ほーりーの野球日記

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自分の観方で野球を紹介します

ベストナイン遊撃手部門

  今シーズンの遊撃手といえば、西武・源田、中日・京田という新入団選手の活躍が目立った。京田は、リーグ新人最多猛打賞と球団新人最多安打を更新、また源田は、球団新人記録盗塁と球団新人最多安打の更新と56年ぶりとなる新人選手でのフルイニング出場を達成した。どちらも稲葉監督率いる侍ジャパンのメンバーに選出されており、次世代の日本代表の中心を担うであろう2選手である。

 この2人の新人選手のほか、もはや日本球界の顔に成長した坂本、2年連続全試合に出場し広島のセ・リーグ連覇に貢献した田中、5年連続ゴールデングラブ賞受賞が発表された今宮、9番打者ながらリーグ2位の得点圏打率を記録するなど勝負強い打撃が光った倉本、パ・リーグ記録となる初級先頭打者弾を含めた6本の先頭打者本塁打を記録した強打の茂木、この7選手が対象となる。

 なお、ここでは二塁手と同様、守備位置補正に従って守備力重視の選考をする。

 

◆守備職人・坂本、鉄壁・今宮、貪欲・源田

 まずは守備力をみていくが、その前に、先日発表されたゴールデングラブ賞を受賞した遊撃手をおさらいしておく。セ・リーグは坂本、パ・リーグは今宮だが、これには気持ちの上では納得だ。なぜなら、どちらもそれぞれのリーグで守備率が最も優れた選手だからだ。この2選手が素晴らしい選手であることは間違いないが、私は記者ではないため、なるべく主観による判断を排除するよう心掛ける。

 二塁手のときと同様、6つの項目で守備力を評価する。それをまとめたのが以下の表だ。非常に興味深いことに、坂本が全ての項目で2番手につけている。1番ではないが、弱点がない。1番が超一流だとしたら、坂本は悪くても一流という、ものすごい領域に位置する守備職人であることがわかる。

 ただ、今宮も負けてはいない。守備率をはじめ、失策抑止力もトップと、「鉄壁さ」でいえばナンバーワンであろう。これが、今シーズンプロ野球新記録となるチーム守備率9割9分3厘を成し遂げたチームの内野の要の力だ。

 この2選手を抑え、6つの項目のうち最多となる4項目でのトップを記録したのが、西武の源田だ。併殺、打球処理、アウトなど、取れるアウトはとことんアウトにする、まさにアウトに対する尋常ならぬ貪欲さが感じられるプレーヤーだ。UZRが新人ながら12球団トップであることからも、この源田の存在こそが今後のプロ野球の守備力の発展のキーパーソンとなるかもしれない。

 

表1 遊撃手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

補正UZR

坂本 勇人

0.987

2.4

5.7

2.5

5.03

15.6

田中 広輔

0.977

0.4

-1.8

0.6

4.83

4.1

源田 壮亮

0.971

3.4

20.4

-2.3

5.11

26.5

今宮 健太

0.988

-0.9

1.2

4.9

4.12

10.2

京田 陽太

0.980

0.7

5.7

0.3

4.70

11.8

倉本 寿彦

0.979

0.6

-18

0.4

4.10

-12

茂木 栄五郎

0.977

-0.3

-2.4

-1.4

4.49

0.9

 

◆強打の遊撃手、田中と茂木はどちらも守備に課題

 続いてみていくのは打撃力で、こちらも二塁手と同様にOPS、wRC、wOBAを評価基準に採用した。打力では、広島の田中と楽天の茂木が目立った。チームでは1番を打つ両選手だが、田中は柳田と並ぶ全体3位タイの89四球をはじめ出塁率が同僚の丸を抑えリーグトップ、打率も3割まであと一歩の.290だった。茂木は前述したように両リーグトップの6本の先頭打者本塁打を放ったほか、遊撃手7選手の中で打率と本塁打がそれぞれトップの成績を収めた。さらにOPSが全体8位の.867と優秀で、遊撃手の中では突出した打力を発揮したシーズンだった。だた、田中はRFで平均以上の成績を残したが、それ以外の項目では両選手ともに平均以下に終わった。さらにいうと、茂木は肘の故障の影響もあってか、マイナス数値を記録する項目もあり、守備貢献度に課題が見られた。まずは来シーズンに向けて肘の状態を万全にしてもらいたい。

 

表2 遊撃手7選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

坂本 勇人

0.802

86.7

0.372

田中 広輔

0.805

95.9

0.372

源田 壮亮

0.669

61.1

0.307

今宮 健太

0.739

73.2

0.336

京田 陽太

0.652

50.4

0.301

倉本 寿彦

0.624

37.6

0.283

茂木 栄五郎

0.867

71.0

0.386

 

 

 7選手の中で打率が最下位だったのは、DeNAの倉本だ。ただ、この倉本が7選手の中で最優秀だったのは、勝負強さだ。得点圏打率が全体5位の.342と優秀で、重要場面(たとえば「8回表、2対3で負けている2死二、三塁の場面はどれだけ重要か?」といったような)での勝負強さを示す「Clutch」をみると全体2位と、こちらも優秀だった。ただ、倉本も茂木や田中と同様に守備に課題がある。日本シリーズでは第2戦に痛恨の失策を喫したが、第3戦で満塁の場面で気迫のタイムリー内野安打を放つなど、良くも悪くも目立った倉本だったが、来シーズンは勝負強さを残しつつ、守備での活躍も期待したい。

 

◆攻守にわたって活躍を見せた坂本がベストナイン

 ここから、ベストナインの選出にうつる。守備力重視ということでみていくが、やはり二塁手と同様に標準偏差を用いて数値化していく手法をとる。それをまとめたのが以下の表だ。

 ベストナインは坂本だ。安定した高水準の守備力、打力でも3番手につけるなど、守備も打撃も一級品だ。守備力重視の選考とはいえ、茂木や田中に一定水準以上の守備力があれば、ベストナインもあり得たかもしれない。逆に、源田や今宮に今以上の打力が備われば、ショート坂本一択時代に待ったをかけるときがくるかもしれない。今宮は今シーズン、打率、本塁打、打点で自己ベストを更新し、ここからのさらなる飛躍が期待される(よろしければこちらもご覧ください)。

 

表3 7選手の各成績の偏差値

 

守備能力

打撃能力

守備率

DPR

RngR

ErrR

補正UZR

RF

OPS

WRC

wOBA

坂本

62.95

60.78

53.89

58.04

56.62

60.67

57.68

60.01

59.35

田中

44.82

46.41

46.87

49.49

46.39

55.49

58.03

64.93

59.35

源田

33.94

67.96

67.65

36.43

66.32

62.77

42.00

46.32

42.12

今宮

64.77

37.07

49.68

68.84

51.82

36.61

50.25

52.79

49.81

京田

50.00

48.56

53.89

48.14

53.24

52.02

40.00

40.59

40.53

倉本

48.45

47.84

31.71

48.59

32.07

35.96

36.70

33.74

35.76

茂木

44.82

41.38

46.31

40.48

43.54

46.47

65.34

51.61

63.06

 

表4 守備力を重視した場合の評価値

 

守備能力

打撃能力

守備力重視値

坂本 勇人

58.82

59.01

117.80

田中 広輔

48.24

60.77

106.51

源田 壮亮

55.85

43.48

101.80

今宮 健太

51.46

50.95

102.52

京田 陽太

50.98

40.37

93.47

倉本 寿彦

40.77

35.40

77.24

茂木 栄五郎

43.83

60.01

100.61

 

 11月16日から19日にかけての「ENEOSアジアプロ野球チャンピオンシップ2017」に向けて、代表合宿が9日から始まり、12日には日ハムとの練習試合が開催された。その試合で二遊間を組んだのは京田と源田の新人コンビだ。将来的にこの2人が国際試合でもこのコンビを結成するのか、あるいは坂本がトップに君臨し続けるのか。どちらにせよ、日本の遊撃手の未来は明るいはずだ。

 

