ほーりーの野球日記

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自分の観方で野球を紹介します

ベストナイン先発投手部門

  レギュラーシーズンの全日程が終了し、先週末からクライマックスシリーズに突入した。これよりポストシーズンを戦うチーム、すでに来季を見据えたチーム、それぞれある中、各タイトルの顔ぶれが出揃ってきた。

 パ・リーグではサファテが日本新記録の54セーブで3年連続の最多セーブ、則本が野茂英雄以来となる24年ぶりの4年連続最多奪三振、菊池は初のタイトルホルダーにも関わらず二冠を達成する活躍を見せた。セ・リーグでは菅野の3度目となる最優秀防御率以外、全て初受賞の選手で主要タイトルを占めるなど、新顔の台頭が目立った。

 今後はMVPや新人王など成績の上積みではない記者投票によるタイトル選出も発表され始めるが、そのうちの一つに、ポジションごと突出した成績を残した選手が各リーグから一人ずつ選出されるベストナインがある。

 ベストナインは文字通り、ポジションごとにベストな選手に送られるタイトルで、私も毎年受賞者の予想を楽しんでいる。そこで今回からは公式発表に先立ち、数回に渡って個人的ベストナインを勝手に選出していきたいと思う。

 

 しかし、ここではあえてタイトルの受賞やチームの順位にとらわれない選出を心掛けたい。それは、選手の真の能力が結果論の個人成績やチームの勝敗や順位に埋もれてしまい、正当な評価を得られないことを避けるためだ。

 最下位のチームと優勝チームの投手では、どちらが最多勝を獲りやすいかと言われれば、もちろん優勝チームである。しかし、多く勝ったことがその選手の能力と一致するとは限らない。勝敗には投手の能力で変えることのできない運が働くことがあるからだ。

 チームの成績に左右されない能力に目を向けることで、高評価を受ける選手が高評価を受ける選手たる所以を明らかにすることができ、また、過小評価されている選手が再評価されると考える。これらの点において、今回の試みの意義があると私は考える。

 

◆先発投手を選定する際に着目すべき3項目

 本来ならば投手は一枠しか設けられていないところを、ここでは先発、中継ぎ、抑えの役割ごとに一人ずつを選出していきたい。それに際し、はじめに投手全般に必要な能力を挙げていきたいのだが、ここでは次の3点ご提案させていただきたい。

 一つ目は「WHIP」だ。1イニング当たり何人ランナーを出すかという指標で、役割にかかわらず打者を打ち取る能力を図ることができる。1.0未満なら球界を代表するエース、1.2未満ならエース級、1.4を上回ると問題ありというのが相場だ。

 二つ目は「tRA」だ。守備の関与しない与四死球奪三振・被本塁打という3つの項目を示す「FIP」という指標に加え、どのような打球を打たれたかまで推定・評価する指標する、より精度の高い指標で、リアル防御率とも言い換えられるかもしれない。

 三つ目は「K/BB」だ。四球1個に対し三振をいくつ取ったかという数値で、投手の制球力を示す指標のひとつとして用いられる。三振を取れて四球を出さなければそれだけピンチで抑えられるという見方で、3.5を超えると優秀な投手と考えられる。

 以上の3項目を、どの役割の投手も例外なく見ていくことに加え、先発、中継ぎ、抑えの役割に応じた評価基準に着目し、全3選手をここでは選出したいと思う。

 まずは投手部門のうち、先発投手からみていく。

 

◆高い危機回避能力を見せた菅野

 先発投手は、規定投球回数に達した25選手を対象とする。参考までに主要タイトルの受賞者をおさらいしていくと、セの最優秀防御率最多勝が菅野、最多奪三振がマイコラス、最高勝率が薮田、パの最優秀防御率が菊池、最多勝は菊池と東浜、最多奪三振が則本、最高勝率が千賀という顔ぶれになる。ベストナイン先発投手部門は、投手二冠を達成した菅野や菊池だろうか、優勝に貢献した薮田や東浜だろうか。それとも別の投手なのだろうか。

 まずは先に挙げた3項目ごとのトップ選手をみてみる。

 0点台のWHIPを記録したのは、0.85でトップだった菅野を筆頭に、菊池、マイコラスの3選手だった。16年は菅野1選手、15年は大谷、マイコラスの2選手、14年は0選手だったことから、ここ数年では比較的レベルの高いシーズンだったように思える。

 その高いレベルで頭一つ抜きんでた菅野の危機回避能力の高さがわかる。

 

表1 先発投手WHIP5傑

 

選手

WHIP

1位

菅野 智之

0.85

2位

菊池 雄星

0.91

3位

マイコラス

0.98

4位

岸 孝之

1.02

5位

野上 亮磨

1.06

 

◆失点を防ぐ能力は則本がナンバーワン

 菅野、菊池、マイコラスのレベルの高さはtRAにも同様にみられる。上位5選手の中にもこの3選手がランクインし、2点台の高水準を記録している。しかし、tRAの最高選手はこの先の3選手ではなく、2.28で則本だった。しかも、上位5選手が今季の防御率をFIPが上回っていた、つまり味方の守備に助けられた場面が多かったのに対し、則本は唯一下回っていた。投手の力量として失点を防ぐ能力をみたとき、それが最も高いのは菅野でも菊池でもマイコラスでもなく、則本だということがここではわかる。

 この観点からは、則本の一投手としての能力の高さがわかる。

 

表2 先発投手tRA5傑

 

選手

tRA

1位

則本 昂大

2.28

2位

菅野 智之

2.56

3位

マイコラス

2.57

4位

メッセンジャー

2.83

5位

菊池 雄星

2.28

 

◆マイコラスの優れた制球力、来期の飛躍を感じさせる秋山

 K/BBでは、両リーグの奪三振王に大きさ開きがみられた。奪三振王はマイコラスと則本が獲得したが、K/BBでみるとマイコラスが全体で1位となる8.13と高い数値を記録したのに対し、則本は5傑外の4.63に終わった。与四死球がそれぞれ34、51だったことからも、三振を取る能力に優れた両投手でも制球力の差を現す結果となった。

 先発投手陣随一の制球力を誇るマイコラスをここでは推したいが、7.69を記録した阪神の秋山の高い制球力も目を見張るものがある。WHIPも1.09を優秀で来期のさらなる飛躍を期待したい。

 

表3 先発投手K/BB5傑

 

選手

K/BB

1位

マイコラス

8.13

2位

秋山 拓巳

7.69

3位

菅野 智之

5.52

4位

岸 孝之

4.97

5位

野上 亮磨

4.71

 

◆監督、コーチにとっては安心?試合を作る能力に優れた菊池

 ここまで3項目をみてきた。WHIPでは菅野、FIPでは則本、K/BBではマイコラスをそれぞれ注目すべき選手として挙げたが、ここからはさらに先発投手に特化した項目を交えてみていく。

 先発投手といえばまずQS率は欠かせない。6回を3失点以内に抑える立ち上がりをどれだけ果たしているかがわかるこの指標で、先発投手としてのゲームメイク能力をみていきたい。

