁の場面で気迫のタイムリー内野安打を放つなど、良くも悪くも目立った倉本だったが、来シーズンは勝負強さを残しつつ、守備での活躍も期待したい。

 

◆攻守にわたって活躍を見せた坂本がベストナイン

 ここから、ベストナインの選出にうつる。守備力重視ということでみていくが、やはり二塁手と同様に標準偏差を用いて数値化していく手法をとる。それをまとめたのが以下の表だ。

 ベストナインは坂本だ。安定した高水準の守備力、打力でも3番手につけるなど、守備も打撃も一級品だ。守備力重視の選考とはいえ、茂木や田中に一定水準以上の守備力があれば、ベストナインもあり得たかもしれない。逆に、源田や今宮に今以上の打力が備われば、ショート坂本一択時代に待ったをかけるときがくるかもしれない。今宮は今シーズン、打率、本塁打、打点で自己ベストを更新し、ここからのさらなる飛躍が期待される(よろしければこちらもご覧ください)。

 

表3 7選手の各成績の偏差値

 

守備能力

打撃能力

守備率

DPR

RngR

ErrR

補正UZR

RF

OPS

WRC

wOBA

坂本

62.95

60.78

53.89

58.04

56.62

60.67

57.68

60.01

59.35

田中

44.82

46.41

46.87

49.49

46.39

55.49

58.03

64.93

59.35

源田

33.94

67.96

67.65

36.43

66.32

62.77

42.00

46.32

42.12

今宮

64.77

37.07

49.68

68.84

51.82

36.61

50.25

52.79

49.81

京田

50.00

48.56

53.89

48.14

53.24

52.02

40.00

40.59

40.53

倉本

48.45

47.84

31.71

48.59

32.07

35.96

36.70

33.74

35.76

茂木

44.82

41.38

46.31

40.48

43.54

46.47

65.34

51.61

63.06

 

表4 守備力を重視した場合の評価値

 

守備能力

打撃能力

守備力重視値

坂本 勇人

58.82

59.01

117.80

田中 広輔

48.24

60.77

106.51

源田 壮亮

55.85

43.48

101.80

今宮 健太

51.46

50.95

102.52

京田 陽太

50.98

40.37

93.47

倉本 寿彦

40.77

35.40

77.24

茂木 栄五郎

43.83

60.01

100.61

 

 11月16日から19日にかけての「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」に向けて、代表合宿が9日から始まり、12日には日ハムとの練習試合が開催された。その試合で二遊間を組んだのは京田と源田の新人コンビだ。将来的にこの2人が国際試合でもこのコンビを結成するのか、あるいは坂本がトップに君臨し続けるのか。どちらにせよ、日本の遊撃手の未来は明るいはずだ。

 

ベストナイン三塁手部門

 今シーズンの三塁手といえば、セ・リーグ首位打者に輝き日本シリーズ進出に貢献したDeNAの宮崎、初の規定打席到達で打率3割を記録した安部、4年ぶりに日本球界に復帰していきなりチーム三冠王となる活躍を見せたマギー、史上初となる外国人選手による20本塁打トリオの一角を担ったウィーラーと豊富な話題を提供してくれた選手が揃う。それ以外にも昨シーズンのパ・リーグ本塁打王レアード、本塁打王通算6回の中村、3大会連続日本代表に選出されている松田など、錚々たる顔ぶれとなっている。果たしてこの中からどの選手が今シーズンのベストナインにふさわしい活躍を見せたのだろうか。

 

安打製造機・宮崎

 まず私が注目したのは、今回のベストナインの選出候補の中で初めて登場するタイトルホルダーの宮崎だ。両リーグトップとなる打率で堂々の首位打者を獲得した宮崎は、本家ベストナインにも恐らく選出されるのではないだろうか。

 今シーズンの宮崎のストロングポイントは、全選手中最小の47だった三振数から見て取れる。1個の三振をするまでに立った打席数を表す「PA/K」という指標がある。この数値が高ければ高いほど、三振しにくい打者ということになるが、次の表で、今シーズンの「PA/K」で上位に入った選手をまとめた。ご覧の通り、宮崎は今シーズ最も三振しなかった打者であるということがわかる。

 

表1 PA/K上位5選手

順位

選手

PA/K

1位

宮﨑 敏郎

11.13

2位

中村 晃

10.53

3位

角中 勝也

10.27

4位

鳥谷 敬

9.19

5位

島内 宏明

8.61

 