ベストナイン三塁手部門

 今シーズンの三塁手といえば、セ・リーグ首位打者に輝き日本シリーズ進出に貢献したDeNAの宮崎、初の規定打席到達で打率3割を記録した安部、4年ぶりに日本球界に復帰していきなりチーム三冠王となる活躍を見せたマギー、史上初となる外国人選手による20本塁打トリオの一角を担ったウィーラーと豊富な話題を提供してくれた選手が揃う。それ以外にも昨シーズンのパ・リーグ本塁打王レアード、本塁打王通算6回の中村、3大会連続日本代表に選出されている松田など、錚々たる顔ぶれとなっている。果たしてこの中からどの選手が今シーズンのベストナインにふさわしい活躍を見せたのだろうか。

 

安打製造機・宮崎

 まず私が注目したのは、今回のベストナインの選出候補の中で初めて登場するタイトルホルダーの宮崎だ。両リーグトップとなる打率で堂々の首位打者を獲得した宮崎は、本家ベストナインにも恐らく選出されるのではないだろうか。

 今シーズンの宮崎のストロングポイントは、全選手中最小の47だった三振数から見て取れる。1個の三振をするまでに立った打席数を表す「PA/K」という指標がある。この数値が高ければ高いほど、三振しにくい打者ということになるが、次の表で、今シーズンの「PA/K」で上位に入った選手をまとめた。ご覧の通り、宮崎は今シーズ最も三振しなかった打者であるということがわかる。

 

表1 PA/K上位5選手

順位

選手

PA/K

1位

宮﨑 敏郎

11.13

2位

中村 晃

10.53

3位

角中 勝也

10.27

4位

鳥谷 敬

9.19

5位

島内 宏明

8.61

 

 さらに「宮崎 三振」でネットを叩くと、興味深い記事が目に留まった。今シーズンの宮崎の活躍を過去の打者のどの類型に当てはまるかを検証したもので、それによると「内川タイプの巧打者」であると結論付けられている。以下、記事の内容を転載する。

内川タイプ 宮崎の今季47三振はセ・リーグ規定打席に到達した28選手中最少。1打席当たりの平均投球数が3.67とやや早打ちの傾向があり、四球も38と少ない。近年の同タイプには2度首位打者を獲得した内川がいる。2008年が49三振、31四球、平均投球数3.38。11年が48三振、25四球、平均投球数3.66と類似点が多い。

俊足ではない巧打者 155安打中、内野安打はわずか9本。盗塁がなく、併殺打がリーグ最多の23個と足は速くない。リーグ最多の併殺打を記録しながら首位打者を獲得したのは2リーグ制後6人目(8度目)。65年の南海・野村克也、66、71年の巨人・長嶋茂雄、81年のロッテ・落合博満らバットコントロールにたけた名選手が並ぶ。盗塁ゼロで首位打者になったのは01年のロッテ・福浦和也、12年の巨人・阿部慎之助に続く3人目。

サンケイスポーツ2017年10月11日)

 

三振が少なく、早打ちで四球も少ない。内野安打も盗塁も少ないが併殺打は多い。まさに、巧みなバットコントロールでヒットを稼ぐ宮崎は、まさに「安打製造機」だ。

 

 ヒットには、いい当たりを放っても正面のライナーで終わることもあれば、悪い当たりでも野手の間を抜ければ安打になるなど、多かれ少なかれ「運」の要素が付きまとう。この運の要素を取り入れながら、兎にも角にも打球がヒットになった確率を示す「BABIP」というものがある。本塁打とファウルを除く打球が安打となった割合を表す指標で、インプレー打率などと表現されることもある。インプレー打率と打率の差が少なければ少ないほど運に左右されない素の打率に近いものであるとされているが、以下の表で、今シーズンの打率上位5選手とそのBABIPの差をまとめてみた。結果は、.011で宮崎が最小、つまり、宮崎がもっともツイてなかった打者ということだ。それにも関わらず首位打者を獲得したということが、宮崎が安打製造機であることの証左ではないだろうか。

 

表2 打率上位5選手のBABIP

選手

打率

BABIP

BABIP-打率

宮崎 敏郎

.323

.334

.011

秋山 翔吾

.322

.348

.026

マギー

.315

.366

.051

大島 洋平

.313

.356

.043

柳田 悠岐

.310

.359

.049

 

首位打者・宮崎のもうひとつの武器は堅実な守備

 打撃で注目される宮崎という選手だが、もうひとつの注目点がある。それは、現役三塁手の中でトップクラスに守備力が高いという点だ。次の表は三塁手の今シーズンの守備成績を表したものだ。それによると、6部門のうち4部門でトップの成績であることがわかる。宮崎の堅実な守備もあり、14年はワースト2位、15年はワースト1位だったチーム三塁手守備成績が、宮崎の出場機会が増え始めた16年(宮崎は主に二塁手だったが、三塁手として208イニングに出場)、そして17年と連続で1位となっている。

 今シーズン、宮崎にとってはまさに攻守に渡って飛躍した一年となった。

 

表3 三塁手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

宮崎 敏郎

0.970

1.9

5.9

3.6

11.5

2.30

安部 友裕

0.964

-0.5

10.0

0.2

9.7

2.55

マギー

0.967

-1.6

-6.7

1.6

-6.7

2.43

鳥谷 敬

0.968

-1.0

-13.1

0.8

-13.4

2.05

小谷野 栄一

0.942

-1.8

-13.4

-1.8

-17.1

3.14

ウィーラー

0.936

1.4

-5.1

-4.5

-8.1

2.49

松田 宣浩

0.967

0.0

4.4

0.8

5.2

2.08

レアード

0.942

-1.5

1.1

-2.6

-3.1

2.21

中村 剛也

0.957

-0.1

-0.3

0.9

0.6

2.40

 

◆打撃貢献と長打力に優れたマギー

 首位打者・宮崎よりも貢献度の面で高い数値をみせたのは、マギーだ。4年ぶりの日本球界復帰となった今シーズンは、セ・リーグ記録となる48二塁打を放つなど、チーム三冠王となる活躍を見せた。また、守備でも三塁手だけでなく二塁手もこなし、打順でも2番を打つ時期があったなど、重量打線の起爆剤となった。

 

表4 三塁手の打撃成績

 

OPS

WRC

wOBA

宮崎 敏郎

.856

77.3

0.380

安部 友裕

.754

54.1

0.344

マギー

.897

94.2

0.396

鳥谷 敬

.767

74.5

0.359

小谷野 栄一

.669

45.4

0.301

ウィーラー

.835

89.0

0.373

松田 宣浩

.777

72.5

0.346

レアード

.767

68.5

0.339

中村 剛也

.765

59.7

0.342

 

 長打率は全選手中6位の.514と優秀なのだが、注目すべきは上位10選手のうちマギーを除く9選手が20本塁打以上を放っているということだろう。さらに二塁打本塁打の総数が66で2位と、一発もあれば外野を抜ける長打もあると、まさに今シーズンでトップクラスの中距離打者として活躍した。

 

表5 二塁打+本塁打総数上位5選手

順位

選手

HR

2B

HR+2B

1位

ロペス

30

42

72

2位

マギー

18

48

66

3位

秋山 翔吾

25

38

63

4位

柳田 悠岐

31

30

61

5位

筒香 嘉智

28

31

59

 

◆チーム事情の差が打率の差?