 80%を超える高いQS率を記録したのは、ここでも菅野、菊池、マイコラスの3選手だった。中でも菊池は26試合の登板で全投手トップの23回、約88.46%の達成率を誇る。過去、16年は77.27%、15年は71.43%と年々向上させており、今年の飛躍を裏付ける結果となっている。

 

表4 先発投手QS率5傑

 

選手

QS率(%)

1位

菊池 雄星

88.46

2位

菅野 智之

84.00

3位

マイコラス

81.48

4位

千賀 滉大

77.27

5位

岸 孝之

76.92

 

 QS率に付随して、平均投球回数もみてみたい。完投数とあわせて、先発としての体力をここでは注目したい。なお、ここでは1/3回、2/3回は切り下げて考えている。平均投球回数が7回を超えたのは7.48回の菅野を筆頭に、則本、菊池の3選手だった。菅野はリーグトップの6完投、菊池はそれに並ぶがリーグでは金子と並ぶ2位、リーグトップは則本の8完投だった。やはり、完投数の多さが平均投球回数にも表れている。なお、投球イニングが最多だったのはマイコラスの188回だった。しかし、比較的多い登板機会だったことに加え、完投数も0だったことなどから、6.96とあと一歩のところで7回台を逃した。

 

表5 先発投手平均投球回数5傑

 

選手

平均投球回数

(完投数)

1位

菅野 智之

7.48

2位

則本 昂大

7.40

3位

菊池 雄星

7.19

4位

マイコラス

6.96

5位

金子 千尋

6.81

 

◆野村の高い守備力、菅野の唯一の弱点

 最後に、守備力に言及したい。

 投手は9人目の野手といわれており、守備力の高さも投手としての能力を示す要素になる。一説によると、クイック、牽制、バント処理の能力のことを野球界では「投手の三種の神器」と表現されるほど必要な能力といわれている。詳しくは『古田式・ワンランク上のプロ野球観戦術』を参照されたい。

 守備全般での貢献度を示す指標に「UZR」がある。それによると、投手として最も守備貢献度が高かった選手は1.90で野村だった。また、守備率も1.000つまり無失策で、失策防止による貢献度を示す「ErrR」も0.80で涌井と並びトップだった。野村はWHIPが1.22、平均投球回数も6.20と決して悪いわけではないのだが、FIPが3.80、K/BBが2.79とベストナインまでのしあがるだけの成績を残すことはできなかったことが悔やまれる。最多勝と最高勝率の二冠に輝いた昨シーズン並みの活躍を来季は期待したい。

 反対に、ここまで好投手として各項目での上位ランクに名前が挙がっていた菅野が、ここではワースト2位の-0.60となった。昨年セ・リーグゴールデングラブ賞を受賞した菅野も、今年は守備面でベストなパフォーマンスを発揮することができなかった。また、菊池にもUZRにおけるマイナス数値が記録された。今シーズン、圧巻の投球を見せた菅野と菊池の両投手において、守備が最大の弱点といえるシーズンだったのではないだろうか。その一方で、マイコラスは上位にランクインするなど、ここまでみてきた項目でトップランクに名を連ねてきた菅野、菊池、則本らと比較して守備の面で優れた能力を示していることがわかる。

 

表6 先発投手UZR5傑

 

選手

UZR

守備率

1位

野村 祐輔

1.90

1.000

2位

メッセンジャー

1.40

1.000

同3位

井納 翔一

1.00

1.000

同3位

涌井 秀章

1.00

1.000

5位

マイコラス

0.90

1.000

同14位

菊池 雄星

-0.20

.963

同23位

菅野 智之

-0.60

.959

 

◆総合的な能力をあわせもつマイコラスがベストナイン

 ここまで6つの観点からより優れた先発投手の選出に試みてきた。

 ここで、私が先発投手部門でのベストナインに選出したい投手は、マイコラスだ。対抗馬となる菅野や菊池と比べると、成績の上では3番手という印象があったが、制球力や守備力など、マイコラスの投手としての総合的な能力が高い水準にあることがわかった。

 課題をあげるとしたら、それは投球回数にあるかもしれない。最多イニングを投げた投手にイニング数を課題にあげるのは酷なことかもしれないが、先発投手として完投数がゼロだったことは、個人的には物足りなさを感じた。来日1年目に4完投を記録しているので、体力的にも実績的にも決して不可能ではないはずだ。

 ここ数日でメジャー復帰が囁かれているマイコラスだが、来シーズンももしその投球を見ることができるなら、今後はイニング数に注目していきたい。

 

表7 マイコラス、菅野、菊池の今シーズンの成績

 

成績(順位)

マイコラス

菅野

菊池

防御率

2.25(3)

1.59(1)

1.97(1)

勝利数

14(5)

17(1)

16(1)

奪三振

187(4)

171(2)

217(2)

勝率

.636(3)

.773(2)

.727(3)

イニング数

188(1)

187 1/3(2)

187 2/3(1)

WHIP

0.98(3)

0.85(1)

0.91(2)

tRA

2.57(3)

2.56(2)

2.96(5)

K/BB

8.13(1)

5.52(3)

4.43(7)

QS率

81.48(3)

84.00(2)

88.46(1)

平均投球回数

6.96(4)

7.48(1)

7.19(3)

UZR

0.90(5)

-0.60(14)

-0.20(25)

 

新人王レース

  開幕直後、セ・リーグのルーキーでは中日の京田が話題を独占してきた。7月4日にはリーグ新人最多14度目となる猛打賞を記録し、8月14日には新人では29年振りの20盗塁を達成、9月18日には新人最多安打の球団記録を更新した。

 このまま今年の新人王は京田で決まりかと思われていたが、シーズン大詰めになって、対抗馬が現れた。ここまでチーム同率3位の勝ち数、奪三振数は2位の好成績を収めており、CS出場に大きく貢献したDeNAの濵口だ。

 ここ数年の新人王受賞者の傾向から、熾烈な争いを繰り広げるセ・リーグの新人王レースの行く末を予想したいと思う。

 

◆新人王レースは数値の上では京田が有利だが…

 まず、新人王の選出にあたって参考になる指標を紹介したい。

 9月26日のネット版の野球太郎の記事から発見したそれは、新人王候補選手の成績を数値化し、そのポイントから新人王の最右翼となる選手を選出するというものだ。ここでは便宜的に新人王ポイントとする。

 新人王ポイントの算出法は以下の通り。

  • 野手…(塁打+四死球+盗塁)×1ポイント
  • 先発投手…(投球回数×1ポイント)+(勝利数×10ポイント)※投球回数は1/3回、2/3回は切り下げ
  • 救援投手…(登板数+ホールド数+セーブ数)×2ポイント

 今回はこの指標に従い、京田と濱口のどちらが新人王に近いのかを見ていくことにする。2人の新人王ポイントを見てみると、次のようになる。

  • 京田陽太…200塁打+27四死球+23盗塁=250ポイント
  • 濱口遥大…10勝6敗 投球回123.2=223ポイント

 結果は、京田が250ポイント、濱口が223ポイントで京田に軍配が上がった。

 となれば、新人王は京田の手中にあることに疑いがないように思われるかもしれないが、DeNAのファンの方、落胆するのはまだ早い。逆に中日ファンは安心するのはまだ早い。過去の新人王の成績と選出の傾向を見ると、濱口の逆転新人王の可能性があるのだ。

 次からは、その根拠をみていく。

 

◆Aクラスの先発投手が、最も可能性が高い?