 さらに「宮崎 三振」でネットを叩くと、興味深い記事が目に留まった。今シーズンの宮崎の活躍を過去の打者のどの類型に当てはまるかを検証したもので、それによると「内川タイプの巧打者」であると結論付けられている。以下、記事の内容を転載する。

内川タイプ 宮崎の今季47三振はセ・リーグ規定打席に到達した28選手中最少。1打席当たりの平均投球数が3.67とやや早打ちの傾向があり、四球も38と少ない。近年の同タイプには2度首位打者を獲得した内川がいる。2008年が49三振、31四球、平均投球数3.38。11年が48三振、25四球、平均投球数3.66と類似点が多い。

俊足ではない巧打者 155安打中、内野安打はわずか9本。盗塁がなく、併殺打がリーグ最多の23個と足は速くない。リーグ最多の併殺打を記録しながら首位打者を獲得したのは2リーグ制後6人目(8度目)。65年の南海・野村克也、66、71年の巨人・長嶋茂雄、81年のロッテ・落合博満らバットコントロールにたけた名選手が並ぶ。盗塁ゼロで首位打者になったのは01年のロッテ・福浦和也、12年の巨人・阿部慎之助に続く3人目。

サンケイスポーツ2017年10月11日)

 

三振が少なく、早打ちで四球も少ない。内野安打も盗塁も少ないが併殺打は多い。まさに、巧みなバットコントロールでヒットを稼ぐ宮崎は、まさに「安打製造機」だ。

 

 ヒットには、いい当たりを放っても正面のライナーで終わることもあれば、悪い当たりでも野手の間を抜ければ安打になるなど、多かれ少なかれ「運」の要素が付きまとう。この運の要素を取り入れながら、兎にも角にも打球がヒットになった確率を示す「BABIP」というものがある。本塁打とファウルを除く打球が安打となった割合を表す指標で、インプレー打率などと表現されることもある。インプレー打率と打率の差が少なければ少ないほど運に左右されない素の打率に近いものであるとされているが、以下の表で、今シーズンの打率上位5選手とそのBABIPの差をまとめてみた。結果は、.011で宮崎が最小、つまり、宮崎がもっともツイてなかった打者ということだ。それにも関わらず首位打者を獲得したということが、宮崎が安打製造機であることの証左ではないだろうか。

 

表2 打率上位5選手のBABIP

選手

打率

BABIP

BABIP-打率

宮崎 敏郎

.323

.334

.011

秋山 翔吾

.322

.348

.026

マギー

.315

.366

.051

大島 洋平

.313

.356

.043

柳田 悠岐

.310

.359

.049

 

首位打者・宮崎のもうひとつの武器は堅実な守備

 打撃で注目される宮崎という選手だが、もうひとつの注目点がある。それは、現役三塁手の中でトップクラスに守備力が高いという点だ。次の表は三塁手の今シーズンの守備成績を表したものだ。それによると、6部門のうち4部門でトップの成績であることがわかる。宮崎の堅実な守備もあり、14年はワースト2位、15年はワースト1位だったチーム三塁手守備成績が、宮崎の出場機会が増え始めた16年(宮崎は主に二塁手だったが、三塁手として208イニングに出場)、そして17年と連続で1位となっている。

 今シーズン、宮崎にとってはまさに攻守に渡って飛躍した一年となった。

 

表3 三塁手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

宮崎 敏郎

0.970

1.9

5.9

3.6

11.5

2.30

安部 友裕

0.964

-0.5

10.0

0.2

9.7

2.55

マギー

0.967

-1.6

-6.7

1.6

-6.7

2.43

鳥谷 敬

0.968

-1.0

-13.1

0.8

-13.4

2.05

小谷野 栄一

0.942

-1.8

-13.4

-1.8

-17.1

3.14

ウィーラー

0.936

1.4

-5.1

-4.5

-8.1

2.49

松田 宣浩

0.967

0.0

4.4

0.8

5.2

2.08

レアード

0.942

-1.5

1.1

-2.6

-3.1

2.21

中村 剛也

0.957

-0.1

-0.3

0.9

0.6

2.40

 

◆打撃貢献と長打力に優れたマギー

 首位打者・宮崎よりも貢献度の面で高い数値をみせたのは、マギーだ。4年ぶりの日本球界復帰となった今シーズンは、セ・リーグ記録となる48二塁打を放つなど、チーム三冠王となる活躍を見せた。また、守備でも三塁手だけでなく二塁手もこなし、打順でも2番を打つ時期があったなど、重量打線の起爆剤となった。

 