 では、本塁打、打点の2部門で宮崎を上回る力を発揮したマギーが、どうして宮崎に打率では及ばなかったのだろうか。それは、先ほどの宮崎の三振数の少なさのほか、チーム事情も影響しているかもしれない。

 宮崎は今シーズン、出場試合数のほとんどで5番に座った。一方でマギーは、開幕当初は5番を多く打ったが、後半戦は2番を打った。それ以外にも、4番で19試合、3番で9試合に出場するなど、宮崎に比べて打席の入れ替わりが多かった。以下、打順別の打率をまとめた。

 

表6 宮崎とマギーの打順別成績

 

2番

3番

4番

5番

打数

打率

打数

打率

打数

打率

打数

打率

宮崎

-

-

8

.250

4

.250

465

.327

マギー

233

.339

33

.152

72

.264

185

.335

 

 2番と5番で出場試合数が多かったマギーは、それぞれの打順でもその力を発揮できたが、合計100打席以上に立った3、4番では伸び悩んだ。一方で宮崎は5番以外では12打席を経験したのみだった。打順を固定できたか、あるいはできなかったという差が、マギーと宮崎のパフォーマンスに影響を与えているかもしれないし、さらには、日本シリーズに進出できたチームとCSが始まって以来初となるBクラスに沈んだチームの結果にも表れているかもしれない。

 

ベストナインは攻守に渡り優れた成績を収めた宮崎

 三塁手ベストナインは、DeNAの宮崎を選出したい。貢献度の高さや長打力ではマギーが上手かもしれないが、ここまで見てきたように、打者として優れたのは、巧みなバットコントロールを見せた宮崎だ。また、三塁手としての堅実な守備もベストナインに相応しい。

 ただ、三塁手は対象選手が多いなど、競争が激しいポジションであった。宮崎だけでなく、残留が濃厚だという報道が出ているマギーや、冒頭で紹介した選手たちも、来シーズンは対象選手に名を連ねることだろう。また、安部のような新顔として名を連ねる選手も出てくるかもしれない。

 過去3大会連続で日本のホットスポットを松田が守ってきたが、その牙城を崩す選手が現れることを大いに期待したい。

 

 

ベストナイン二塁手部門

  二塁手の選出にあたっては、まずは守備力をみていきたい。内野の要として遊撃手とともに一定水準の守備力がまず問われるこのポジションにおいては、「打てて守れる」というよりは、「守れて打てる」のほうを重視した選出をしていきたいと考える。具体的には、各選手の能力数値の評価比率と「守備:打力=6:4」とし、守備力に重きを置いた選出を試みる。

 今回の対象選手は浅村、上本、菊池、鈴木大地、山田の5選手だ。以下、まずは守備力からみていくことにする。

 

◆現役ナンバーワン二塁手はやっぱり菊池!だけど…

 守備力の選定については、まずは基本的な失策回避能力を示す守備率と、内野手の併殺完成による貢献を表す「DPR」、打球処理による貢献を表す「RngR」、失策抑止による貢献を表す「ErrR」、1試合でどれだけアウトに寄与したかどうかという守備寄与率を示す「RF」、そして守備全般での貢献を表す「UZR」の6項目でみていくことにする。

 二塁手の守備力と想像すると、やはり広島の菊池に注目が集まる。実際、NPBにおけるシーズン捕殺数ランキングでは1位から3位を独占しており、日米野球やWBCなどの国際試合でもその守備に注目が集まるなど、国内外で高く評価されている。

 6項目中4項目でトップの守備成績を記録した菊池の守備力はやはり評価しなくてはならない。全体的な守備貢献度としてUZRを見ると、他の二塁手よりも頭一つ抜け出した守備成績だということがわかる。

 

表1 二塁手の守備力

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

浅村 栄斗

.982

3.4

-0.7

-0.9

5.04

1.8

上本 博紀

.990

-1.0

-3.1

0.8

5.34

-3.2

菊池 涼介

.993

4.0

-3.2

2.4

5.20

3.2

鈴木 大地

.993

-4.5

-3.1

1.1

5.48

-6.6

山田 哲人

.988

-1.1

-0.4

-0.2

5.30

-1.6

 

 今シーズンの菊池の守備は相変わらず現役ナンバーワンといっても過言ではない成績を残しているが、本人としては不満に思う成績かもしれない。下に示したのはここ数年の菊池の守備能力を一覧で表したものだ。こちらを見ると、これまでのベストパフォーマンスを発揮しているとは言い難いということがみえてくる。

 

表2 菊池涼介の守備成績の推移

 

守備率

DPR

RngR

ErrR

RF

UZR

2014

.987

-0.1

12.3

0.9

6.34

13.2

2015

.988

1.5

9.0

-0.7

5.69

9.7

2016

.995

5.7

5.8

5.7

6.06

17.3

2017

.993

4.0

-3.2

2.4

5.20

3.2

 

 ここまでの守備貢献度が高すぎるため、今シーズンの守備に物足りなさを感じるというのは、贅沢な指摘だということはもちろん承知の上だ。特に今シーズンは開幕前にWBCにも参加し、疲れが出てきていることも考慮しなければならない。来シーズンはもう一度、破天荒でエキサイティングなプレーで楽しませてもらいたい。とはいえ、もう一度言うが、菊池の守備力は現役の二塁手でナンバーワンだ。

 

◆打撃能力では浅村がトップ

 一方で、打力の高い二塁手となると、西武の浅村がトップとなる。今シーズン、打率、本塁打と昨シーズンを下回ったが、99打点は110打点で打点王を受賞した2013年に次ぐ高記録だった。1番を打つ秋山の高い出塁能力とリーグ4位の犠打数を記録した源田の活躍もあり、こうした高い得点創出能力を記録できたのだと思われる。

 

表3 二塁手5選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

浅村 栄斗

.799

86.4

.359

上本 博紀

.769

59.4

.348

菊池 涼介

.716

68.1

.331

鈴木 大地

.748

71.2

.340

山田 哲人

.799

82.9

.362

 

 浅村と同じく3番セカンドを多く務めた山田は、今シーズン、かつてないスランプに苦しんだ。それでも、データ上で示す打撃能力では、トップの浅村に匹敵する結果を示した。苦心の山田を支えたのは14.6%と全体で4位となる高い四球率にあるかもしれない。次からは、浅村と山田の成績を比較してみていくことにする。

 

◆山田はまだまだ投手にとって警戒すべき打者

 浅村と山田は、データ上はほぼ互角だと言えるかもしれないが、実際の成績をみると浅村の方が上だ。成績だけ見ると浅村の方が警戒されるべき打者であるように思えるが、山田の91四球は全体でも2位で、四球率は浅村の倍以上の数値を記録している。こうした逆転現象は、やはり山田の持つ一発を放つ力が投手にプレッシャーを与えているからだということが、次の数値を見るとわかってくる。

 フライに占める本塁打の割合を示す「HR/FB」をみてみる。この数値が高ければ高いほど外野に上がったフライがそのままスタンドインする、投手の立場としては冷や汗もののデータなのだが、浅村が8.4なのに対し、山田が14.4と、山田の19本塁打よりも多くの本塁打を放ったロペス(30本、14.2)、秋山(25本、12.3)よりも多かった。スランプに苦しんだとはいえ、投手から見れば山田ははやり警戒すべき打者だということで、そのために四球が多くなっているように思われる。来シーズンは是非ともスランプを克服し、自身三度目となるトリプルスリーを目指してもらいたい。

 

表4 浅村と山田の打撃成績の比較

 

打率

本塁打

打点

四球率

HR/FB

浅村 栄斗

.291

19

99

7.0

8.4

山田 哲人

.247

24

78

14.6

14.4

 

◆大不振に苦しんだ山田が、実はベストナイン

 いよいよ、ベストナイン二塁手の選定に入っていく。選定基準について振り返っておくと、「守備:打力=6:4」を評価の際の能力評価比率とし、「守れて打てる」二塁手の選出を試みるとした。守備力トップの菊池が一歩リードしているように見えるが、強打の浅村が猛追しているのがここまでのベストナインレースの様相だ。打撃、守備の各能力が平均よりもどの程度優れているのかを標準偏差を用いて標準化することでそれを見ていく。

 

表5 5選手の各成績の偏差値

 

守備能力

打撃能力

守備率

DPR

RngR

ErrR

UZR

RF

OPS

WRC

wOBA

浅村

48.23

60.26

61.03

36.40

58.77

34.19

60.36

62.96

59.50

上本

50.20

46.33

42.12

51.41

44.53

54.63

50.88

35.63

50.00

菊池

50.93

62.16

41.33

65.54

62.76

45.09

34.14

44.43

35.31

鈴木

50.93

35.25

42.12

54.06

34.85

64.17

44.25

47.57

43.09

山田

49.71

46.01

63.40

42.58

49.09

51.91

60.36

59.41

62.09

 