 2000年以降、新人王を獲得した選手は33選手(00年のパ・リーグは該当選手なし)の受賞傾向をみていく。ここでキーワードとなるのは、「新人王ポイント」「A/Bクラス」「投票割合」の3つだ。

 以下の2つの表をみてほしい。

表1 33選手のクラスごとの内訳

 

Aクラス

Bクラス

受賞選手数

野手

先発投手

13

18

救援投手

合計

20

13

33

 一つ目の表は、33選手を「野手」「先発投手」「救援投手」に分類し、所属チームのクラス別の受賞者数を示したものだ。まず大前提として、新人王は全国の新聞、通信、放送各社のプロ野球担当記者を5年以上経験している記者による投票で決まるもので、そのため、明確な数字だけではなく、「チームの勝利に貢献した」「首位攻防戦で活躍した」といったような記者の「主観」も入ってくる。それをふまえてこの表を見てみると、Aクラスのチームから多く新人王が選出されていることがわかる。その上で最も新人王を獲得しているカテゴリーを見てみると先発投手が最も多く、やはりAクラスだとその傾向は高い。

 この結果が、濱口の逆転新人王があり得ると考える一つ目の根拠である。

 

◆Bクラスの野手は新人王のハードルが高い?

 次に示すのが、上の表に新たに、過去33選手の新人王ポイントと投票数の平均値を変数に加えたものだ。投票数は年によって差があるため、ここでは投票数ではなく、全体の有効投票数から見た得票割合とする。

表2 33選手の新人王ポイントと投票割合の平均値

 

全体

Aクラス

Bクラス

野手

平均ポイント

238.4

215.3

255.8

平均得票割合

83.0%

89.8%

78.0%

先発投手

平均ポイント

263.0

256.3

280.4

平均得票割合

81.7%

80.9%

83.8%

救援投手

平均ポイント

171.0

178.0

164.0

平均得票割合

69.5%

77.2%

61.9%

 この表からは、全体としてみると先発投手は野手よりも高い平均新人王ポイントを出しているにも関わらず、平均得票割合は野手のほうが高いことがわかる。野手のほうが少ない投票数で新人王を獲りやすいということ、つまり、野手で活躍するほうが、新人王としての印象が良いということなのだろうか。そう考えると、ここは濱口ではなくやはり京田が新人王の筆頭だと考えるのが妥当ではないかと考えられる。

 

 しかし、それをクラス別で見てみると、必ずしもそうは言えないことがみえてくる。野手に関していうと、Bクラスの平均新人王ポイントはAクラスを上回っているにも関わらず、平均得票割合はAクラスを下回っている。これは、チームの上位進出の貢献が得票数を左右するということの証左ではないだろうか。つまり、新人野手がBクラスのチームで受賞するほうが難儀ということなのかもしれない可能性がここで示されている。

 

◆先発投手はシビアな目で見られる

 先発投手は、野手とは対照的に順位に左右されず、平均新人王ポイントの高さと得票割合が比例している。つまり、先発投手は野手と違って正当な評価を受けているように見える。とすれば、この結果は先発投手である濱口はシビアな目で見られるという可能性も示唆している。

 

◆不遇を味わった2選手

 ここまで、過去の傾向から京田と濱口の新人王争い予想の判断材料をみてきた。結論をいうと、成績の上では京田のほうに分があるものも、過去の例から見ると京田の立場は決して安泰というわけではなく、記者の主観次第では、濱口の逆転新人王も可能性もあるということだ。

 

 では実際、過去に成績は上回っているものの、得票割合で新人王を逃した選手はいるのだろうか。直近の33選手の中から、今回の濱口京田の境遇と似た「Aクラス先発投手がBクラス野手よりも新人王ポイントが低く」新人王を受賞したというケースを見ていく。

 先発投手で新人王を受賞した選手は18選手、そのうちAクラスだったのが13選手というのは表1で示した通りだ。この13選手とそれぞれ同年度に新人王を逃した野手でチームがBクラスだったのは、16年茂木(楽天)、同年吉田(オリックス)、13年大谷(日ハム※打者として考えた場合)、07年飯原(当時ヤクルト)、03年村田(当時横浜)の5選手がいた。こののち、その年の新人王よりも新人王ポイントが高かった野手は、16年茂木と07年飯原の2選手がいた。16年は実際に受賞した高梨の新人王ポイントが209だったのに対し茂木が218、得票率は高梨の51.6%に対して茂木が45.7%だった。07年は実際に受賞した上園の新人王ポイントは165で得票割合は51.0%だったのに対し、飯原は新人王ポイントが203で得票割合はなんと0.5%の1票にすぎなかった。

 33サンプルのうち2例というのは決して多いケースとはいえないかもしれないが、不遇を味わった選手が実際にいたという事実は看過できない。こうした事例からも、京田が濱口に逆転新人王を献上する可能性がないこともいえない、という程度にはいえるかもしれない。

 

◆最終判断は記者の主観次第

 最後に、主観にまつわる話をして終えたい。

 濱口は自身最終登板となる10月4日の登板で、球団史上59年ぶり3人目となる新人左腕での10勝目を挙げた。ライバルの京田も3打数無安打に抑え、直接対決で貫禄を見せつけた。「正直、新人王のことはあんまり気にしていない」とインタビューで答えた一方で、投票に頭を悩ませる記者も、この一戦で濱口に投票を決めた記者もいるのではないだろうか。この対戦を含め、京田と濱口の対戦成績は9打数1安打で濱口に軍配があがっている。

 

 それでも、京田がここまで新人選手の話題の多くを占めてきたことには変わりない。冒頭で紹介した京田の数々の新人記録のほか、10月10日に迫るチーム最終戦では、リーグ新人安打記録がかかっている。現在149安打の京田がその試合で4安打を放てば、長嶋茂雄の新人記録に並ぶ。一試合4安打というのは難しいが、決して不可能な挑戦ではない。

 京田と濱口の新人王争いの行く末に最後まで目が離せない。

 

出典:「野球太郎」2017.09.26

http://yakyutaro.jp/r.php?hash=pAOhR

「BASEBALL KING」2017.09.06

http://baseballking.jp/ns/column/130473

「日刊スポーツ」2017.10.05

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201710050000085.html

「日刊スポーツ」2017.10.07

https://www.nikkansports.com/baseball/news/201710070000084.html

 

職人の打撃開眼

 9月16日、ソフトバンクホークスがリーグ史上最速優勝を決めた。

 昨年、惜しくも日本ハムに逆転優勝を許したソフトバンクは、今シーズンも開幕から楽天と厳しい首位争いを繰り広げてきた。新加入のデスパイネ、2013年のドラフト4位上林の台頭、6年振りに日本球界復帰を果たした川崎、最多勝争いを演じエース級の活躍を見せる東浜など、昨年までとはまた違った戦力で、見事2年振りの優勝を果たした。柳田や松田をはじめとした主力選手にこうした新戦力が加わり、そこに内川や武田が完全復活を果たすとなると、もはや非の打ち所がない戦力となるに違いない。