表4 三塁手の打撃成績

 

OPS

WRC

wOBA

宮崎 敏郎

.856

77.3

0.380

安部 友裕

.754

54.1

0.344

マギー

.897

94.2

0.396

鳥谷 敬

.767

74.5

0.359

小谷野 栄一

.669

45.4

0.301

ウィーラー

.835

89.0

0.373

松田 宣浩

.777

72.5

0.346

レアード

.767

68.5

0.339

中村 剛也

.765

59.7

0.342

 

 長打率は全選手中6位の.514と優秀なのだが、注目すべきは上位10選手のうちマギーを除く9選手が20本塁打以上を放っているということだろう。さらに二塁打本塁打の総数が66で2位と、一発もあれば外野を抜ける長打もあると、まさに今シーズンでトップクラスの中距離打者として活躍した。

 

表5 二塁打+本塁打総数上位5選手

順位

選手

HR

2B

HR+2B

1位

ロペス

30

42

72

2位

マギー

18

48

66

3位

秋山 翔吾

25

38

63

4位

柳田 悠岐

31

30

61

5位

筒香 嘉智

28

31

59

 

◆チーム事情の差が打率の差?

 では、本塁打、打点の2部門で宮崎を上回る力を発揮したマギーが、どうして宮崎に打率では及ばなかったのだろうか。それは、先ほどの宮崎の三振数の少なさのほか、チーム事情も影響しているかもしれない。

 宮崎は今シーズン、出場試合数のほとんどで5番に座った。一方でマギーは、開幕当初は5番を多く打ったが、後半戦は2番を打った。それ以外にも、4番で19試合、3番で9試合に出場するなど、宮崎に比べて打席の入れ替わりが多かった。以下、打順別の打率をまとめた。

 

表6 宮崎とマギーの打順別成績

 

2番

3番

4番

5番

打数

打率

打数

打率

打数

打率

打数

打率

宮崎

-

-

8

.250

4

.250

465

.327

マギー

233

.339

33

.152

72

.264

185

.335

 

 2番と5番で出場試合数が多かったマギーは、それぞれの打順でもその力を発揮できたが、合計100打席以上に立った3、4番では伸び悩んだ。一方で宮崎は5番以外では12打席を経験したのみだった。打順を固定できたか、あるいはできなかったという差が、マギーと宮崎のパフォーマンスに影響を与えているかもしれないし、さらには、日本シリーズに進出できたチームとCSが始まって以来初となるBクラスに沈んだチームの結果にも表れているかもしれない。

 

ベストナインは攻守に渡り優れた成績を収めた宮崎

 三塁手ベストナインは、DeNAの宮崎を選出したい。貢献度の高さや長打力ではマギーが上手かもしれないが、ここまで見てきたように、打者として優れたのは、巧みなバットコントロールを見せた宮崎だ。また、三塁手としての堅実な守備もベストナインに相応しい。

 ただ、三塁手は対象選手が多いなど、競争が激しいポジションであった。宮崎だけでなく、残留が濃厚だという報道が出ているマギーや、冒頭で紹介した選手たちも、来シーズンは対象選手に名を連ねることだろう。また、安部のような新顔として名を連ねる選手も出てくるかもしれない。

 過去3大会連続で日本のホットスポットを松田が守ってきたが、その牙城を崩す選手が現れることを大いに期待したい。

 

 

ベストナイン二塁手部門

  二塁手の選出にあたっては、まずは守備力をみていきたい。内野の要として遊撃手とともに一定水準の守備力がまず問われるこのポジションにおいては、「打てて守れる」というよりは、「守れて打てる」のほうを重視した選出をしていきたいと考える。具体的には、各選手の能力数値の評価比率と「守備:打力=6:4」とし、守備力に重きを置いた選出を試みる。

 今回の対象選手は浅村、上本、菊池、鈴木大地、山田の5選手だ。以下、まずは守備力からみていくことにする。

 

◆現役ナンバーワン二塁手はやっぱり菊池!だけど…

 守備力の選定については、まずは基本的な失策回避能力を示す守備率と、内野手の併殺完成による貢献を表す「DPR」、打球処理による貢献を表す「RngR」、失策抑止による貢献を表す「ErrR」、1試合でどれだけアウトに寄与したかどうかという守備寄与率を示す「RF」、そして守備全般での貢献を表す「UZR」の6項目でみていくことにする。

 二塁手の守備力と想像すると、やはり広島の菊池に注目が集まる。実際、NPBにおけるシーズン捕殺数ランキングでは1位から3位を独占しており、日米野球やWBCなどの国際試合でもその守備に注目が集まるなど、国内外で高く評価されている。