表6 5選手の各成績の平均値

 

守備能力

打撃能力

合計

浅村 栄斗

49.81

60.94

110.75

上本 博紀

48.20

45.50

93.71

菊池 涼介

54.64

37.96

92.60

鈴木 大地

46.90

44.97

91.87

山田 哲人

50.45

60.62

111.07

 

 合計得点をみると、守備、打撃ともに2位につけた山田がトップに躍り出た。このまま山田が守備の菊池、打力の浅村を振り切って山田をベストナインに選出、といいたいところだが、ここでは守備力を重視した選考方法を採用しているため、もう一考が必要だ。

 打撃能力をⅹ、守備能力をyとしたとき、「守備:打力=6:4」の計算式は、1.2x+0.8yとなる。それぞれの平均能力をこの式に当てはめてみると、以下の通りになる。

 

 

表7 守備力を重視した場合の評価値

 

守備能力

打撃能力

守備力重視値

浅村 栄斗

59.78

48.75

108.53

上本 博紀

57.84

36.40

94.25

菊池 涼介

65.56

30.37

95.93

鈴木 大地

56.28

35.98

92.25

山田 哲人

60.54

48.50

109.04

 

 守備力重視の選出をした場合でも、山田をベストナインに選出すべきだという結論に至る。守備でも菊池に次いで優れた成績を収め、不振に苦しんだ打撃でも表面上の能力ほど見劣りせず、浅村に次ぐ2位だった。

 前人未踏、2年連続トリプルスリーを達成した昨シーズンが終わった後、山田は次なる目標をゴールデングラブ賞の受賞と定めた。ここで強力なライバルとなるのは間違いなく菊池だ。今シーズンもほかの二塁手と一線を画す守備力を見せつけたといっても、菊池にとってはこれがベストパフォーマンスではないことは先に述べた。だが、今シーズンの終わり、ヤクルトにヘッドコーチとして宮本慎也が戻ってきた。早くもその存在はグラウンドの選手に影響が広がり、それが守備面でさらなる高みを目指す山田にとっても成長の材料となることは間違いない。来シーズンは打撃でもトップに返り咲き、また、守備でも菊池を上回る活躍を期待したい。

 

 

ベストナイン一塁手部門

 バッテリーの選出を終え、ここからは内外野に話を移す。

 ここからの対象選手については、規定打席に到達した全55選手の中から、先に選出を終えた捕手部門の2選手(小林、中村)と、後ほど選出する指名打者部門の3選手(デスパイネ、アマダー、中島)を除く50選手とする。それぞれの出場試合数のうち最も多くついたポジションをその選手の正位置とみなし、それぞれの選出部門の対象選手とする。

 なお、一塁で27試合、中堅手で27試合、左翼手で26試合の阪神の中谷は、守備イニング数が288回で最多だった左翼手、つまり外野手として考える。また、銀次は先発出場では80試合で二塁のほうが多いが、次いで60試合で一塁が多く、さらに後半イニングでの守備変更などで一塁に回る場面が多いことから、守備イニング数は一塁が660 1/3、二塁が591 2/3と一塁の方が多く、ここでは一塁を本職とし、一塁手部門での対象選手とする。

 以下に、50選手の内訳をまとめる。

 

表1 内外野対象選手内訳

内野手

一塁手

二塁手

三塁手

遊撃手

外野手

25

50

※捕手2選手、指名打者3選手は除く

 

 また、二塁手と遊撃手の項目で後述するが、この2つのポジションの選手選考については守備力を重視した選考を試みる。選手の守備能力を示す指標のひとつに「UZR」があるが、こちらはあくまで同じ守備位置の選手の中での比較であるため、異なる守備位置の選手との比較に不向きという特徴がある。たとえば、一塁手と遊撃手でUZRが同じ10を記録した場合、どちらが守備能力に優れた選手だと思われるだろうか。数字の上では同じでも、おそらく多くの方は遊撃手のほうが優れていると直感的に感じるのではないだろうか。こうしたポジションごとの守備力の誤差を補正するために用いられるのが「守備位置補正」という概念だ。DELTA社による2015年に更新された守備位置補正によると、一塁手の守備位置補正は-11.6、遊撃手は5.0だ。同じ10のUZRでも、全体的にみると一塁手のUZRは-1.6で、遊撃手は15.0となる。このように、ポジションごとの誤差を補正し、限りなく同じ条件に近い状態で守備力を図ることができる。

 また、DELTA社により更新された守備位置補正によると、二塁手が7.3、遊撃手が5.0と、投手、捕手、指名打者を除くふたつのポジションだけがプラスとなり、ほかの野手に比べ守備力の重要性がより高いポジションだということがわかる。そのため、二塁手と遊撃手に関しては打力よりもやや守備力を重視した選考を試みる。そのほかのポジションについては、打力が基本的な選考基準となるが、万が一同等の能力や甲乙つけがたい結果が得られた場合、最後の判断指標として守備力のより高い選手を選出するという方法をとる。

 

表2 守備位置補正表

 

補正値

一塁手

-11.6

二塁手

7.3

三塁手

-5.1

遊撃手

5.0

左翼手

-8.4

中堅手

-0.5

右翼手

-4.1

 

◆自己ベストを更新する活躍を見せたロペスをベストナインに選出

 一塁手ベストナインはDeNAのロペスだ。シーズン後半は4番を務め、自己最多の104打点をあげ、自身初の打撃タイトルとなる打点王に輝いた。阪神、広島とのクライマックスシリーズでは、8試合で33打数11安打、1本塁打、7打点の活躍でチームを19年振りの日本シリーズに導き、ファーストステージ、ファイナルステージでMVPに輝いた。

 規定打席に到達したロペス、阿部、中田、銀次の4人の一塁手の打撃成績においても最も優れた成績を収めたがロペスは基本打撃成績だけでなく、OPS、wRC、wOBA、さらには長打率から単打を除外する形で示す長打率「ISO」でも一線を画す。特に、ISOにおいては全体6位と一塁手部門にとどまらない好成績を残し、また、wRCは34本塁打を記録した昨シーズンよりも高い90.4、wOBAも自己ベストに並ぶ.382と、名実ともに自己最高成績を記録するシーズンとなった。また、

 

表3 一塁手3選手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

ISO

ロペス

.863

90.4

.382

.232

阿部 慎之助

.718

50.2

.319

.127

中田 翔

.676

52.4

.310

.150

銀次

.728

69.8

.337

.074

 

◆勝負強さの光る銀次、劇場型の阿部

 勝負強さにおいて、興味深い結果が得られた。

 ロペス、阿部、中田、銀次の得点圏打率はそれぞれ.322、.309、.195、.369と銀次がトップで、さらに、重要場面(たとえば「8回表、2対3で負けている2死二、三塁の場面はどれだけ重要か?」といったような)での勝負強さを示す「Clutch」をみると、-2.29、0.20、0.12、2.14とこちらも銀次がトップだった。ちなみに銀次は全選手の中でも最高で、ロペスはワースト2位だった。

 勝負強さでの活躍は阿部も健在だった。得点圏時の成績でも、ビハインド時と同点時、つまり通常の得点圏打率からダメ押し打を差し引いた得点圏打率を見ると.266、.333、.200、.324と阿部がトップで、勝利打点もそれぞれ10、13、10、6と阿部がトップで、なおかつ全選手中で5位タイの好成績だった。「サヨナラ慎ちゃん」と言わしめた全盛期ほどの活躍を期待するのは酷なことかもしれないが、はやり阿部の勝負強さには目を見張るものがある。

 

表4 一塁手3選手の勝負強さ

 

Clutch

得点圏打率

ビハインド&同点時

決勝打

ロペス

-2.29

.322

.266

10

阿部 慎之助

0.20

.309

.333

13

中田 翔

0.12

.195

.200

10

銀次

2.14

.369

.324

 

 