 

◆打撃開眼した小技職人

 しかし、こうしたスター軍団・ソフトバンクホークスの戦力を語るうえで外すことのできない選手が、今宮健太だ。昨年まで4年連続でゴールデングラブ賞を獲得した日本球界屈指の守備力、パ・リーグ記録となる62犠打を達成した実績をはじめ、今年7月5日には史上最年少での250犠打、史上三人目となる三年連続30犠打を記録するといったバント技術といったように、今宮といえば小技のきいた職人タイプとしてイメージを持つ人が多いかもしれない。

 しかし、今年はそれに加え、強打者としての面も見せている。ここまで本塁打、打点、安打数、盗塁数、塁打数など、多くの打撃部門で自己最高記録を更新しており、また、打率、長打率出塁率、得点もこのままの調子を維持すれば自己記録の更新は確実だろう。

 

◆ヒット率の上昇とゴロ率の上昇

 ここ数年と今年で、今宮の打撃内容にどのような変化があるのかをみていく。

 まず私が注目したのはBABIPだ。これは、打球が安打になった割合を示す数値で、2015年は.261、2016年は.276、そして2017年は.305と年々上昇している。これは放った打球がヒットになりやすくなっているということを示している。この数値の高さは、今シーズンの打率に反映されているかもしれない。

 放った打球がヒットになりやすいとは、どういうことだろうか。私が少年野球チームに所属していたこと、コーチや監督からフライではなくゴロを打てとよく指導された。その心は、フライは捕球した時点でアウトが成立するが、ゴロでは捕球後の送球、それに対する捕球という一連のアクションが必要とされるので、相手のミスを誘いやすいということで、ゴロを打つことの大切さは高校、大学、プロなどの解説を聞いていても時折話題となる。今シーズンの今宮のヒット率の高さには、打球傾向にそれを証明できるかもしれないヒントが隠されていた。

 放った打球をライナー、ゴロ、フライに分け、それぞれの割合を見ることで今宮の打球傾向を知ることができる。それぞれの割合は、2015年は7.9、42.9、49.2、2016年は10.3、44.0、45.7、2017年は9.8、45.8、44.4と、年々ゴロの割合が上昇し、フライの割合が減少していることがわかる。

 ゴロが増え、フライが減る。打者走者は50メートル6秒1の俊足・今宮。野手は内野安打を警戒して浅く守るかもしれない。すると、ヒットゾーンが広くなる。送球を焦った内野手の目に見えないミスがヒットと判定されるかもしれない。ゴロが増えるということは、それだけヒットになる確率が高まるということだ。

 

◆今宮の出場がチームに勝利をもたらす

 こうして打撃成績を向上させた今宮が、守備だけでなく打撃でもチームに貢献していることは言うまでもないが、実際どのくらいチームの勝利に貢献しているのかをみていくことにする。

 打撃による得点貢献の総量を表すのにwRCという指標がある。これは、打者が創出した得点数を表す指標で、数字が大きいほどチームに多くの得点をもたらしている打者と評価できる。今シーズンのソフトバンク規定打席に到達している選手のwRCを見てみると、1位や柳田の109.2とこちらはリーグ2位と好成績を残している。一方、今宮はどうかというと、チーム3位の71.8を記録している。これは2位のデスパイネの75.2と僅差に迫っており、2番という制約の多い打順を打つことが多い今宮だが、チームでクリーンナップを打ってもおかしくない成績を残していることになる。

 また、今宮のwRCは、同じくリーグで2番を打つ他の打者と比較しても、26本塁打62打点の強打の2番、楽天のペゲーロの77.4に匹敵し、ライオンズの源田に至っては源田の55.9と大きく差をつけている。2番打者としての勝利貢献度も目を見張るものがある。

 

◆きっかけはテニス?

 今でこそ今宮は、小技の光る選手としての地位を不動のものにしているが、もともとは高校球界屈指の強打者だった。高校通算62本のホームランを放つなど、明豊高校時代から打撃力には定評があった。レギュラーに定着した2012年から昨年まで、自己最高打率は.253、通算本塁打が27本と、あくまでもプロでは職人タイプを貫いてきた。

 今シーズンの春季キャンプでは自身の課題を打撃とし、打撃フォームの改善に取り組み、その実践が、昨シーズンから取り入れ始めたという通称「テニス打法」だった。きっかけは昨シーズン、藤井打撃コーチのアドバイスを受けたことだった。ポイントを前にしてさばく打撃に修正し、今宮曰く「テニスのラケットを振るイメージ」にしたことで、1割近く打率を上げることにも成功した月もあった。踏み込んだ左脚を軸に回転し、右脚も前方へ踏み出して打つというこの打法で、打撃成績はすでにお伝えした通り、自己最高を更新する勢いだ。

 今年から打撃コーチに就任した立花コーチは「3割5分を目指していこう」と半ば冗談交じりに言ったそうだ。壁は高いが、不可能ではないのでは?と思えてしまうほどの身体能力と野球センスを持った今宮の、今後は打撃にも注目していきたい。

 

出典:

東スポ2016年5月27日

西スポ2017年2月18日

スポニチアネックス2017年7月5日

西スポ2017年9月18日

各種データはDELTA社より提供(2017年9月22日閲覧)

 

歴代最強救援投手

 1959年、当時パイレーツにフォークを武器したフェイツという投手がいた。救援投手ながら18勝を挙げ、そこで翌60年、米国一の権威「ザ・スポーティングニューズ」誌がセーブの規則を提唱し、それまで過小評価されてきた救援投手の価値を高めることを目的に、年間最優秀救援投手に贈る「ファイアマン賞」が制定された。69年にセーブが正式に公式記録となり、73年から条文が整理されてルールブックに記載されるようになった。

 アメリカに遅れること約10年、当時の日本プロ野球界では、いまほど投手の分業制は進んでおらず、先発完投が多かった。そんな中、抑え投手として最初に脚光を浴びたのが、1960年代、「8時半の男」と呼ばれた当時巨人の宮田征典だった。心臓疾患のため短いイニングしか投げられない宮田をクローザーとして起用したのは、当時の川上監督だった。

 1974年、日本プロ野球において初めてセーブ数がタイトルになり、初代セーブ王となったのが、当時中日の星野仙一と南海の佐藤道郎だった。セーブ数はそれぞれ10、13と、今ほどその役割が定着していなかったように思われる。

 クローザーとして忘れてはならないのが、江夏豊である。先発で球界を代表するエースとして君臨した江夏は後年、当時南海の野村監督から「革命を起こさないか」と言われてリリーフに転向し、広島に移籍後は日本シリーズ終戦の「江夏の21球」で伝説を作った。

 その後も津田恒美赤堀元之佐々木主浩高津臣吾などのスーパークローザーが誕生し、こうしてクローザーの歴史が積み重ねられ、現在歴代最多セーブ記録は中日の岩瀬の402セーブとなっている。

 そして今年、さらなる大記録が誕生した。それは、9月5日のオリックス戦でソフトバンクデニス・サファテが、05年岩瀬(中日)07年藤川(阪神)の46セーブを抜く、日本プロ野球新記録となる47セーブ目をマークしたことだ。