 6項目中4項目でトップの守備成績を記録した菊池の守備力はやはり評価しなくてはならない。全体的な守備貢献度としてUZRを見ると、他の二塁手よりも頭一つ抜け出した守備成績だということがわかる。

 

表1 二塁手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

浅村 栄斗

.982

3.4

-0.7

-0.9

5.04

1.8

上本 博紀

.990

-1.0

-3.1

0.8

5.34

-3.2

菊池 涼介

.993

4.0

-3.2

2.4

5.20

3.2

鈴木 大地

.993

-4.5

-3.1

1.1

5.48

-6.6

山田 哲人

.988

-1.1

-0.4

-0.2

5.30

-1.6

 

 今シーズンの菊池の守備は相変わらず現役ナンバーワンといっても過言ではない成績を残しているが、本人としては不満に思う成績かもしれない。下に示したのはここ数年の菊池の守備能力を一覧で表したものだ。こちらを見ると、これまでのベストパフォーマンスを発揮しているとは言い難いということがみえてくる。

 

表2 菊池涼介の守備成績の推移

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

2014

.987

-0.1

12.3

0.9

6.34

13.2

2015

.988

1.5

9.0

-0.7

5.69

9.7

2016

.995

5.7

5.8

5.7

6.06

17.3

2017

.993

4.0

-3.2

2.4

5.20

3.2

 

 ここまでの守備貢献度が高すぎるため、今シーズンの守備に物足りなさを感じるというのは、贅沢な指摘だということはもちろん承知の上だ。特に今シーズンは開幕前にWBCにも参加し、疲れが出てきていることも考慮しなければならない。来シーズンはもう一度、破天荒でエキサイティングなプレーで楽しませてもらいたい。とはいえ、もう一度言うが、菊池の守備力は現役の二塁手でナンバーワンだ。

 

◆打撃能力では浅村がトップ

 一方で、打力の高い二塁手となると、西武の浅村がトップとなる。今シーズン、打率、本塁打と昨シーズンを下回ったが、99打点は110打点で打点王を受賞した2013年に次ぐ高記録だった。1番を打つ秋山の高い出塁能力とリーグ4位の犠打数を記録した源田の活躍もあり、こうした高い得点創出能力を記録できたのだと思われる。

 

表3 二塁手5選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

浅村 栄斗

.799

86.4

.359

上本 博紀

.769

59.4

.348

菊池 涼介

.716

68.1

.331

鈴木 大地

.748

71.2

.340

山田 哲人

.799

82.9

.362

 

 浅村と同じく3番セカンドを多く務めた山田は、今シーズン、かつてないスランプに苦しんだ。それでも、データ上で示す打撃能力では、トップの浅村に匹敵する結果を示した。苦心の山田を支えたのは14.6%と全体で4位となる高い四球率にあるかもしれない。次からは、浅村と山田の成績を比較してみていくことにする。

 

◆山田はまだまだ投手にとって警戒すべき打者

 浅村と山田は、データ上はほぼ互角だと言えるかもしれないが、実際の成績をみると浅村の方が上だ。成績だけ見ると浅村の方が警戒されるべき打者であるように思えるが、山田の91四球は全体でも2位で、四球率は浅村の倍以上の数値を記録している。こうした逆転現象は、やはり山田の持つ一発を放つ力が投手にプレッシャーを与えているからだということが、次の数値を見るとわかってくる。

 フライに占める本塁打の割合を示す「HR/FB」をみてみる。この数値が高ければ高いほど外野に上がったフライがそのままスタンドインする、投手の立場としては冷や汗もののデータなのだが、浅村が8.4なのに対し、山田が14.4と、山田の19本塁打よりも多くの本塁打を放ったロペス(30本、14.2)、秋山(25本、12.3)よりも多かった。スランプに苦しんだとはいえ、投手から見れば山田ははやり警戒すべき打者だということで、そのために四球が多くなっているように思われる。来シーズンは是非ともスランプを克服し、自身三度目となるトリプルスリーを目指してもらいたい。

 

表4 浅村と山田の打撃成績の比較

 

打率

本塁打

打点

四球率

HR/FB

浅村 栄斗

.291

19

99

7.0

8.4

山田 哲人

.247

24

78

14.6

14.4

 