ベストナイン捕手部門

  捕手のベストナインを選出するにあたり、まず考えなければならないのは、対象選手をどこまで広げるかということだ。

 12球団で最も出場試合数が多かった、規定打席に到達した、規定守備回数に到達したなど対象の選出方法はいくつかあるが、やはり、ベストナインとして選出する以上、攻守ともに一軍レベルとしてみなされているレギュラー捕手から選出するべきであろう。ということで、ここでは先発出場試合数が100試合を超えた巨人・小林、ヤクルト・中村、ロッテ・田村、楽天・嶋の4選手を対象に見ていくことにする。

 

表1 各球団捕手の先発出場数

 

出場試合数

先発出場試合数

會澤翼

106

87

梅野隆太郎

112

90

戸柱恭孝

112

90

小林誠司

138

134

松井雅人

87

68

中村悠平

127

123

甲斐拓也

103

80

炭谷銀仁朗

104

90

若月健矢※

100

88

大野奨太

83

49

田村龍弘

132

100

※出場試合数は伊藤光の103試合がチーム最多だが、先発出場数は若月が最多

 

◆一定レベル以上守れて、尚且つ打撃能力が良い捕手がベストナイン

 元ロッテの里崎は、「守れるキャッチャーと、打てるキャッチャーがいたら、どちらを起用しますか?」という質問に対して、「『捕って、止めて、投げる』能力が一軍のレベルにあるのならば、打てるキャッチャーを使います」と回答している。つまり、捕手としてどちらも最低限の能力が備わっていれば、レベルに優劣はあってもそこはフラットで、打てる捕手を起用するということだ。

 捕手部門の選出方法はこれに則り、①まずは捕手としての能力が一定レベルにある選手を選び、②その捕手の中から打撃能力に優れた捕手をベストナインとしたい。

 

◆各守備成績から算出する「捕手偏差値」

 捕手としての一定の能力をまずは算出しなければならない。ここでは守備率、盗塁阻止率、そして失策抑止による貢献を示す「ErrR」、守備全般での貢献を示す「UZR」、盗塁阻止・捕逸・暴投・失策割合から算出など捕手の守備による貢献を示す「Catcher」を捕手の守備能力とする。それを4選手でまとめたものが表1だ。

 

表2 捕手の平均守備成績

選手

守備率

盗塁阻止率

Catcher

ErrR

UZR

小林 誠司

.995

.380

3.1

-0.7

3.2

中村 悠平

.999

.337

1.0

0.8

2.2

田村 龍弘

.996

.337

1.5

0.0

1.8

嶋 基宏

.996

.289

2.2

-0.1

1.8

10選手平均

.996

.324

1.5

-0.13

1.4

 

 ここからさらに、捕手能力を総合して、各選手がどの水準にあるのかを理解する必要がある。ここで私が提案したいのが、「捕手偏差値」だ。学校のテストや入学試験を受けると教科ごとに偏差値が出るように、捕手の守備にも各項目で偏差値を作ってみたのがそれだ。規定守備回数に到達した全10選手の能力から捕手としての平均的な守備能力の水準を算出し、上記4選手の守備能力がどの位置にあるのかを表2で示している。

偏差値、というからには、50が平均的な水準である。ここでは小林、中村、田村の3選手が一定レベル以上の守備力を持った捕手とみなす。

 

表3 捕手偏差値ランキング

 

選手

捕手偏差値

1位

小林 誠司

51.43

2位

中村 悠平

50.63

3位

田村 龍弘

50.27

4位

嶋 基宏

48.48

 

 ここでは小林がトップの捕手偏差値を記録した。今年3月のWBCで日本代表の正捕手を務めた小林が、盗塁阻止率やその他の貢献度でもほかの捕手よりも優れた成績を収めた。もともと守備力で評価を受けていた小林だが、今シーズンも守備の面では好成績を残した。来シーズンは3年目になる宇佐美との正捕手争いが待っているが、先の里崎の理論から考えると、やはり正捕手の筆頭候補は小林であると考えられる。打撃力も向上させ、正捕手の座を確実に射止めたい。

 

 今回の守備面での選出方法については課題が残る。投手の防御率の捕手版である「捕手防御率」、捕球から二塁までの送球到達タイムを示す「ポップタイム」、際どいゾーンの球を球審にストライクと判定させる「フレーミング能力」など、今回の分析では適切なデータを見つけることができず算出できなかった項目もあったこれらを補えれば嶋の捕手としての能力を再評価できるかもしれないが、こちら次回以降の課題とし、ここでは3選手に絞って次の選出項目に移りたい。

 

◆3選手の中で打撃能力が最も高かった中村がベストナイン

 一定水準以上の捕手能力という選出基準によって3選手に絞った捕手を、続いては打撃能力で見ていきたい。ここでは、打者能力を評価するうえでよく目にする「OPS」「wRC」「wOBA」で比較する。すると、以下の通りになる。なお、OPSは出塁率長打率と総合的な打撃能力を表す指標、wRCは打者が創出した得点数を表す指標を表す指標、wOBAは1打席あたりでどれほど得点の増加に関わっているかを表す指標という位置づけがある。

 それによると、どの項目でもトップは中村となった。特に、wRCとwOBAでは小林と田村に大きく差をつけ、比較的高い得点創出能力を示す結果となった。

 

表4 3捕手の打撃成績

 

OPS

wRC

wOBA

小林 誠司

.542

21.3

.257

中村 悠平

.649

40.2

.300

田村 龍弘

.638

28.0

.287

 

 しかし、昨今叫ばれている「打てる捕手」の減少問題を裏付けるように、3選手の打撃成績も正直、目を見張るほどの成績ではない。中村のどの成績も下から数えた方が早いくらいだ。

 とはいえ、捕手としての守備能力が一定水準にある以上、打撃能力が最も優れた中村を選出するべきだろう。

 

 

ベストナイン抑え投手部門

  投手編、最後はクローザー部門を選出して投手編を終えたい。

 今シーズン、ソフトバンクのサファテが日本新記録となる54セーブを挙げる大活躍を見せた。今回は20セーブ以上を挙げた10投手対象とするが、以前検証したように、サファテのクローザーとしての能力は歴代最高と言っても過言ではなく(詳しくは9月10日に寄せた「歴代最強救援投手」を参照されたい)、恐らくサファテの選出が濃厚だろう。

 サファテの能力の高さを紐解いていくことになると思うが、それではほかの投手が浮かばれない。できるだけほかのクローザーにもスポットを当てながら、投手編を終えていきたいと思う。

 

◆今シーズン最高値のWHIPを記録したサファテ、年々向上している増田

 WHIPのトップを記録したのは、早速サファテだ。0.67という数字は他の投手の追随を許さない圧倒的な力を見せつける結果となった。この数値は、先発、セットアッパー、クローザーの対象選手中、1位でもあった。

 次点に西武の増田が入った。昨シーズンから抑えに抜擢された増田は、昨シーズンと同数の28セーブを記録したが、WHIPにおいては入団以来最高の0.96を記録した。残念ながら連勝を止めた試合で敗戦投手になってしまったが、7月21日から8月4日にかけての13連勝の際には、セーブ場面の全4試合でセーブを挙げる活躍を見せた。

 

表1 抑え投手WHIP 5傑

 

選手

WHIP

1位

サファテ

0.67

2位

増田 達至

0.96

3位

山﨑 康晃

0.99

4位

田島 慎二

1.04

5位

松井 裕樹

1.08

 

◆サファテの圧巻のtRA、クインテット最高成績を収めたドリス

 今シーズン、クローザーでは最高となる1.09の防御率を記録したサファテが、tRAでもトップ、しかも防御率よりも優秀な0.83を記録した。WHIPと同様、この数値は、先発、セットアッパー、クローザーの対象選手中、1位でもあった。

 次点のドリスも、サファテと同様に防御率よりも優秀なtRAを記録した。「中継ぎ陣部門」でも紹介した60試合クインテットの最後の一角を担うドリスは、この5投手の中で最も優秀な成績を収めた。これに加え、試合の局面を左右する重要な場面での登板機会を示す「pLI」と、勝利貢献度を示す「WAR」でも、クインテットの中で最高値を記録した。今シーズンの阪神ブルペンを支えたリリーフ陣において、ドリスの重要度の高さがうかがえる。