 

◆クローザーに必要な4つの力

 こうしてクローザーの歴史に新たな名前が刻まれたサファテだが、私はこのサファテこそが、約半世紀の日本プロ野球のクローザーの中で最強投手なのではないかと思っている。これは単に、シーズン47セーブという日本記録保持者となったからというだけではない。これからその理由と説明していくわけだが、その前にクローザーとして必要な要素がなにかということをお伝えしたい。

 第一に、最終回の勝利がかかった場面に登場するクローザーとして最も必要なことは、ランナーを出さないことである。3つのアウト=1イニングをどれだけ最小リスクで抑えることができるかが、優秀なクローザーなのではないか。1イニング当たり何人ランナーを出すか、それを現す指標に「WHIP」がある。

 「ピンチで抑えられる」ということに関してもうひとつ紹介したいのが「K/BB」だ。これは四球1個に対し三振をいくつ取ったかという数値で、三振を取る力があり且つ四球を出さない制球力の高さを示している。三振を取れて四球を出さなければピンチを迎えずに終えられるということで、こちらもクローザーとして重要な資質である。

 そして、出塁させた走者の非帰還率を示す「LOB%」がある。こちらは、もし走者を出しても生還を許さないピンチ時の強さを示す。

 最後に、WHIP同様に広い意味で投手の力を現した指標に「FIP」を紹介したい。こちらは、投手の成績から守備を引き、被本塁打、与四死球奪三振だけで投手の能力を算出しようと考案されたもので、投手の素の力を現すのに現時点で限りなく近い指標である。

 以上、「WHIP」「K/BB」「FIP」「LOB%」の4つの指標を用いて、サファテが歴代のクローザー投手の中で最強である理由を説明していきたい。

 

◆クローザー成熟期を生き抜いた5投手

 過去の投手を振り返りながら、今シーズンのサファテを比較したいと思う。手始めに、これまでどのようなクローザーがいたのだろうかを振り返りたい。なお、ここではクローザー黎明期の昭和世代ではなく、クローザー競争が高まり、成熟期に入ろうとしている平成世代の投手を対象とする。

 まず私が真っ先に思いついたのが、日米通算381セーブを記録し、最優秀救援投手5回を獲得した、大魔神佐々木主浩だ。98年、当時のプロ野球記録である45セーブを挙げ、38年ぶりの優勝に大きく貢献し、その年のMVPを受賞した。次に思い浮かんだのは、日本、アメリカ、台湾、韓国でプレーし、通算347セーブを挙げた高津臣吾だ。01年には自己最多となる37セーブを記録し、日本シリーズではシリーズ通算最多の8セーブを挙げ、4度目の胴上げ投手になった。そして、日米通算234セーブを記録し、「幕張の防波堤」異名をとった小林雅英だ。02年達成した日本記録となる33試合連続セーブポイントは、いまだ破られていない。そして、やはり欠かすことのできない投手が、当時の日本記録だったシーズン最多の46セーブを記録した、05年の岩瀬仁紀と07年の藤川球児だろう。同年代でしのぎを削りあった両雄なしには、セーブの歴史は語れない。

 以上、クローザー成熟期を生き抜いてきた5投手とサファテを比較することで、今シーズンのサファテが歴代最強救援投手であるかを説明していく。

 

◆サファテが最強クローザーである理由

 さきほど紹介した「WHIP」「K/BB」「FIP」「LOB%」というクローザーに必要な要素を、サファテを含めた6投手でそれぞれ比較した表をみてもらいたい。

 4つの全ての項目で、サファテが最も優れていることがわかる。特に、K/BBは鳥肌が立つほど高い数値を示している。最速159キロの直球にこれだけの制球力が備わっているとなると、相手チームにとってとてつもない脅威となることは間違いない。WHIPも0.68と優秀で、こちらは規定投球回数未満ではあるが、2位の菅野の0.89を大きく引き離し、現時点では12球団でトップだ。

 

 

セーブ数

防御率

WHIP

K/BB

LOB%

FIP

佐々木主浩(98)

45

0.64

0.80

6.00

87.4%

0.96

高津臣吾(01)

37

2.61

1.20

3.00

77.9%

2.59

小林雅英(02)

33

0.83

0.74

6.83

91.5%

1.50

岩瀬仁紀(05)

46

1.88

1.03

6.50

80.3%

1.75

藤川球児(07)

46

1.63

0.82

6.39

81.6%

1.07

サファテ(17)

49

0.90

0.68

9.40

92.6%

0.87

※数値は2017年9月9日現在

 

◆サファテが最強救援投手であるもうひとつの理由

 そんなサファテも、今年8月、痛恨のサヨナラ被弾を浴びた試合がある。その試合の後、サファテは早い回でマウンドを降りる先発投手陣に対し、「これだけ連続で(早い回で)降りられると、ツケが回ってくる。岩崎、森、嘉弥真、みんな疲れている」と苦言を呈した。

 これにはシビれた。

 たとえばメジャーなどでこういった発言をするということはフロント批判と捉えられ、場合によってはチームを追放されることもある。今回のサファテのケースも、捉えられ方によってはフロント批判にもなりえた。しかし、違った。日本球界7年目の36歳、チームの信用を勝ち得たサファテによる発言はチームの雰囲気を変えたのだ。現代野球における重要な立場にあるクローザーとして最高評価を得たサファテだからこそ、この発言が生まれたのであり、チームに響いたのだと思う。チームに勝利をもたらすのは、最終回を無失点に抑えることだけではないない。もしかしたら、サファテが最強救援投手である理由は、成績以外にもこうしたリーダーシップや人柄もあるかもしれない。

 

参考

「dot.」2017.09.06

https://dot.asahi.com/dot/2017090600048.html

zakzak」2015.05.17

http://www.zakzak.co.jp/sports/baseball/news/20150517/bbl1505170830003-n1.htm

スポーツニッポン」2017.08.01

http://m.sponichi.co.jp/baseball/news/2017/08/01/kiji/20170801s00001173344000c.html

 

小さな大魔神

  山田哲人、千賀滉大、西川遥輝、山﨑康晃、これらに共通するのは、彼らが全員同級生ということだ。1992年度の生まれ、高卒なら7年目、大卒なら3年目となる彼らには、私は個人的な思い入れがある。というのも、私も彼らと同じく、92年生まれで同級生だからだ。

 史上初の2年連続トリプルスリーを達成した山田、育成出身で初となる2年連続2ケタ勝利を達成した千賀、日本シリーズでのサヨナラ満塁弾も記憶に新しい西川、そして8月25日、1年目から3年連続20セーブ達成という史上初となる記録を打ち立てた山崎。地元横浜の球団で同級生ということで、この中でも山崎は、勝手に親近感を持ってみさせてもらっている。

 1年目からクローザーを務める山崎は新人投手記録を樹立する32セーブをマークする活躍を見せるも、翌年は2年連続での大台突破となる33セーブを記録するものの、救援失敗が見られるようになり、ビハインドの場面で登板することもあった。3年目も苦しいスタートとなり、4月には2試合連続の救援失敗でセットアッパーに配置転換された。しかし、中継ぎ転向後は安定した投球を取り戻し、クローザーに再転向し、前述した通り1年目から3年連続20セーブというプロ野球記録を作った。