◆大不振に苦しんだ山田が、実はベストナイン

 いよいよ、ベストナイン二塁手の選定に入っていく。選定基準について振り返っておくと、「守備:打力=6:4」を評価の際の能力評価比率とし、「守れて打てる」二塁手の選出を試みるとした。守備力トップの菊池が一歩リードしているように見えるが、強打の浅村が猛追しているのがここまでのベストナインレースの様相だ。打撃、守備の各能力が平均よりもどの程度優れているのかを標準偏差を用いて標準化することでそれを見ていく。

 

表5 5選手の各成績の偏差値

 

守備能力

打撃能力

守備率

DPR

RngR

ErrR

UZR

RF

OPS

WRC

wOBA

浅村

48.23

60.26

61.03

36.40

58.77

34.19

60.36

62.96

59.50

上本

50.20

46.33

42.12

51.41

44.53

54.63

50.88

35.63

50.00

菊池

50.93

62.16

41.33

65.54

62.76

45.09

34.14

44.43

35.31

鈴木

50.93

35.25

42.12

54.06

34.85

64.17

44.25

47.57

43.09

山田

49.71

46.01

63.40

42.58

49.09

51.91

60.36

59.41

62.09

 

表6 5選手の各成績の平均値

 

守備能力

打撃能力

合計

浅村 栄斗

49.81

60.94

110.75

上本 博紀

48.20

45.50

93.71

菊池 涼介

54.64

37.96

92.60

鈴木 大地

46.90

44.97

91.87

山田 哲人

50.45

60.62

111.07

 

 合計得点をみると、守備、打撃ともに2位につけた山田がトップに躍り出た。このまま山田が守備の菊池、打力の浅村を振り切って山田をベストナインに選出、といいたいところだが、ここでは守備力を重視した選考方法を採用しているため、もう一考が必要だ。

 打撃能力をⅹ、守備能力をyとしたとき、「守備:打力=6:4」の計算式は、1.2x+0.8yとなる。それぞれの平均能力をこの式に当てはめてみると、以下の通りになる。

 

 

表7 守備力を重視した場合の評価値

 

守備能力

打撃能力

守備力重視値

浅村 栄斗

59.78

48.75

108.53

上本 博紀

57.84

36.40

94.25

菊池 涼介

65.56

30.37

95.93

鈴木 大地

56.28

35.98

92.25

山田 哲人

60.54

48.50

109.04

 

 守備力重視の選出をした場合でも、山田をベストナインに選出すべきだという結論に至る。守備でも菊池に次いで優れた成績を収め、不振に苦しんだ打撃でも表面上の能力ほど見劣りせず、浅村に次ぐ2位だった。

 前人未踏、2年連続トリプルスリーを達成した昨シーズンが終わった後、山田は次なる目標をゴールデングラブ賞の受賞と定めた。ここで強力なライバルとなるのは間違いなく菊池だ。今シーズンもほかの二塁手と一線を画す守備力を見せつけたといっても、菊池にとってはこれがベストパフォーマンスではないことは先に述べた。だが、今シーズンの終わり、ヤクルトにヘッドコーチとして宮本慎也が戻ってきた。早くもその存在はグラウンドの選手に影響が広がり、それが守備面でさらなる高みを目指す山田にとっても成長の材料となることは間違いない。来シーズンは打撃でもトップに返り咲き、また、守備でも菊池を上回る活躍を期待したい。

 

 

ベストナイン一塁手部門

 バッテリーの選出を終え、ここからは内外野に話を移す。

 ここからの対象選手については、規定打席に到達した全55選手の中から、先に選出を終えた捕手部門の2選手(小林、中村)と、後ほど選出する指名打者部門の3選手(デスパイネ、アマダー、中島)を除く50選手とする。それぞれの出場試合数のうち最も多くついたポジションをその選手の正位置とみなし、それぞれの選出部門の対象選手とする。

 なお、一塁で27試合、中堅手で27試合、左翼手で26試合の阪神の中谷は、守備イニング数が288回で最多だった左翼手、つまり外野手として考える。また、銀次は先発出場では80試合で二塁のほうが多いが、次いで60試合で一塁が多く、さらに後半イニングでの守備変更などで一塁に回る場面が多いことから、守備イニング数は一塁が660 1/3、二塁が591 2/3と一塁の方が多く、ここでは一塁を本職とし、一塁手部門での対象選手とする。

 以下に、50選手の内訳をまとめる。

 

表1 内外野対象選手内訳

内野手

一塁手

二塁手

三塁手

遊撃手

外野手

25

50

※捕手2選手、指名打者3選手は除く

 