 

表2 抑え投手tRA 5傑

 

選手

tRA

1位

サファテ

0.83

2位

ドリス

1.58

3位

松井 裕樹

2.00

4位

増井 浩俊

2.05

5位

山﨑 康晃

2.07

 

表3 60試合クインテットの各成績

 

ドリス

桑原

岩崎

マテオ

高橋

tRA

1.58

2.31

2.51

2.11

2.06

pLI

2.11

1.76

0.91

1.66

1.15

WAR

2.6

2.2

1.7

2.1

1.7

 

◆三冠達成のサファテ、さらなる武器を身に着けた増井

 K/BBで10.21を記録したサファテが、WHIP、tRAに続き、こちらも今シーズン最高値だった。これで三冠達成である。

 次点の増井は、昨年は不調でクローザーから一時的に先発に転向したが、今シーズンはクローザーに再転向した。不安やブランクを感じさせない投球で、K/BBは入団以来最高の7.45を記録し、与四球率も3位となる5.1%と優秀(1位はサファテの4.2)で、こちらも入団以来最高だった。フォークを決め球にするだけに、早くからカウントを稼げる制球力に磨きがかかると、今後の更なる飛躍に期待がかかる。

 

表4 抑え投手K/BB 5傑

 

選手

K/BB

1位

サファテ

10.20

2位

増井 浩俊

7.45

3位

山﨑 康晃

6.46

4位

ドリス

5.00

5位

増田 達至

4.46

 

◆松井がソフトバンクなら52セーブ?サファテに肉薄するセーブ成功率

 セーブ数ではサファテが圧倒的だが、セーブ成功率でいえば松井も負けていない。サファテのブロウンセーブは1回、松井は2回とハイレベルな争いだった。チームの順位を考慮すると、松井よりもサファテのほうがセーブ機会は当然多いが、もし松井がソフトバンクのクローザーをしていたと仮定すると、単純計算で約52セーブを挙げる計算となる。

 サファテの54セーブが多く取り沙汰されているが、松井のセーブ成功率も驚異的な数字だ。次項目以降は、松井がどれほどサファテに追随しているかにも注目していきたい。

 

表5 抑え投手セーブ成功率 5傑

 

選手

セーブ成功率

1位

サファテ

98.2%

2位

松井 裕樹

94.3%

3位

カミネロ

90.6%

4位

今村 猛

88.5%

5位

増田 達至

87.5%

 

◆安定型守護神のサファテと、劇場型守護神の松井

 サファテと同様に、LOB%が80%後半で、得点圏、非得点圏どちらの被打率も1割台だったのは、こちらも松井裕樹だ。両投手とも、9回に登場する投手として相手チームに与える絶望感は相当なものになるが、松井がサファテにあと2%近づくためには、一体何が必要なのかを考えていきたい。

 松井は、WHIPもtRAもセーブ成功率もトップクラスだが、K/BBが2.40とサファテに大きく見劣りする。与四球率を見ると、サファテが4.2とクローザー部門でトップなのに対し、松井は12.1クローザー部門だけでなく、今回の全投手中でも最下位だった。つまり、ランナー出すこともなければ失点することもないサファテ、ランナーは出すが失点がない松井という、成績上では類似性がみられるものの、その中身が違うという傾向がみられた。言うなれば、サファテが「安定型守護神」、松井が「劇場型守護神」といったところだろうか。

 松井の粘り強さが一級品だということは言えるかもしれないが、制球力に課題がみられるため、1安打あたりの失点も必然的に多くなる。得点圏時の被打率をみると、松井はLOB%で上位にいる増井よりも成績は上だ。しかし、両投手の1安打あたりの失点をみてみると、松井が7安打9失点で0.78点、増井が8安打10失点で0.80点と、その差は縮まり、松井がかろうじて勝っている程度だ。ランナーを出しやすい分、被打率ほどの成績を残せていないということなのだろうか。

 こうした制球力を磨いていくことが、松井を守護神として更なる高みへと導く近道なのかもしれない。

 

表6 抑え投手LOB%と状況別被得点圏打率

選手

LOB%

得点圏被打率

非得点圏被打率

サファテ

88.20

.148

.156

増井 浩俊

86.70

.182

.250

松井 裕樹

86.20

.167

.164

今村 猛

85.20

.241

.152

増田 達至

83.70

.201

.212

 

◆クローザーとして優れた資質を持つドリス

 サファテが初めて首位を明け渡す部門があった。サファテといえば、今年8月1日の「先発陣は何か感じて欲しい」発言でも話題になった被本塁打を含む3本の本塁打を浴びているなど被本塁打率は0.41と素晴らしいが、松井とドリスはそれぞれ今シーズン打たれた本塁打は0本と1本で、被本塁打率は0.00と0.14でサファテよりも優秀だった。

 

表7 抑え投手HR/9 5傑

 

選手

HR/9

1位

松井 裕樹

0.00

2位

ドリス

0.14

同3位

サファテ

0.41

同3位

山﨑 康晃

0.41

5位

カミネロ

0.57

 

 被本塁打ゼロという松井は十分に賞賛に値するが、ここで注目したいのは、阪神のドリスだ。来日2年間で被本塁打数は1と、どうしてここまで本塁打を打たれないのか。それは、ドリスの打球傾向をみればわかるかもしれない。

 その前に見てほしいものがある。今シーズン30本以上の本塁打を放った8打者が対象に算出した打球傾向だ。本塁打を打つには、もちろんだがその打球のほとんど多くが飛球であるはずだ。そこで見ていくのが、打球のゴロとフライの比率を示す「GB/FB」と、フライに占める本塁打の割合を示す「HR/FB」だ。「GB/FB」は1より数字が大きければ大きいほどゴロの割合が多く、ゼロに近づくほどフライの割合が多いという見方になっており、8選手の平均は0.97と、わずかではあるがフライ傾向の方が強いという結果が示された。また、HR/FBは全選手中トップのバレンティンを筆頭に、ホームランバッターの多くが平均すると約20%前後で打ち上げた打球をスタンドまで運んでいる。

 つまり、本塁打を打つ打者というのは、打球がフライになる傾向が強いということで、それは転じて、フライが上がることはスタンドインで失点につながる可能性があるということだ。それを踏まえて、ドリスの打球傾向に話を戻したい。

 

表8 ホームランバッターの打球傾向

選手

本塁打

GB/FB

HR/FB

デスパイネ

35

0.94

23.8

ゲレーロ

35

1.58

18.1

レアード

32

0.85

19.2

バレンティン

32

1.15

26.4

柳田 悠岐

31

0.85

21.5

ウィーラー

31

0.75

15.7

T-岡田

31

0.89

20.0

ロペス

30

0.71

14.2

 

 先ほどの「GB/FB」は同じ要領で投手にも適用できる。見てみると、ドリスのGB/FBは全クローザー中トップ、且つ唯一の2点台を記録していることがわかる。これは、ほかのクローザーの中で最もフライが打たれづらい投手ということで、つまり、本塁打が打たれづらい投手としての傾向が最も強く示されているということだ。また、GB/FBもドリスは2.5と最小で、フライは打たせないし、打たせてもスタンドまで届かせないという「出合い頭の一発」が少ない投手としての印象を受ける。サファテもそれぞれ1.10、7.3と優秀なのだが、それを凌駕するドリスのクローザーとしての適性の高さがうかがえる。

 

表9 抑え投手GB/FB 5傑

選手

GB/FB

HR/FB

ドリス

2.09

2.5

田島 慎二

1.57

11.3

増井 浩俊

1.52

17.1

山﨑 康晃

1.45

5.9

平野 佳寿

1.30

8.8

サファテ

1.10

7.3

 

ベストナインクローザー部門は文句なしでサファテ

 ベストナインクローザー部門は、やはり文句なしでサファテに決まりだ。

 今回紹介した項目の多くでトップに立つなど、ほかの投手との格の違いを見せるシーズンとなったに違いない。今回はあえてサファテへの言及は控えたものの、日本新記録となる54セーブを挙げた史上最高救援投手としての凄みがわかることだろう。