 不調から一転、再び輝きを放つ山崎に一体どのような変化があったのだろうか。今回は、これまでの成績を過去2年の成績と比較して、山崎にどのような変化が現れたのかみてみる。

 

◆ランナーを出しても返さない「ピンチ◎」

 まず見てほしいのが年度別成績だ。2016年の不調は、防御率が物語っている。登板時に平均的な投手と比べてどの程度失点を防いでいるかを示すRSAAがマイナスを記録するなど、クローザーとしては不本意な成績だったといえる。いわゆる「2年目のジンクス」に直面したように思われる。

 ところが、今年は1年目に劣らない成績を残している。特に、出塁させた走者を生還させなかった割合を示すLOB%は1年目を上回る成績を残している。出してしまったランナーは返さない、この数値が今年の山崎の復活を印象付けるデータではないだろうか。

 

図1 年度別成績

 

セーブ数

防御率

LOB%

RSAA

WHIP

2015

37

1.92

78.39%

9.74

0.87

2016

33

3.59

75.50%

―1.09

1.39

2017

20

1.92

79.15%

8.69

1.06

 

 今年の特徴として、非生還率が高いことが考えられる。今年は過去2年と比べ、走者の有無でどのような変化があるのだろうか。無走者と得点圏にランナーがいる場合の被打率を示したのが次の図2だ。これによると、1年目までは得意にしていた無走者の場面を2年目では苦手にしており、そのまた逆も然りといったように、ランナーを背負った場面での被打率に好不調の波がある。

 ところが、今年はランナーの有無にかかわらず被打率はどちらも低く、場面に左右されずに安定した投球ができているように思われる。

 

図2 リード時のランナー別被打率

 

無走者

得点圏

2015

.206

.286

2016

.308

.152

2017

.236

.241

 

◆ストレートの被打率と、勝負球の選定

 それでは、具体的に過去2年と違って今年の投球にはどのような変化があるのだろうか。さまざまなアプローチから山崎の投球内容を検証したところ、昨年までとは違う、ある点がみられた。配球だ。

 それを説明する前に、山崎の球種別の被打率を表した図3をみてほしい。すると、昨年まではストレートがよく打たれていることがわかる。

 

 それをふまえて、球種別投球割合を示した図4をみてほしい。これによると、昨シーズンまではストレートとシュート(山崎の場合落ちるツーシーム)の2種類で全投球のほぼ半分を占めており、その比率もほぼ五分五分であることがわかる。厳密にいえば、ストレートの割合のほうが若干だが高い。ストレートを投げたときの被打率の方が高いにもかかわらず、だ。

 

 話を配球に戻す。今年の山崎の変化は、まさにこの球種の投球割合にある。これまでほぼ拮抗していた2つの球種の投球割合を、今年はストレートを多めに投球するスタイルに変化させていることがわかる。これまで被打率が低かったシュートが今年はうまく対応されているため、ストレートの割合をより多くしたということだろうか。ここには単純だが、被打率の高い球種を少な目にし、低い球種を多めに投げることでピンチの芽を摘んでいるような工夫がみられる。

 

図3 球種別被打率

 

ストレートの被打率

シュートの被打率

2015

.300

.138

2016

.321

.203

2017

.174

.262

 

図4 球種別投球割合

 

ストレート

シュート

スライダー

2015

47.69%

45.50%

6.00%

2016

51.88%

45.80%

2.21%

2017

55.07%

37.97%

6.96%

 

 カウントのとり方にも変化がみられた。初球と勝負球でそれぞれ使った球種としてどちらが多かったかを示すのが図5だ。それによると、これまでは勝負球にシュートを使っていたのに対し、今年はストレートを多く使っているようだ(詳細な数値データが出せなかったことは悔やまれる)。カウントを稼ぐ球と勝負球を入れ替えることでこれまでとは違う投球術を実現させている。

 

図5 カウントのとりかた

 

初球

2ストライク後

2015

ストレート多め

シュート多め

2016

半々

シュート多め

2017

シュート多め

ストレート多め

 

◆新たな武器、スライダー

 話を配球に戻したい。山崎は今年、ストレートとシュートの配球以外にも、スライダーを取り入れることで投球に幅を持たせているのだ。図4をみると、今年は例年以上にスライダーの投球割合が若干だが高いことがわかる。

 今年のキャンプから取得を目指し、今シーズンでの多投を検討しているとキャンプ中に語ったスライダーの投球割合が、少しではあるが確実に増えている。フォークのような軌道で落ちる独特なツーシームが山崎の最大の武器であるが、そのツーシームの配球を変え、その上さらにスライダーの完成度が高まると、打者にとって今以上に驚異的な投手になるだろう。

 

◆『大魔神』にはあって『小さな大魔神』にはないもの

 2015年3月31日、プロ初セーブを挙げた山崎はその日のヒーローインタビューでこう言った。

「初セーブをした山崎康晃です! 今日の経験を生かして『小さな大魔神』になります!」

大魔神』は佐々木主浩だが、その佐々木に比べて体格に大きな見劣りがある。本人はそれをふまえて自身を『小さな大魔神』と表現したのかもしれない。

 横浜、抑え、落ちる変化球、この3つは確かに『大魔神』を連想させるには申し分ないが、まだ本家大魔神にはあり、山崎にはないものがある。それは、優勝だ。

 佐々木は98年、プロ野球史上初の40セーブを挙げ、リーグ最多の45セーブで優勝に貢献。さらにその年、当時の日本記録となる通算217セーブと2年連続30セーブを記録。その年のMVPを受賞し、『大魔神』が流行語になるなど、野球界にとどまらない社会現象をもたらした。

 長年クローザー不在が課題だった横浜に、これ以上ないストッパーが新たに誕生した。小さな大魔神が名実ともに大魔神となるということは、優勝というタイトルを獲得することと同義だ。いまの山崎、そしてDeNAなら、それが可能かもしれないどころか、いつか佐々木を抜く日が来るかもしれない。

 

 

茂木は12球団最強先頭打者

  私世代の野球ファンに、「記憶に残る1番打者は?」と聞くと、松井稼頭央と返ってくることが多い。02年には打率.332、36本塁打、33盗塁で史上8人目、両打ちでは初のトリプルスリーを達成した。打率と193安打はキャリアハイで、最多安打のタイトルも獲得。西武の4年ぶりのリーグ優勝の原動力となった。52年ぶりに更新したシーズン88長打は現在もプロ野球記録だ。

 そんな松井稼頭央に並ぶ一番打者になるのではないかと期待がかかる打者が、楽天の茂木栄五郎だ。8月9日、今季6本目となる先頭打者本塁打を放ったが、その一打で02年の松井に並ぶ、初回先頭打者初球本塁打シーズン3本のパ・リーグタイ記録を達成した。今季2年目の茂木は球団生え抜きでは初となる2桁本塁打を記録するなど、ここまで優勝争いを繰り広げる楽天にとって、欠かせない存在となった。