 また、二塁手と遊撃手の項目で後述するが、この2つのポジションの選手選考については守備力を重視した選考を試みる。選手の守備能力を示す指標のひとつに「UZR」があるが、こちらはあくまで同じ守備位置の選手の中での比較であるため、異なる守備位置の選手との比較に不向きという特徴がある。たとえば、一塁手と遊撃手でUZRが同じ10を記録した場合、どちらが守備能力に優れた選手だと思われるだろうか。数字の上では同じでも、おそらく多くの方は遊撃手のほうが優れていると直感的に感じるのではないだろうか。こうしたポジションごとの守備力の誤差を補正するために用いられるのが「守備位置補正」という概念だ。DELTA社による2015年に更新された守備位置補正によると、一塁手の守備位置補正は-11.6、遊撃手は5.0だ。同じ10のUZRでも、全体的にみると一塁手のUZRは-1.6で、遊撃手は15.0となる。このように、ポジションごとの誤差を補正し、限りなく同じ条件に近い状態で守備力を図ることができる。

 また、DELTA社により更新された守備位置補正によると、二塁手が7.3、遊撃手が5.0と、投手、捕手、指名打者を除くふたつのポジションだけがプラスとなり、ほかの野手に比べ守備力の重要性がより高いポジションだということがわかる。そのため、二塁手と遊撃手に関しては打力よりもやや守備力を重視した選考を試みる。そのほかのポジションについては、打力が基本的な選考基準となるが、万が一同等の能力や甲乙つけがたい結果が得られた場合、最後の判断指標として守備力のより高い選手を選出するという方法をとる。

 

表2 守備位置補正表

 

補正値

一塁手

-11.6

二塁手

7.3

三塁手

-5.1

遊撃手

5.0

左翼手

-8.4

中堅手

-0.5

右翼手

-4.1

 

◆自己ベストを更新する活躍を見せたロペスをベストナインに選出

 一塁手ベストナインはDeNAのロペスだ。シーズン後半は4番を務め、自己最多の104打点をあげ、自身初の打撃タイトルとなる打点王に輝いた。阪神、広島とのクライマックスシリーズでは、8試合で33打数11安打、1本塁打、7打点の活躍でチームを19年振りの日本シリーズに導き、ファーストステージ、ファイナルステージでMVPに輝いた。

 規定打席に到達したロペス、阿部、中田、銀次の4人の一塁手の打撃成績においても最も優れた成績を収めたがロペスは基本打撃成績だけでなく、OPS、wRC、wOBA、さらには長打率から単打を除外する形で示す長打率「ISO」でも一線を画す。特に、ISOにおいては全体6位と一塁手部門にとどまらない好成績を残し、また、wRCは34本塁打を記録した昨シーズンよりも高い90.4、wOBAも自己ベストに並ぶ.382と、名実ともに自己最高成績を記録するシーズンとなった。また、

 

表3 一塁手3選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

ISO

ロペス

.863

90.4

.382

.232

阿部 慎之助

.718

50.2

.319

.127

中田 翔

.676

52.4

.310

.150

銀次

.728

69.8

.337

.074

 

◆勝負強さの光る銀次、劇場型の阿部

 勝負強さにおいて、興味深い結果が得られた。

 ロペス、阿部、中田、銀次の得点圏打率はそれぞれ.322、.309、.195、.369と銀次がトップで、さらに、重要場面(たとえば「8回表、2対3で負けている2死二、三塁の場面はどれだけ重要か?」といったような)での勝負強さを示す「Clutch」をみると、-2.29、0.20、0.12、2.14とこちらも銀次がトップだった。ちなみに銀次は全選手の中でも最高で、ロペスはワースト2位だった。

 勝負強さでの活躍は阿部も健在だった。得点圏時の成績でも、ビハインド時と同点時、つまり通常の得点圏打率からダメ押し打を差し引いた得点圏打率を見ると.266、.333、.200、.324と阿部がトップで、勝利打点もそれぞれ10、13、10、6と阿部がトップで、なおかつ全選手中で5位タイの好成績だった。「サヨナラ慎ちゃん」と言わしめた全盛期ほどの活躍を期待するのは酷なことかもしれないが、はやり阿部の勝負強さには目を見張るものがある。

 

表4 一塁手3選手の勝負強さ

 

Clutch

得点圏打率

ビハインド&同点時

決勝打

ロペス

-2.29

.322

.266

10

阿部 慎之助

0.20

.309

.333

13

中田 翔

0.12

.195

.200

10

銀次

2.14

.369

.324