 サファテの壁は高く、厚いものの、松井、山﨑の若手のクローザーも健闘した。特に松井は被本塁打ゼロという輝かしい実績をキャリアに積み、今後の日本球界の投手陣の切り札になってくれることを期待したい。

 そのほか、クローザーとしての資質を備えたドリス、見事復活を果たした山﨑、年々レベルアップしている増田、新たな武器を身に着けた増井など、ほかのどの投手にも多くの見どころがあることが伝わってくれると幸いである。

 

表10 の今シーズンの成績

 

成績(順位)

サファテ

松井 裕樹

ドリス

山﨑 康晃

防御率

1.09(1)

1.20(2)

2.71(9)

1.64(3)

セーブ

54(1)

33(4)

37(2)

26(9)

登板数

66(3)

52(9)

63(4)

68(1)

WHIP

0.67(1)

1.08(5)

1.11(7)

0.99(3)

tRA

0.83(1)

2.00(3)

1.58(2)

2.07(5)

K/BB

10.21(1)

2.40(9)

4.97(5)

6.46(3)

セーブ成功率

98.2%(1)

94.3%(2)

86.0%(7)

86.7%(6)

LOB%

88.20(1)

86.20(3)

70.40(10)

80.90(7)

HR/9

0.41(3)

0.00(1)

0.14(2)

0.41(3)

GB/FB

1.10(7)

0.76(10)

2.09(1)

1.45(4)

HR/FB

7.30(5)

0.00(1)

2.50(2)

5.90(3)

 

 

 

 

ベストナイン中継ぎ投手部門

 続いて、中継ぎ投手を選出していきたいと思う。中継ぎ投手は、登板数が60試合以上、あるいは15セーブ未満20ホールド以上のいずれかを記録した27選手を対象とする。

 タイトルをおさらいすると、セ・リーグの最優秀中継ぎ賞は桑原とマテオの阪神コンビ、パ・リーグが岩崎の、いずれも初受賞となっている。果たしてこの3選手は、タイトル通りの活躍を見せているのだろうか。

 先発投手と同様に、「WHIP」「tRA」「K/BB」の3項目をまずは見ていきたい。

 

◆試合の勝敗を左右する場面、もっとも安定感を見せたのはマーティン

 中継ぎ投手として最も優れたWHIPを記録したのは0.72でファイターズのマーティンだった。昨シーズン、増井の代役としてクローザーに抜擢されると21セーブの好成績を上げ、日本一に貢献した。今シーズンは前半戦で負傷し、登板数は昨シーズンを下回る40試合に終わったものの、それでも29ホールドを記録した。

 ここでは、12球団の主要セットアッパーの中で唯一0.7点台を記録したマーティンが一歩リードを見せた。

 次点では同じくファイターズの鍵谷だ。マーティン、宮西がセットアッパーとして活躍する印象が強いが、勝敗にかかわらず、ホールドがつかない場面でも献身的な投球をみせた。プロ5年目の今シーズン、自己最高成績を収め、来期もブルペンを支える貴重な投手の一人となるだろう。

 

表1 中継ぎ投手WHIP 5傑

 

選手

WHIP

1位

マーティン

0.72

2位

鍵谷 陽平

0.88

3位

髙橋 聡文

0.90

4位

中﨑 翔太

0.92

5位

桑原 謙太朗

0.94

 

◆「60試合クインテット」の抜群の安定感

 tRAでは上位5選手のうち4選手が阪神勢だった。今シーズン、1球団で5投手が60試合登板を達成するという史上初の快挙を成し遂げたチームにおいて、その中心を担った「60試合登板クインテット」の盤石ぶりがここからわかる。

 その中でもトップを記録したのは、クインテットの一角、髙橋聡文だった。クインテットでは最年長の34歳、プロ16年目のベテラン左腕が登板数も防御率もキャリアハイに迫る活躍を見せた。

 もう一人、マテオにも注目したい。最速157キロのストレートを武器に、昨シーズンはクローザーを務めた剛腕が記録した防御率は、ほかの4投手に比べて悪かったのだが、一方でtRAは最も良くて2.11だった。なおかつ、ほかの4投手のtRAが防御率よりも悪かったことを考えると、投手としての力量は評価に値するだろう。

 

表2 中継ぎ投手tRA 5傑

 

選手

tRA

1位

髙橋 聡文

2.06

2位

マテオ

2.11

3位

桑原 謙太朗

2.31

4位

マーティン

2.45

5位

岩崎 優

2.51

 

◆抜群の制球力の牧田、奪三振能力は高いが制球力に課題のある石山

 K/BBについてはどうだろうか。

 ここでは、日本球界では珍しいアンダースローの牧田が最も優秀だった。奪三振率は5.03と突出して高いわけではないものの、四球率が12球団でもっとも低い2.0を記録するなど、制球力の高さが際立った。独特な投球フォームでここまで高い制球力が備わっていると考えると、メジャー球団が興味を示すのに、なにも疑問は持たない。

 また、上位5選手の中では石山が唯一10点以上の奪三振率を記録した。ルーキーイヤーに60試合に登板したものの、ここ数年は精彩を欠いた石山も、今シーズンは見事復調し、キャリアハイとなる66試合に登板した。課題があるとすればそれは四球率にあるということか。それでも、ルーキーイヤーだった13年の11.4の与四球率を今シーズンは6.0にまで改善した。より制球力に磨きをかけ、さらなるレベルアップを図りたいところだ。

 

表3 中継ぎ投手K/BB 5傑

 

選手

K/BB

1位

牧田 和久

7.05

2位

桑原 謙太朗

6.34

3位

マーティン

5.64

4位

森 唯斗

5.02

5位

石山 泰稚

4.45

 

◆得点圏時の被打率の低さが非生還率にも表れている岩嵜とマーティン

 ここからはセットアッパーとクローザーに共通で検討する2項目をみていく。

 その一つ目となるのが「LOB%」で、出塁させたランナーの非生還率を表した指標だ。試合の勝敗に大きな影響を与える終盤での登板が多くなる役割ということで、勝負どころで発揮される粘り強さをみていく。

 90%越の高い非生還率を記録したのは、今シーズンパ・リーグの最優秀中継ぎ賞を獲得した岩嵜と、WHIPでも好成績を記録したマーティンの2選手だった。

 岩嵜、マーティンの非生還率は、ともに得点圏時の被打率にも表れている。対象選手中、岩嵜の得点圏被打率は2番目に優秀な.132、マーティンは3番目の.132だった。特に岩嵜は、満塁時を8打席で無安打に抑えるなど、ピンチでの強さを発揮した。

 

表4 中継ぎ投手LOB% 5傑

 

選手

LOB%

1位

岩嵜 翔

92.20

2位

マーティン

91.30

3位

中﨑 翔太

87.60

4位

桑原 謙太朗

86.80

5位

福山 博之

85.20

 

◆ホームランは打たれないが、失点率は高いシュリッター

 試合の勝敗に大きな影響を与えるという意味において、LOB%と並び見ておきたいのが、被本塁打率だ。下の表は対象選手の被本塁打率が優れている投手を表している。それによると、来日一年目の西武・シュリッターが最小だった。63と2/3イニングを投げ、打たれた本塁打はわずか1本だった。ちなみに、同様に阪神の高橋も1本、「抑え部門」に出てくる楽天の松井に至っては0本だった。

 しかし、今シーズン記録した防御率は2.83の好成績だったものの、tRAはそれを大きく上回る4.43で、対象選手中下から二番目だった。このあたりはK/BBやから説明できるかもしれない。0.79というK/BBが表すように今シーズンは制球難に苦しんだ。通算被打率も.251と決して優秀ではなく、被適時打が多いのか、失点を防ぐ能力に課題が残った。

 その点に比べ、60登板クインテットを担う高橋、岩崎、桑原の3投手はここでも安定感のある結果を残した。

 

表5 中継ぎ投手HR/9 5傑

 