 そんな茂木が松井稼頭央に並ぶ打者となりえる理由は、1番打者として残している高い成績にある。これを見れば、茂木の1番打者としていかに優れているかがわかる。そして、茂木が現役最強のリードオフマンになりえる可能性を秘めていることも同時にわかることだろう。

 

◆今年、リードオフマンとして活躍している選手は6人

 まず、8月11日時点で各球団どの打者が最も多く1番打者を務めているのかを見てみる。すると、以下の通りになる。太字にしている選手は、チームの全試合数のうち半試合以上に1番として出場し、且つ、規定打席に到達している選手を示す。

 

ソフトバンク 川﨑(34試合/103試合)

楽天     茂木(64試合/95試合)

西武     秋山(85試合/101試合)

オリックス  宮崎(25試合/100試合)

日ハム    西川(83試合/99試合)

ロッテ    荻野(28試合/100試合)

広島     田中(105試合/105試合)

阪神     高山(46試合/101試合)

横浜     桑原(102試合/102試合)

巨人     長野(38試合/103試合)

中日     京田(75試合/105試合)

ヤクルト   坂口(64試合/104試合)

 

 それによると、茂木を含む6選手が、いわゆるリードオフマンを務めている。ここでは茂木との比較対象選手を西武・秋山、日ハム・西川、広島・田中、横浜・桑原、ヤクルト・坂口とする。

 6選手の今季の打撃成績が以下の通りとなる。こうしてみると、秋山が突出した成績を残していることがわかる。打率、本塁打、打点、出塁率、得点の5部門でトップだ。さすが、シーズン最多安打記録保持者といったところである。

 

 

打率

本塁打

打点

盗塁

出塁率

得点

長打率

茂木

.303

15

40

.377

49

.551

秋山

.335

20

65

12

.423

83

.568

西川

.298

24

27

.373

59

.398

田中

.294

44

24

.391

76

.391

桑原

.276

12

40

.349

68

.349

京田

.278

27

19

.310

50

.310

坂口

.278

30

.357

39

.357

 

◆初回先頭打者として迎える打者としてもっとも脅威なのは茂木

 ところが、リードオフマンとしての本領を発揮する場面での成績を見たらどうだろうか。6選手のうち、1番打者としての第一打席だけの成績だけを見てみる。すると、以下の通りになる。

 

 

打率

本塁打

出塁率

長打率

先頭打者能力指数

茂木

.315(3)

6(1)

.390(2)

.719(1)

秋山

.270(7)

4(3)

.364(5)

.459(3)

18

西川

.280(6)

0(7)

.349(6)

.400(6)

25

田中

.347(2)

0(7)

.428(1)

.410(5)

15

桑原

.319(4)

4(3)

.372(4)

.521(2)

13

京田

.356(1)

0(7)

.373(3)

.438(4)

15

坂口

.288(5)

0(7)

.343(7)

.338(7)

26

 

 こうしてみると、秋山が通算成績ほどの実力を発揮できていないことがわかる。一方茂木は、打率、出塁率長打率で通算成績を上回っており、本塁打数15に対し、6本を初回先頭打者として記録している。これだけでも茂木のリードオフマンとしての能力の高さがわかるが、現役最強のリードオフマンという理由はこれだけではない。

 6選手のそれぞれの成績を順位として表してみる。各部門の順位に応じた数字を得点化し、4部門の合計点数が最小の選手が、最も優れたリードオフマンということにする。グラフ内の括弧内が順位=ポイントを示し、その合計を、先頭打者としての総合的な能力を表す「先頭打者能力指数」とする。

 その結果、茂木が「7」と、一人だけ1桁台を記録したのだ。特に、今季最多数の初回先頭打者本塁打を記録していることもあり、長打率も高い。ここまで攻撃型の1番打者というのは投手から見て脅威だろう。

 

◆盗塁数は少ないが、走塁能力は高い

 ただ、通算成績を見てもわかる通り、盗塁数に1番打者としての課題があると思われる。しかし、走塁技術が低いわけではない。

 1年目だった16年シーズンは11盗塁と決して多い盗塁数ではなかったが、12球団最小の56盗塁というチーム状況の中では目を見張るものがある。同年8月25日、9月19日にはランニングホームランを記録し、2リーグ制後でシーズン2本のランニング本塁打は92年巨人の川相昌弘以来13人目(14度目)で、新人では茂木が初めてだった。さらに、同年では三塁打も7本マークし、オリックスの西野と並びリーグ最多タイを記録した。つまり、盗塁数が少ないだけで、走塁能力は高いのだ。チームの方針次第では、茂木の走塁能力も成績として現れることだろう。

 

 現在日本プロ野球には坂本を筆頭に、多くのスターショートが活躍している。ネームバリューでは坂本が圧倒的で、源田や京田といったニューヒーローも誕生するなど、前々回に書いた通り、ショートのスター選手は多い。

 その中でも茂木は突出した打撃力を持つショートであり、それが、次世代の松井稼頭央になりえる可能性があると私が考える理由だ。

 いまは肘の怪我もあり、慣れないDHでの出場が続いているが、一日も早く状態を回復してもらって、グラウンドで躍動する茂木のプレーを見せてもらいたい。

 

 

清宮の進路相談

  7月30日、第99回全国高校野球選手権大会西東京予選決勝が行われた。

 プロ注目のスラッガー早稲田実業の清宮幸太郎はここまで歴代最多タイとなる高校通算107本塁打を放っており、早稲田実業の甲子園出場と清宮の新記録達成を一目見ようと、朝7時前からすでに開門し、31000人収容の神宮球場が試合開始前には満員と発表された。

 結果は、ここまで3年連続決勝で敗退している東海大菅生が17年ぶりの甲子園出場を決め、清宮の甲子園出場と記録達成への挑戦は終わった。

 清宮の高校通算本塁打には、周りの偏屈で不寛容な一部の大人たちから難癖ともいえる指摘が後を絶たない。大人たちよ、言いたいことはわかるが、そんなことはどうでもいいじゃないか。と個人的には言いたくなる。

 大事なことは、これからの人生(プロ?大学?)をどう過ごすかだ。今回は、大変恐縮ながら、清宮が今後送る野球人生でどのようなモデルケースが考えられるのか、過去の高校野球界の強打者を参考に考えてみたい。

 

◆高校通算50本塁打以上を記録した選手の進路先

 高校時代に強打で注目された打者は、どのような進路を選んだのだろうか。ここでは高校時代に50本以上の本塁打を記録した打者(清宮を除く)35人をサンプルに見てみる。すると、全選手の進路先としてプロが最も多く、85.7%=30人がプロに進んでいることがわかった。次いで大学が11.4%=4人、社会人が2.9%=1人だった。プロに進むのが妥当なのかと思ってしまうほどの差があることがわかる。

 高校からプロに進み、そのうちで成功を収めることができたのはどのくらいか。ここでは、プロ通算4000打席以上、プロ通算100本塁打以上、打撃タイトル獲得、代表歴がある、の4項目のうち1~2項目に該当していれば「成功」、3項目以上なら「大成功」=成功群、ゼロなら「失敗」=非成功群ということにする。

 

高校通算50本塁打以上を記録した選手の進路先

 

大成功

成功

失敗

合計

プロ

11

4

15

30

大学

2

0

2

4

社会人

0

0

1

1

合計

13

4

18

35

 

 高卒プロで成功群の成績を収められたのはちょうど半数。また、サンプル数は少ないものの、大学進学後にプロに入団した選手でも4選手のうち2選手が成功群の成績を収めることができた。やはり、高校で50本以上の本塁打を打てる打者には、レベルアップした環境でも成功を収められるだけの選手が多いということなのだろうか。

 

◆もしプロに進んだら、実働7年目までに結果が求められる

 ただ、成功した選手と同数の成功を収めることができなかった選手もいるのは事実だ。この違いはなんだったのだろうか。

 高校卒業後プロに進んだ成功15選手のブレイク時の成績を見てみる。今宮と中村は高校時代とはプレースタイルが変わっているため、あまり参考にならないかもしれないが、その2選手を除いた全ての打者がブレイク年時に10本以上のホームランを記録している。早くから活躍するに越したことはないが、遅くとも7年目までにある程度の打席数を打てる選手に成長し、その中で10本以上の本塁打を打つことが成功への第一歩かもしれない。

 

成功群のブレイク年数と成績

選手

高校本塁打

頭角を現した年

(実働年数/プロ年数)

打率

本塁打

打点

中田 翔

87本

2011(3/4)

.237

18

91

鈴木 健

83本

1993(5/6)

.270

13

51

中村 剛也

83本

2005(3/4)

.262

22

57

城島 健司

70本

1997(3/3)

.308

15

68

平田 良介

70本

2011(6/6)

.255

11

38

筒香 嘉智

69本

2012(3/3)

.218

10

45

清原 和博

64本

1986(1/1)

.304

31

78

今宮 健太

62本

2012(2/3)

.238

2

14

江藤 智

61本

1991(2/3)

.215

11

31

松井 秀喜

60本

1993(1/1)

.223

11

27

中村 晃

60本

2013(3/6)

.307

5

44

山崎 武司

56本

1995(7/9)

.291

16

39

大谷 翔平

56本

2014(2/2)

.274

10

31

岡田 貴弘

55本

2010(3/5)

284

33

96

吉岡 雄二

51本

1998(5/8)

.268

13

32

 

 続いて、非成功群を見てみる。

 古木は順調に進めば成功群入りすることもできた可能性があったことが悔やまれることだろう。しかし、それ以外の選手はブレイクの兆しはおろか、特に目立った活躍もないまま、あるいは一軍未出場のまま引退するケースが非常に多い。引退した選手は平均すると11.3年でプロ生活を終えている。

 プロ7年目までに結果を残せなかったら、それ以降の数年でしかるべき処遇を覚悟した方がいいのかもしれない。しかし、今年日ハムの大田がプロ9年目でブレイクの兆しを見せている。これまでのジンクスを破るような活躍に期待したい。

 

非成功群のプロ7年目までのブレイクの兆し

選手

高校本塁打

プロ7年目までの

ブレイクの兆し

現在(年数)

打率

本塁打

打点

黒瀬 健太

97本

一軍未出場

現役(2)

-

-

-

大島 裕行

86本

2003(2/4)

引退(13)

.307

7

33

高橋 周平

71本

2016(5/5)

現役(5)

.251

4

29

奥浪 鏡

71本

16年一軍初出場

現役(4)

-

-

-

平尾 博司

68本

代打や守備要員

引退(18)

-

-

-

藤島 誠剛

68本

特になし

引退(11)

-

-

-

吉本 亮

66本

特になし

引退(9)

-

-

-

大田 泰示

65本

特になし※今後に期待

現役(9)

-

-

-

筒井 孝

60本

一軍未出場

引退(5)

-

-

-

萩原 誠

58本

特になし

引退(8)

-

-

-

山口 幸司

56本

特になし

引退(11)

-

-

-

古木 克明

52本

2003(4/4)

引退(10)

.208

22

37

嘉勢 敏弘

52本

特になし

引退(9)

-

-

-

大久保 博元

52本

1992(7/8)

引退(10)

.277

15

43

 

◆大学進学はわずか2例

 次の進路候補として、大学・社会人ルートを見てみる。

 大学進学は4選手、社会人進学は1選手おり、5選手のうちプロに進んだのは稲葉篤紀松田宣浩の2選手だ。この2選手は文句なしの成功群入り選手であるが、プロ入りしなかった3選手のうち1人はすでに引退し、あとの2人は現在も社会人野球でプレーしている。

 サンプルが少ないこと踏まえた上であえて言うとすれば、大学に進学してプロに進めば、成功群に入る可能性が高いということだろうか。余談だが、プロ入りしなかった3選手はいずれも神港学園(グラウンドがとにかく小さいことで有名)出身の選手であることも興味深い。

 

◆清宮が掲げた目標の達成=成功群へのエリートルート

 最後に、当時中学3年生だった清宮がテレビの取材で語った将来の目標があるので、それを紹介して終えたい。以下、清宮が語った数年後の目標だ。

①甲子園で大暴れ

②20歳で日本代表入り

③10年後(=2024年、25歳)で本塁打王

 ①の「甲子園で大暴れ」については、1年夏の2本の本塁打をしっかりと覚えておきたい。

 ②の「20歳で日本代表入り」というのは、大学でもプロでも2年目にあたる。20歳での代表入りは2009年の第2回WBC田中将大が選ばれており、他の大会でも長谷部(当時愛知工業大学)や大瀬良(当時九州共立大)などがプロ選手に混ざって選出されたため、大学に進学しても可能性としてはゼロではない。20歳になる年、2019年には第2回プレミア12が予定されており、一部によるとこれが東京五輪の予選を兼ねるのではないかともいわれている。

 ③の「10年後で本塁打王」について、25歳というのはもし仮に高校卒業後にプロ入りすると奇しくもここまで重要な分岐点として紹介してきた7年目にあたる。過去の成功群の例で見ると、全選手が7年目までにブレイクを果たしており、7年目でホームラン王を獲れたら、この成功群入りする可能性が一段と高まる。

 

 プロに進めば7年目、大学に進めばプロ3年目となる2024年。それまでに清宮がどのような活躍を見せてくれるのか楽しみだ。

 

清宮の人生年表予想

年齢

所属

代表戦

清宮の目標

2014年

15歳

中学3年生

 

 

2015年

16歳

高校1年生

第1回プレミア12

甲子園で

大暴れ

2016年

17歳

高校2年生

 

2017年

18歳

高校3年生

第4回WBC

2018年

19歳

大学1年生

プロ1年目

 

 

2019年

20歳

大学2年生

プロ2年目

第2回プレミア12

日本代表入り

2020年

21歳

大学3年生

プロ3年目

東京五輪

 

2021年

22歳

大学4年生

プロ4年目

第5回WBC

 

2022年

23歳

プロ1年目

プロ5年目

 

 

2023年

24歳

プロ2年目

プロ6年目

第3回プレミア12

 

2024

25

プロ3年目

プロ7年目

 

本塁打王獲得

2025年

26歳

プロ4年目

プロ8年目

第6回WBC