選手

HR/9

1位

シュリッター

0.14

2位

髙橋 聡文

0.19

3位

岩崎 優

0.25

4位

桑原 謙太朗

0.27

5位

福山 博之

0.30

 

◆万能型の岩崎、切り札的なマシソン

 ここから、先ほどまでの投手全般の能力から派生して、中継ぎとして必要な能力をみていく。

 中継ぎは先発の投球内容次第では急な登板やイニングまたぎを求められる。勝ち試合のいわゆる「勝利の方程式」を担うだけでなく、時として同点やビハインドの場面でも登板するという、同じ中継ぎでもクローザーと比べてフル回転できる臨機応変さやスタミナが必要だ。そこで、下の表で示したのが、各セットアッパーの平均投球回数だ。はじめに又吉について言及しておく。

 又吉は開幕当初先発を任される試合があり、そのこともあり、投球回数は110に達し、そのため平均投球回数も2回台と多くなっている。そこで、ここではセットアッパーとしての登板に限った41試合56イニングとして考え、平均投球回数を1.37とする。

 それをふまえて見てみると、1イニング以上を平均して投げたのは27投手中9投手だった。この9投手に、先ほどまで各項目に名を連ねる常連だった高橋や桑原が外れた。高橋と桑原の平均投球回数はそれぞれ0.77と0.97で1イニングに届かなかった。これには60試合に登板した投手が5投手もいたというチーム事情が関係していると思われる。中でも高橋は、独特な投球フォームから左のワンポイントという起用法が多く、これが平均投球回数を減らしている理由と考える。そんな中で岩崎がクインテットの中で唯一上位に入ったことは興味深い。1イニングを投げることを前提としないチームの中継ぎ事情において、1イニング以上を投げる岩崎からは、どの場面でも投入できる「困ったときの岩崎」としての使いやすさが感じられる。

 話は変わり、見てもらいたいのが、又吉7回、マシソン15回、牧田8回、岩崎14回という数字だ。これは、1イニングよりも多い投球回数、つまりイニングまたぎを記録した試合の回数だ。セットアッパーとして比較的投球回数が多い上位選手の中にあって、マシソンの15回と岩崎の14回は突出した登板回数のように思われる。それぞれのイニングまたぎでの成績はマシソンが33回で防御率2.45、岩崎が28回1/3で防御率3.49だった。

 岩崎の万能性も捨てがたいが、ここでは、長いイニングも投げられて、防御率も優れているマシソンを、ベストセットアッパーの候補として入れたい。

 

表6 中継ぎ投手平均投球回数 5傑

 

選手

平均投球回数

1位※

又吉 克樹

1.36

2位

マシソン

1.15

3位

牧田 和久

1.07

4位

岩崎 優

1.06

5位

石山 泰稚

1.03

同5位

ジャクソン

1.03

同7位

岩嵜 翔

1.00

同7位

森 唯斗

1.00

同7位

近藤 大亮

1.00

 

◆相手打者の打席に左右されない強さを持つマーティン

 最後にみていきたいのは、細かい被打率についてだ。先発投手やクローザーと違い、セットアッパーは次の打者が左打者か右打者で登場の場面が変わってくる場合がある。つまり、先発投手やクローザーが否応なしに打者のめぐり合わせに対峙する一方で、セットアッパーは打者の打席によって有利な場面での登板を迎えることが多くなるということで、一見するとそれはセットアッパーの成績をより向上させる要因かもしれない。しかし裏を返せば、左右別の被打率を見ることで、打席の違いに左右されない投手そのものの力量に近づくことができるのではないかと考える。

 それをまとめたのが以下の表だ。左右打席に関係ない力量を図るために、右打者と左打者の被打率の差を算出した。単純に考えると左右別の被打率の差が少ない投手なら、自分のパフォーマンスを発揮するのに相手打者の打席にとらわれないということを示すが、それだけでは不十分だ。たとえばどちらも3割打たれている投手がいたとして、こちらは被打率差が0ということになるが、3割を打たれている以上、決して優秀な投手成績とはいえない。そういった事態をなくすため、今シーズンの通算被打率が2割を下回った投手を対象とする。

 今回は5投手が対象となる。表の太字で示した数字がこの中で最優秀だった成績を示す。WHIPとLOB%でも優秀な成績を収めたマーティンが3項目でトップに立っていることがわかる。右投手のマーティンが左打者をうまく抑えられたことが、この結果の要因ということだろうか。左右別は被打率唯一の0.03台を記録した。

 方や、多くの項目で上位成績を収めてきた桑原や岩崎をはじめとした60試合クインテットやマシソン、岩嵜らの名前がここにはない。岩崎と岩嵜に関しては被打率差平均を上回る結果に終わり、高橋は前述したように左のワンポイント起用が多いにも関わらず左打者の被打率の方が高く、桑原とマシソンは左右どちらの打者からも被打率は2割を超えた。

 

表7 中継ぎ投手被打率差 5傑

選手

被打率差

右打者

左打者

被打率差

マーティン

.165

.186

.147

0.039

鍵谷 陽平

.170

.147

.200

0.053

中﨑 翔太

.173

.149

.196

0.047

髙橋 聡文

.182

.154

.202

0.048

ジャクソン

.198

.170

.229

0.059

 

◆非出塁、非生還、制球力など総合的に優れたマーティンがベストナイン

 ここまで、WHIP、tRA、K/BBに加え、中継ぎ投手として必要なLOB%、HR/9、平均投球回数、被打率をみてきた。

 今年のセットアッパーの話題として注目を集めたのは、阪神の誕生した60試合クインテットだろう。場面によってはイニングまたぎも可能な万能型の岩崎、防御率よりも優秀なtRAを記録したマテオ、対左打者に多少の物足りなさを感じるものの、WHIPと被本塁打率で優れた成績を収めた高橋、そして、セットアッパーとして総合的な能力に優れた桑原という、クローザーのドリスを除く4投手がそれぞれの持ち味を発揮したシーズンだった。制球力に改善の余地がみられるものの、その球威で打者を圧倒した中﨑は、終盤にはクローザーを務めるなど広島の連覇に大きく貢献した。

 しかし、これらの投手を差し置いて私がベストナインのセットアッパー部門に選出したいのは、ファイターズのマーティンだ。怪我による途中離脱のため40試合の登板にとどまったものの、それでも29ホールドを挙げるなど、どの部門でも平均的に優秀な成績を収めた。投球回数が惜しくも1を下回ったが、それは(阪神には及ばないものの)ファイターズの中継ぎ投手の登板数が40試合を超えたのがマーティンを含め5投手いたことも考慮されるだろう。60試合クインテットの中継ぎ陣や中﨑に比べて被本塁打率が多少高いが、それでもランナーを出さない投球術で傷口を最小に抑えられている。

 順位も決まったシーズン終盤は、残りの試合数があるものの一足先に帰国し、来年の去就について明言を避けた。最大5選手の主力選手が放出危機にあるとの報道が出たチームにおいて、ファイターズはマーティンの残留にも注力しなければならいのは必至だ。

 

表8 マーティン、桑原、高橋、中﨑の今シーズンの成績

 

成績(順位)

マーティン

桑原 謙太朗

髙橋 聡文

中﨑 翔太

防御率

1.19(2)

1.51(4)

1.70(5)

1.40(3)

ホールド

29(9)

39(2)

20(25)

25(14)

登板数

40(44)

67(2)

61(11)

59(17)

WHIP

0.72(1)

0.94(5)

0.90(3)

0.92(4)

tRA

2.45(4)

2.31(3)

2.06(1)

3.37(18)

K/BB

5.64(3)

6.30(2)

3.64(13)

1.80(25)

LOB%

91.30(2)

86.80(4)

82.20(10)

87.60(3)

HR/9

0.48(9)

0.27(4)

0.19(2)

0.31(22)

平均投球回数

0.93(20)

0.97(14)

0.77(26)

0.97(14)

被打率

.165(1)

.221(12)

.182(4)

.173(3)

被打率差

0.039

0.033

0.048

0.047